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ESG投資促進へ 企業と投資家つなぐ新サービスを発表

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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フォトセッション③
ESG投資を促進するSFP-ESSのサービス開始について説明した発表会(画像提供:サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会、以下同)

日立製作所や3メガバンク、大手保険会社でつくる一般社団法人サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会(東京都千代田区、山本真司代表理事)は2023年10月10日、ESG(環境・社会・企業統治)投資を促進するデジタルプラットフォーム「Sustainable Finance Platform/Engagement Support Service(SFP-ESS)」のサービスローンチ発表会を開きました。同年10月16日のベータ版提供開始後は、上場企業とその既存株主である運用機関のエンゲージ活動の深化に貢献することが期待されます。

運用機関の情報開示ニーズを把握するプラットフォーム

SFP-ESSはESG情報の開示により、上場企業と運用機関の相互理解を深めるツーサイドプラットフォーム。運用機関が上場企業に期待するESG情報の開示ニーズをISSB(国際サステナビリティ基準審議会)のベースとなるSASB(米国サステナビリティ会計基準審議会)のルールに沿って提示でき、上場企業にはそれらの情報を自社の開示方針策定に活かせるメリットがあります。

プラットフォーム上では、各指標の開示を重視すると答えた運用機関の総数や、指標別の運用機関の重視度を把握することが可能です。また、運用機関が上場企業に伝えたいコメントを直接入力できるため、各機関がその指標の開示を重視する背景・理由も探れます。運用機関はピンポイントかつ効率的に投資判断に必要な情報を収集しやすくなり、上場企業も開示ニーズが分かれば社内の合意形成の効率化を図れる仕組みです。

「上場企業に資金が回る好循環を生み出す」

社会動向説明②
上場企業と運用機関の相互理解促進の必要性を説いた山本代表理事

発表会では、SFP-ESSを提供する日立製作所の金融システム営業統括本部副営業統括本部長を務める山本代表理事が、ESG投資を取り巻く背景・社会動向について「ESG投資額は世界的に右肩上がりだが、国内の伸びがやや控えめなのは情報開示に関わる課題に起因している」と指摘。上場企業と運用機関の相互理解をさらに進めることで、上場企業に資金が回る好循環を生む必要性があると訴えました。

山本代表理事は同法人が2023年9月、全国の企業でESG関連業務に従事する課長クラス以上の500人に実施したアンケートの結果も紹介。自社のESG情報開示の取り組みを「不十分」とした回答が55.4%を占めた上、中型株では「ステークホルダーがどんな情報開示を求めているか分からない」という課題が多かったことを挙げました。

「開示情報の優先順位付けが必要」

続いて、圓尾哲也理事(三菱UFJ銀行ソリューション本部サステナブルビジネス部投資・事業推進室室長)も「上場企業はグローバルな複数の基準を踏まえた情報開示にリソースを割いているが、運用機関が求める情報開示は手探りなのが現状」と説明。ESG評価機関による適切な評価を得るための上場企業の負荷を軽減するには、開示情報の優先順位付けが欠かせないとの考え方を表しました。

上場企業の抱える課題③
運用機関のニーズに応える情報開示の重要性を提起した圓尾理事

その上で、今後の日本のESG情報開示のあるべき姿として、「日本社会や日本企業の特性・実情を踏まえたESG活動に対し、上場企業が運用機関のニーズに応じた開示項目に重きを置いた情報開示を行うとともに、運用機関は上場企業の実効性のある取り組みに対して投資をすることが望ましい」としました。

「ESG情報の大動脈となる社会インフラに」

また、小野祐文事務局長(日立製作所金融システム営業統括本部事業企画本部ESG推進室担当部長)は「上場企業の情報開示を起点とする現状のプロセスを180度転換し、運用機関の情報開示ニーズの提示を両者の対話の起点とすることがサービスの最大の特徴」と強調。SFP-ESSをESG情報の大動脈となる社会インフラに育て上げ、国内のESG投資をグローバルレベルに発展させる目標も掲げました。

SFP-ESSについて①
小野事務局長はSFP-ESS導入後の情報開示業務の流れを説明

発表会の終盤では、SFP-ESSについて機関投資家と運用機関から寄せられたコメントを紹介。「機関投資家と上場企業の深い相互理解を促し、適切な開示を通じた投融資判断への活用、エンゲージメント活動の深化に有用」「官民で150兆円超のGX投資を目指していくためには相互理解という課題の解決が欠かせず、このようなデジタルプラットフォームが構築され、さまざまなステークホルダーが参加することが必要」といった期待が示されました。

検索・分析機能充実や開示業務の支援サービス開始も視野

質疑応答で、山本代表理事はベータ版について運用機関10社、上場企業50社程度の導入を見込み、さまざまな意見を聞きながらサービスのブラッシュアップを図る方針を表明。小野事務局長はシステムの英語対応に加え、正式事業化に向けて参照データの検索・分析機能充実やESG情報開示業務の支援サービスに乗り出す考えを明らかにしました。

10月24日から上場企業向けのサービス説明会を開催

同法人は運用機関に続き、上場企業のユーザー募集も本格的に開始。10月24日、11月2、7、14日の計4日間、いずれも午後4時から1時間、上場企業の経営層やIR部門・サステナビリティの担当者向けにオンラインのサービス説明会(無料)を開催します。今後は1年間のベータ版の提供と評価を経て、2024年夏に正式事業化について判断する予定です。

◉団体プロフィール
一般社団法人サステナブルファイナンスプラットフォーム運営協会
ESG情報の開示について共通の問題意識を持つ日立製作所と金融機関が、2022年7月に立ち上げたオープンな協議会が前身。ESG投資を促進するデジタルプラットフォームを整備し、正式事業化に向けた有用性の価値検証を行うことを目的に2023年7月に設立されました。

会員企業には日立製作所、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、日本生命保険、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行の8社が名を連ねています。

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ライター:

十勝毎日新聞社(北海道帯広市)元記者。編集局社会部遊軍キャップ、本別支局長、編集局政経部デスク、東京支社次長、編集局政経部長などを歴任し、多くの政財界人の取材に携わった。在職中、月刊誌「都市問題」に論文「自治体の政策形成と市民参加 米国ポートランド・メトロの市民参加制度 広域的なまちづくりに向けて」を寄稿。現在は電子書籍、Web記事・コラムなど企業コンテンツのライター、編集者として活動している。

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