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株式会社P・C・Gテクニカ

https://www.pcgtexas.co.jp/

〒468-0015 愛知県名古屋市天白区一丁目1204番地

052-804-0081

壁を壊さず、マンションの配管を甦らせる。P・C・Gテクニカが選んだ、取り替えない配管再生

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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株式会社P・C・Gテクニカ・藤井要代表取締役社長
株式会社P・C・Gテクニカ・藤井要代表取締役社長(提供:P・C・Gテクニカ、以下同)

マンションの壁の中には、血管のように配管が張りめぐらされている。築30年を過ぎるころ、その管は静かに老いていく。古くなれば、壁を壊して取り替える。それがこれまでの常識だった。

名古屋のP・C・Gテクニカは、その管を壊さずに生き返らせる。既存のパイプの中に、もう一本新しいパイプを作る。独自の工法でマンションという社会インフラとそこで営まれる暮らしを延命させてきた会社だ。

2代目社長の藤井要氏が見据えるのは、自社の成長だけではない。工事を支える職人も、材料をつくる担い手も高齢化が進む。この仕事の裾野ごと、次の世代へ。その覚悟がいま静かに動き出している。

 

壁の中の配管を、取り替えずに甦らせる。管の中に、もう一本の管をつくる技術

P・C・Gテクニカが手がけるのは、建物の給排水管の改修である。新築には関わらず、古くなった配管を直す。その一点に特化してきた。

配管の改修と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、更新工事だろう。壁を開けて古い管を撤去し、新しい管につなぎ替える。いわば、取り替えだ。だが同社の主力は、取り替えではない。既存の管を生かしたまま再生させる、更生と呼ばれる手法である。なかでも中心に据えるのが、FRPライニングという独自の工法だ。同社が手がける工事のおよそ8割を占める看板である。

藤井氏
「今ある配管を型にして、その中にもう一本、新しい樹脂のパイプを作る。これが当社の一番の売りで、主力の商品になっています」

株式会社P・C・GテクニカFRPライニング工法
FRPライニング工法

仕組みはこうだ。まず、金属のチェーンを回して、使われている配管の内側を削り、錆や汚れを落として洗浄する。次に、筒状に編んだ布に、エポキシ樹脂(*1)を染み込ませたものを用意する。これを、空気の圧力で古い管の中へ送り込み、内壁にぴたりと貼りつけていく。樹脂が固まるまで、およそ90分。すると、古い管の内側に沿うように、新しい樹脂のパイプが一本できあがる。管の中に、もう一本の管を作る。文字どおり、配管を生き返らせる技術だ。この工法を、同社は2000年ごろから現場で手がけてきた。

背景には、年々ふくらむ需要がある。建物の配管は、築20年を過ぎたあたりから少しずつ手を入れる必要が出てくるのだ。とりわけ工事の依頼が多いのが、築30年を超えたマンションで、その数は2022年の時点で全国に約250万戸。それが今は350万戸ほどに増え、2037年ごろには600万戸に達するとも見込まれている。老いていくマンションは、これから加速度的に増えていく。

同社の売上も、その波に乗るように伸びてきた。25億円、約30億円、31億円。直近は3期連続で右肩上がりを続けている。

ただし、成長の理由は市場の追い風だけではない。取り替えではなく再生を選ぶことに、そこに住む人にとっての確かな意味があるからだ。

*1:エポキシ樹脂=接着剤や塗料にも広く使われる合成樹脂。硬化すると硬く丈夫になり、水や薬品にも強い。

 

5日間、水が使えない工事を変える。壁を壊さないことの、本当の価値

取り替えと再生の違いは、工事の現場でこそはっきりする。

マンションの配管は、101号室、201号室、301号室と、同じ縦のラインでつながっている。その管の多くは、壁の中や床下や天井裏を通っており、ふだん住む人の目には触れない。しかし、古くなった管を取り替えようとすれば、その壁を一つひとつ開けなければならない。その上、管は縦につながっているため、同じライン上の部屋をすべて同時に工事しなければならないことになる。

5階建てであれば、1階から5階までの住人がそろって仕事を休み、家にいる必要がある。壁を壊し、古い管を撤去し、階をまたいでつなぎ直す。配管の工事だけで3日ほど、壁を元に戻す内装の復旧まで含めれば、5日も6日もかかる。その間、水は使えない。住む人にとって、決して小さくない負担である。

