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「家族葬10.45万円」実際は約3倍の30.8万円 金宝堂「小さな森の家」に消費者庁が措置命令

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消費者庁 小さな森の家
画像:消費者庁公式X

「家族葬なら、この価格から」。テレビをつければ、そう囁きかける葬儀CMが繰り返し流れる。大切な人を見送るという、誰もが不慣れで、しかも避けては通れない場面。そこに提示される「格安」の数字を、多くの人は疑うことなく信じてしまう。だが、その数字が実態とかけ離れていたとすれば、話は別だ。

18日、消費者庁は、家族葬サービス「小さな森の家」を展開する株式会社金宝堂に対し、景品表示法違反(有利誤認)にあたるとして措置命令を出した。「10.45万円~」とうたったテレビCMの裏で、実際には3倍近い費用が必要だった。行政が「不当表示」と断じた、その中身を追う。

 

「10.45万円~」の裏に隠された最低30.8万円——消費者庁が認定した「有利誤認」

消費者庁の発表によると、今回問題とされたのは、金宝堂が「小さな森の家」の屋号で提供する、貸切ホールを用いた家族葬サービスである。同社は地上波のテレビCMで「家族葬 10.45万円~(税込)」と表示し、あたかも最低料金10万4500円でサービスを受けられるかのように宣伝していた。

しかし、消費者庁が調べたところ、実際にこのサービスの提供を受けるには、ごく僅かな例外を除いて30万8000円以上の費用が必要だった。広告が掲げた「入り口」の価格と、実際に支払うことになる最低額との間には、約3倍もの開きがあったことになる。

消費者庁は、この表示が取引条件を実際よりも著しく有利だと消費者に誤認させるものであり、景品表示法第5条第2号(有利誤認)に該当すると判断。同法第7条第1項に基づき、堀井奈津子長官名で措置命令に踏み切った。金宝堂は東京都渋谷区に本社を置き、代表取締役は仲村和明氏。葬儀業などを手がける、資本金1000万円の事業者である。

 

CMが繰り返した「1日1組 貸切ホール」「この価格から」という演出

命令書が描き出すCMの構成は、視聴者の心理を巧みに突くものだった。公表資料によれば、CMは花飾りを背景に「家族葬なら」「小さな森の家」と語りかけ、「1日1組限定」「選べるホールがこんなに」と特別感を演出する。そのうえで「お得なプランがこの価格から」というナレーションとともに、「家族葬 10.45万円~(税込)」の文字を大きく映し出していた。

問題は「~」の一文字に集約される。理屈のうえでは「10.45万円から」であり、それ以上かかる可能性を否定してはいない。だが、大きく踊る「10.45万円」の数字に比べ、実際に大半の利用者が支払う30万円台という現実は、どこにも大きくは示されていなかった。この表示は2025年3月から5月にかけて、断続的に流され続けていた。

 

命令の3本柱——「不当表示」の周知徹底、再発防止、そして報告

金宝堂に命じられた措置は、大きく三つである。第一に、当該表示が景品表示法に違反する不当なものであった旨を、消費者へ速やかに周知徹底すること。その方法は、あらかじめ消費者庁長官の承認を受けなければならないとされた。第二に、再発防止策を講じ、これを従業員に周知徹底すること。第三に、今後、同種の有利誤認表示を行わないことである。加えて、これらの実施結果を文書で報告するよう求められている。

ただし、措置命令はあくまで行政上の「是正」を促すものであり、それ自体に罰金のような直接の金銭的制裁を伴うわけではない。SNS上で「結局やったもん勝ちなのでは」との冷めた声が漏れたのも、この制度の性格を突いたものといえる。

 

「〜円から」広告の落とし穴——専門家も警鐘を鳴らす価格表示

今回の一件は、金宝堂一社の問題にとどまらない。「〜円から」という価格表示は、葬儀業界に限らず広く用いられてきた、いわば常套句である。葬儀社「佐藤葬祭」代表で、葬儀系YouTuberとしても知られる佐藤信顕氏は、かねてより「〇万円から」とうたう格安葬儀広告の実態を問題視してきた一人だ。「10万円を下回る額で葬儀を営むのは事実上難しい」という指摘は、業界の内側からたびたび発せられてきた。今回の措置命令に対しても佐藤氏はXで即座に反応し、行政が動いたタイミングの重さに触れている。

SNSでは「消費者庁公表の資料を読んだが、なかなかエグい誤認表示だ」といった驚きの声のほか、問題とされたのがテレビCMであり、折込チラシなど他の媒体は対象外である点を指摘する投稿も見られた。安さを前面に出す広告が、媒体を替えながら各所で流通している現状への懸念である。

 

価格の透明性が、故人と遺族への誠意を映す

葬儀は、人生で何度も経験するものではない。相場の知識を持たないまま、深い悲しみのなかで短時間の判断を迫られる——その特殊性ゆえに、事業者が掲げる価格は、他のどの商品よりも重い意味を持つ。だからこそ、入り口の数字と実際の負担が大きく食い違えば、消費者は「安さ」に惹かれて選んだはずが、意図せぬ高額な支払いへと導かれてしまう。景品表示法が守ろうとするのは、まさにこの「自主的かつ合理的な選択」の余地にほかならない。

低価格を訴求すること自体は、決して悪ではない。問題は、その数字が誰にとっての、どの条件での価格なのかを、消費者が正しく理解できる形で示されているかどうかだ。行政の一片の命令で幕引きとするのか、それとも業界全体が価格表示のあり方を見直す契機とするのか。故人と遺族に向き合う仕事であればこそ、その誠実さが、いま静かに問われている。

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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