
自動ドアの技術を、日本からアジアへ。1966年創業の日本自動ドアが、ベトナムに現地法人「JADIAS CO., LTD.(ジャディアス)」を設立した。
同社にとって初の海外直営拠点で、ホーチミン市を中心に事業を始める。日本で培った技術とサービスの海外展開に向けた、第一歩と位置づける。
100%出資の初の海外直営拠点
同社によると、JADIASは日本自動ドアが100%出資する子会社で、2025年11月に設立し、2026年8月から営業を始めた。拠点は、ベトナム・タイニン省のタンキム工業団地内にあるレンタル工場に置く。全国26拠点で事業を展開してきた同社にとって、海外に自ら構える直営の拠点は初めてとなる。代理店などを介さず、自社で現地に根を張る形で、成長するアジア市場に踏み込む。
ベトナムは、経済成長が続き、都市の開発が活発な国として知られる。商業施設やオフィスビル、病院などが次々と建てられ、自動ドアの需要も広がっている。そうした市場に、製造から施工、保守までを一貫して手がけてきた日本のメーカーが直接乗り込む形だ。現地に拠点を持つことで、市場の動きにきめ細かく応じられる。日系企業の進出も相次ぐベトナムでは、日本と同じ品質の設備やサービスへの需要も見込まれる。
輸入から施工・保守まで一貫対応
現地では、本社が持つ技術と品質を、ベトナム市場に届ける体制を築く。同社によると、日本から輸入する製品や部品の在庫を確保し、現地のエンジニアが施工から保守までを一貫して担う。自動ドアは、設置して終わりではなく、安全に動き続けるための保守が欠かせない設備だ。売って終わりにせず、据え付けからその後の点検・修理までを地元で完結できる体制を整えることで、品質への信頼を積み上げる狙いがある。
海外では、製品を売っても、その後の保守が追いつかずに評価を落とす例も少なくない。部品の在庫を現地に持ち、地元のエンジニアが対応できるようにしておくことは、故障時にすばやく直せることを意味する。日本国内で培ってきた、きめ細かなサービスの水準を、そのままベトナムでも保とうとしている。施設の入り口という人が毎日行き交う場所で使われるだけに、止まらず安全に動き続けることの価値は大きい。

技術者不足と、人材育成の還流
背景には、日本国内の事情もある。同社によると、国内では技術者の不足が課題になっているという。ベトナムに拠点を置くことで、現地でエンジニアを育て、その技術を日本にも還元する流れをつくる。海外での人材育成が、国内の担い手不足を補う一助となる構図だ。あわせて、部品の調達などサプライチェーンを強化し、事業を継続しやすくする効果も見込む。海外進出を、単なる市場開拓にとどめず、国内の課題解決にもつなげようとしている。
人口が減り、ものづくりの担い手が細っていく日本にとって、海外の人材とどう協力していくかは大きな課題だ。現地で育てた技術者が日本の現場でも力を発揮できれば、双方にとっての利点になる。技術を教え、学び合う関係を築くことは、目先の人手の確保を超えた意味を持つ。
ホーチミンからASEANのハブへ
日本自動ドアは、1970年設立の自動ドアメーカーで、設計や製造から販売、施工、保守までを手がけてきた。長く国内で積み上げてきた技術を、今回初めて海外の現場に持ち出す。
同社は、まずホーチミン市を中心に事業の基盤を固め、その後ベトナム全土へと展開する考えだ。さらに需要に応じて、ASEAN各国への拡大も視野に入れる。ベトナムを、東南アジア市場への玄関口となるハブとして育てようとしている。人口が増え、経済も伸びる東南アジアは、国内市場が成熟した日本の製造業にとって、成長の余地の大きい地域でもある。 自動ドアは、車いすやベビーカーの利用者をはじめ、誰もが出入りしやすい環境を支える設備でもある。同社は、街全体のアクセシビリティ(利用のしやすさ)の向上に貢献したいとしている。日本の技術が、成長するアジアの街づくりにどう根づくかが注目される。



