
2026年の新語・流行語大賞ノミネート30語が発表された直後、X上で一つの疑問が広がった。
「あかり、信じてるからな」が候補に入ったことだ。多くの人が「リュウジ信じてるぞ」の方が圧倒的に目にしていたため、「元祖はリュウジじゃないのか」と首を傾げた。
料理研究家リュウジ本人も反応し、元祖と派生の関係を丁寧に説明している。
一見すると単なるミームの起源論争に見えるが、その裏側には2人の知名度の差やネット上の扱いの違いが浮かび上がる。
「リュウジじゃなくて?」流行語ノミネートで広がった違和感
11月5日に発表された2026年流行語大賞の候補30語に、「あかり、信じてるからな」が入った。
料理家・管理栄養士の長谷川あかりさんが発信するレシピに対し、ファンが不安と期待を込めて投稿する言葉として取り上げられたものだ。
しかし、ネット上では「リュウジ信じてるからな」の方がはるかに多く見られ、企業アカウントや海外公式まで巻き込んだイメージが強かった。
ノミネート直後、「あかりって誰? リュウジじゃなくて?」という投稿が複数上がり、違和感が可視化された。
リュウジ本人も引用して「元は長谷川あかりさんのレシピを信じる投稿だった」と説明し、自身がイジられやすい立ち位置だったため派生が広がりやすかったと述べている。
元祖は「あかり」。知られざるミームの始まり
ミームの起点は2025年11月中旬ごろ。
長谷川あかりさんは管理栄養士の資格を持つ料理家で、塩を基調としたシンプルな家庭料理を丁寧に発信している。
レシピ本も複数刊行し、一定の支持を集めていたが、YouTubeやXでの爆発的なバズ力では後述のリュウジに及ばない。
そんなあかりさんの、一見完成形が想像しにくいレシピ(白菜の塩クリームスープなど)を作った人が、調理中の写真とともに「あかりー!!信じるぞー!!」と投稿する文化が生まれた。
一見不安を誘う工程に対して信頼を表明するユーモアが受け、他の料理研究家にも波及した。
山本ゆりさんやつくりおき食堂のまりえさんなどにも同様の構文が使われ、料理研究家全体の「信じる」ミームとして定着していった。
なぜ「リュウジ版」が爆発的に広がったのか
リュウジ版が大きく伸びたきっかけは、11月下旬に投稿されたキャベツ鶏塩鍋のレシピだ。
リュウジは「料理のおじさん」として知られる人気料理研究家で、YouTube登録者数560万人、Xフォロワー300万人超を誇る。
簡単でバズりやすいレシピを数多く発信し、テレビ出演や著書累計150万部超の実績を持つ。
丸ごとのキャベツを豪快に鍋にぶち込む様子が衝撃的で、蓋が閉まらない写真が次々と共有された。
「リュウジ、信じてるからな」というコメントとともに大喜利化し、きのこ大手のホクト公式やナウル共和国政府観光局までが反応する事態になった。
リュウジ本人が「信じすぎやろ」と引用したことも拡散を後押しした。
フォロワー規模の差、ビジュアルの強さ、本人がネタに乗る姿勢が重なり、元祖よりも派生の方が目立つ結果となった。
「男の方が雑に扱ってよい」から? 考察記事の主張
この現象を分析したnote記事が存在する。
女子大生起業家を名乗る著者が12月に公開した「リュウジ、信じてるからな」ミームの“横取り”はなぜ起きたか、というものだ。
記事では、あかりさんへの投稿に対しては「見ず知らずの女性に馴れ馴れしくリプするのがキモい」という声があった一方、リュウジさんには料理と無関係なクソリプや自己顕示欲投稿が大量に飛んだ点を指摘する。
これを「慈悲的差別」の一例として説明し、男性の方が心理的コストが低く雑に扱ってよいという共通認識があったため、ミームの中心が移ったと主張している。
リュウジ本人がこの記事を紹介し「過去一燃えそう」と書いたことで、再び注目を集めた。
ジェンダー論で割り切れるのか。賛否と別の見方
記事の主張に対しては賛否が分かれる。
ジェンダー要因がゼロとは言えないものの、主因とするのは過剰だという声がある。
リュウジのフォロワー数の圧倒的な差、キャベツ鍋の写真映えの強さ、本人の反応のしやすさといった要因を無視しているという指摘だ。
また、楽しいミームを無理に男女論に回収しているという違和感も根強い。
呼び捨ての問題についても、性別以前に距離感の問題だとする見方がある。
流行語大賞が元祖寄りの表現を選んだ背景には、こうした拡散の実態と起源の整理があったとみられる。
ネットミームの流行は、単一の要因では説明しきれない複雑さをはらんでいる。