株式会社P・C・Gテクニカ・サポーター工法資料

同社のFRPライニングは、この負担を大きく減らす。管の入口と出口、たとえば1階と最上階の2か所で作業ができれば、途中の階の壁を壊す必要がないからだ。間に挟まれた2階、3階、4階は、工事のために部屋を開けずに済む。内装の解体がなければ、その復旧もいらない。工期は縮み、家にいてもらわなければならない部屋も、日数も、ぐっと少なくなる。

途中の階へは、どうやってつなぐのか。ここに、同社の技術がある。各階から合流する枝管は、ライニングでいったん塞がってしまう。そこで、最上階から内視鏡のカメラを差し入れ、合流する位置を目で確かめながら、下から穴を開ける機械を引き上げて、ひとつずつ開けていく。中間の階に立ち入ることなく、工事を進めていくのだ。

この負担の軽さは、住む人の顔ぶれを思えば、いっそう重い意味を持つ。築30年を超えた建物には、高齢の住人も多い。5日のあいだ家にいて、水も使えない。そんな工事は、高齢者にはかなりの無理を強いる。壁を壊さずに済むことは、そのまま、暮らしへの負担を減らすことにつながっている。

藤井氏
「一番大きいのは、工期の短さです。工事に関わる、住んでいる方やビルを使う方の時間的な負担が短く済む。店舗であれば、営業を止める日数にも関わってきますから」

結果として、環境にも寄与する。壁や内装を壊さなければ、使う建材も、出る廃材も少ない。古い配管を取り替えずに生かすこと自体が、資源の節約になる。同社は、廃材とCO2を出さない技術で社会に貢献する、というSDGs宣言も掲げている。

暮らしの負担を減らし、マンションそのものの寿命を延ばし、廃材も出さない。一つの工法が、いくつもの価値を同時に生んでいる。では、なぜこの技術は、同社にしかできないのか。

 

他社は2年で撤退した。独自の技術は、失敗の先にあった

これだけの価値を持つ工法なら、他社も追いかけてきそうなものだ。実際、似た技術で参入を試みた会社はあった。ただ、2年と持たずに撤退していったという。原理が分かっても、同じようにはできない。この分野で、同社はほぼ独占の位置にいる。

もとをたどれば、発想の源は、道路の下を走る下水道の本管にあった。太いパイプの中に新しいパイプを作る工法は、下水道の分野では30年、40年も前から使われていた。しかし、建物の中を通る細い配管で、それをできる会社はどこにもなかった。その細い管の中にパイプを作り、さらに中から枝管へ穴を開けられないか。問いを立て、自分たちの手で形にしていった。

株式会社P・C・Gテクニカ・サポーター工法資料

管の中にパイプを作ること自体は、2000年ごろには現場でできていた。難しかったのは、中から穴を開ける工程だ。カメラで合流位置を見きわめるのがうまくいかず、穴がずれる。開け直すために、結局その配管を取り替えて補修する。そんな試行錯誤を重ね、安定してできるまでに、3年も4年もかかったという。穴を開ける機械を小さく作り込む技術と、現場の職人の熟練。その両輪が、ようやくかみ合った。

開発の過程で、同社は少なくない代償も払ってきた。それでも、手を引かなかった。一度の失敗で縁を切るのではなく、続ければもっと良くなるはずだと発注を重ねてくれた設計者たちの存在も、その背中を押している。

藤井氏
「下水道の太い管でできることを、建物の細い配管でやる。その上、中から一つひとつ穴を開けていく。これができる会社は、ほかにありませんでした。失敗を重ねながら、自分たちの手で一から築いてきた技術です」

積み重ねた技術は、仕上がりにも表れている。表面を塗装するだけの手法だと、10年から15年でまた改修が要る。だが、紫外線の当たらない場所にできる樹脂のパイプは、外から力が加わらないかぎり、錆びも腐りもしにくい。同社の保証は、基本で10年。毎年のメンテナンスを任せてもらえる場合は、最大20年までとしている。理論の上では、40年、50年もつ計算だという。実際、最も古い施工は2000年ごろのもので、26年を経たいまも現役で使われている。取り替えと、ほとんど変わらない寿命である。

技術は、確かだ。だが、その技術が本当に生きるのは、数字や理屈の上ではない。そこで暮らす、一人ひとりの毎日の中であった。

 

浴槽の湯をためるのが、怖かった。配管の再生が取り戻した、当たり前の暮らし

藤井氏が現場の監督を離れて、もう10年以上になる。それでも、工事を終えた先から感謝の声は届き続ける。マンションの管理人からの感謝状。工事の予定を知らせる掲示板に、いつのまにか書き添えられた「ありがとう、綺麗にしてもらいました」の一言。住人からの手紙も、めずらしくない。

