
全国有数の柑橘産地・愛媛県今治市で、高齢化と担い手不足による遊休農地が広がっている。その再生に取り組むのが、今治市菊間町を拠点に柑橘を育てる株式会社MOriTO Farmingだ。
同社の柑橘が、地域商社の今治あきない商社を通じて今治市のふるさと納税返礼品として取り扱いを開始した。「人・地域・農業」を守るという理念を掲げ、産地の未来をつなぐ取り組みである。
東京ドーム40個分に広がる遊休農地
愛媛県は柑橘類の生産量が全国トップクラスの国内有数の産地である。なかでも今治市は、瀬戸内海の温暖な気候を生かし、温州みかんをはじめ「まどんな(愛果28号)」や「甘平」などのブランド柑橘が栽培される地域として知られる。
一方で、産地では高齢化や担い手不足の影響により、管理が難しくなった遊休農地の維持・継承が大きな課題となっている。今治市農業委員会の「地域計画」によると、市内の遊休農地は187ヘクタール、東京ドーム約40個分にのぼり、農地全体の4.0%を占める。市は令和18年度までにこの比率を2.0%まで減らす目標を掲げ、地域全体で農地の維持・活用を進めている。
社名に込めた3つの「守る」
こうした課題に向き合うMOriTO Farmingの社名「守り人」には、「人を守る」「地域を守る」「農業を守る」という3つの想いが込められている。
代表取締役の田中さんは東京都大田区の出身で、農家に生まれ育ったわけではない。縁あって今治市菊間町と出会い、地域の生産者から農業の知恵を学んだという。「地域の皆さんに教えていただいたことが、今の自分の農業の原点」と語り、受け継がれてきた技術や人とのつながりへの感謝を原動力に、地域産業を未来へつなぐことを使命として事業に取り組んでいる。
草刈りと土づくりから畑を蘇らせる
MOriTO Farmingは、高齢化などにより管理が難しくなった園地を引き継ぎ、草刈りや剪定、土づくりを行いながら農地の再生に取り組む。現在の栽培面積は約8ヘクタール、東京ドーム約1.5個分にまで拡大した。まどんな、甘平、温州みかんなどの柑橘を中心に、スイカや茄子などの野菜栽培も手がける。
農地を受け継ぐことは、単に栽培面積を広げることではない。耕作が難しくなった農地を維持し、次の世代へ受け継いでいくことが、産地全体を守ることにつながると同社は考えている。荒れた農地が再び実りある畑へと蘇る過程そのものが、産地の持続可能性を映している。
地域とともに育てる「共生型農業」
取り組みは農地の再生だけにとどまらない。収穫期などの繁忙期には地域住民と密に連携した作業体制を構築し、地域における雇用の創出にも寄与している。草刈りや水路整備、地域行事への参加など、コミュニティの一員として地域活動にも積極的に加わる。
農業は地域の中で営まれる産業だからこそ、人とのつながりを大切にすることが地域農業を守ることにつながる。これが同社の体現する「地域共生型農業」の姿だ。品質へのこだわりも特徴で、土壌管理や防除履歴を記録・管理し糖度測定を実施。果皮が薄く傷つきやすいまどんなは、一玉ずつ手作業で選別している。
ふるさと納税で今治の柑橘を全国へ
MOriTO Farmingは、地域での販売に加え、オンラインショップやふるさと納税を通じて全国へ柑橘を届けている。今回の返礼品採用を担ったのは、今治地域の所得循環を目指す「瀬戸内クロスポイント構想」の実現に向け2023年に設立された地域商社・今治あきない商社である。同社は今治市からふるさと納税業務を受託し、地域産品や生産者の魅力を発信している。
返礼品には、なめらかな食感と上品な甘さが特徴の「守り人のまどんな」や、シャキッとした歯ごたえと高い糖度を兼ね備えた「守り人の甘平」などがそろう。遊休農地の再生を軸に、人と地域をつなぐ農業をどう次世代へ受け継ぐか。今治あきない商社は、ふるさと納税で生まれた縁を大切に、産地と寄付者をつなぐ架け橋であり続けたいとしている。



