
アパレル業界において環境配慮への取り組みが急務となる中、大人のためのスペシャリティストア「ESTNATION(エストネーション)」が展開する独自の資源循環スキーム「KAISHU(カイシュウ)solutions(ソリューションズ)」が注目を集めている。衣類にとどまらず、店舗運営で生じるハンガーやアパレル用ビニールなどの資源化・再利用を担う取り組みだ。
エストネーションの旗艦店である六本木ヒルズ店では、初となる「衣類回収キャンペーン」が実施されていた(会期:9月29日〜10月13日)。

本キャンペーンの舞台裏と、エストネーションが目指すサステナビリティの未来について、サスティナビリティ開発推進室の竹山氏と、六本木ヒルズ店 ウィメンズDiv.マネージャーの馬場理々子氏にお話を伺った。
二子玉川店での手応えと、旗艦店での初挑戦
今回のキャンペーンは、不用になった衣類を持ち込むと、次のお洋服の購入に使える500円分のクーポンとして還元される仕組みだ。以前、馬場氏が在籍していた二子玉川店で2回実施した際には、大きな反響があったという。
馬場氏
「二子玉川というエリアは、お客様の環境問題やCSRに対する関心が高い地域です。前回のキャンペーンでは約2週間で60名ほどのお客様にご参加いただき、300着以上の衣類を回収することができました」
その成功体験を胸にスタートした旗艦店での初開催。しかし、都心ならではの難しさも見えてきているという。
「六本木ヒルズ店は、大都会の真ん中にあるため『洋服を持ってわざわざ来店する』ということに対して、少なからずハードルがあると感じています。また、大型店舗ゆえに、一人ひとりのスタッフにこの取り組みを落とし込む難しさも課題として見えてきました」(馬場氏)

商品や割引ではなく「価値観」が来店動機になる
地域特性によるハードルはあるものの、実際に店舗へ衣類を持参するお客様からの反響は非常にポジティブだ。長年お付き合いのあるお客様からは「まだ着られる服を捨てるのは心苦しい」といったご相談が寄せられることも多く、行き先が透明化された今回の回収スキームは高く評価されているという。
さらに馬場氏は、この取り組みがマーケティング施策としても新しい顧客接点を生み出していると語る。
「普段、LINEの配信などで集客を図る際は、新作商品や割引といった『モノ軸』や『お買い物軸』がメインになります。しかし今回は、環境配慮や資源循環という『価値観』を軸にお客様をお呼びできています。マーケティングの施策という観点で見ても、お客様にご来店いただく新しい動機づくりになっており、非常に良い取り組みだと感じています」(馬場氏)
「入口」と「出口」の両輪で構築する資源循環
こうした現場の取り組みを力強く後押しするのが、竹山氏だ。彼は、KAISHUsolutionsの本質は出口と入口の双方を連携させることにあると語る。

竹山氏
「お客様から不用になった衣類をお預かりし、リユースや資源化へとつなげる。これは情緒的価値を含んだ『出口』の戦略です。一方でエストネーションでは『入口』の戦略として、環境に配慮した素材を採用した商品づくりも推進しています。現状、環境配慮型素材の採用率は8.8%ですが、2030年までに30%へ引き上げる目標で進めています」

実は、六本木ヒルズ店のような大型店舗のバックヤードでは、日々発生するハンガーやアパレル用ビニールなどの分別と資源化が、スタッフの手によって徹底的に行われている。そうした地道な努力の延長線上に、今回の衣類回収キャンペーンがある。
「店舗の裏側で行ってきた資源化の科目のひとつに『衣類』が加わった形です。お客様と一緒になって資源循環のループを構築し、定着させていく。これこそが、今回の大きな目標です」(竹山氏)


顧客と共に歩むサステナブルな未来
捨てるという選択肢を減らし、共に循環させる仕組みを作る。エストネーションの「KAISHUsolutions」は、企業と顧客が同じ価値観を共有しながら持続可能な社会を構築するための大きな一歩と言える。
サステナビリティを企業が生き残るための競争戦略の重要な姿勢として掲げるエストネーション。彼らが店舗というリアルな場で顧客と織りなす資源循環のループは、今後さらに力強く広がっていきそうだ。