なかでも藤井氏の心に残っているのは、ある高齢の女性の話だ。

かつて、自宅で漏水の事故を起こしたことがあったというその女性は、築30年を超えたマンションで暮らしていた。浴槽の栓を抜いたとき、古くなった配管の流れが追いつかず、水が逆流して溢れたのだ。それが脱衣所へ、洗面所へと広がり、やがて床に染みて、階下の部屋にまで被害を及ぼしてしまった。

それ以来、その女性は浴槽に湯をためるのが怖くなった。栓を抜けば、また溢れるのではないか。どうしても湯に浸かりたいときは、5分おきに様子を見に行く。溢れたらどうしよう。その不安を抱えたまま、入浴のたびに気を張ってきた。

同社の工事が入ったのは、そんな暮らしの中でのことだった。配管が生まれ変わっても、女性はしばらく、半信半疑で水の流れを見ていたという。しかし、1週間が過ぎても水はすんなりと流れていく。もう、気を張らなくていいのだ。これで湯をためて、ゆっくりと湯に浸かれる。何でもない入浴の時間が、静かに戻ってきた。

藤井氏がとりわけ心を動かされたのは、その女性が最後まで気にかけていたことだった。自分の不便よりも、かつて階下にかけてしまった迷惑。その一点を、長いあいだ、一人で背負っていたのだという。

同社が直しているのは、配管だけではない。そこで暮らす人が、胸の内で張りつめていたものも、そっとほどいている。こうした現場は、老いていくマンションの数だけ、これから増えていく。しかし問題は、その一つひとつを誰が担っていくのか、である。

 

自社だけでは、もう追いつかない。配管再生の裾野ごと、立て直す

需要は、これからも増え続ける。市場の追い風はまだ止みそうにない。だが、藤井氏が見据えているのは、自社がどこまで伸びるかではない。その先にある業界全体の持続だ。

FRPライニングの技術者は同社が自前で育てているが、問題はその先にある。工事には壁の一部を開け閉めする内装の工程が欠かせないが、これまでは外部の協力会社に頼ってきた。その役を担う大工や内装職人が、高齢化し、数を減らしている。ライニングの人材をどれだけ育てても、付帯する工事の担い手がいなければ、仕事そのものを受けられなくなる。

細る裾野は、人だけではない。あの筒状の布。エポキシ樹脂を染み込ませる、工事の要となる材料だ。これを織ってきた会社もまた、高齢化と廃業の波にさらされている。あまりに特殊で、どこでも作れるものではない。そのため同社は昨年から、材料そのものの内製化に乗り出した。

打てる手は、採用にもある。大卒者の入社を2024年の2名から、2025年は9名、2026年は12名へと、着実に増やしてきた。さらに同社は、採用や育成に課題を抱える同業とも手を携え、ともに人を集め、昔ながらではないやり方で技術を受け継いでいこうとしている。自社の成長の先にある、業界そのものの立て直しへと同社のつま先は向かっている。

藤井氏
「自分の会社だけで人を増やし、育てていっても、もう追いつきません。この改修の仕事を支える全体を良くしていく。そこまでを私たちが担うべきだと考えています」

株式会社P・C・Gテクニカ・工事の様子
工事の様子

環境への歩みも着実だ。昨年には、国際的な温室効果ガス削減目標である「SBT」(*2)の認定を取得した。さらに、十六銀行が新たに設けた「サステナビリティ・リンク・ローン(脱炭素の成果に応じて金利が変動する融資)」では、その取り組みが評価され第1号案件に選ばれた。

担い手を増やすという課題の先に、同社が思い描くものがある。採用の数を満たすだけではない。建設業という仕事そのものに、若い世代がおもしろさとやりがいを感じてくれること。古い配管を再生させるこの現場に、一人でも多くの人を呼び込むこと。それが、業界を次の世代へつなぐための確かな一歩になる。

取り替えずに、再生する。古い配管にもう一度いのちを吹き込んできた同社は、いま自らが身を置く業界そのものを、次の世代へつなごうとしている。

*2:SBT(Science Based Targets):地球温暖化を防ぐため、パリ協定が求める水準(世界の気温上昇を1.5℃に抑える)に合わせて企業が設定する、科学的根拠に基づいた排出削減目標。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

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