
世界的K-POPスターのaespa・KARINA(カリナ)を起用し、新作スニーカーを格好よく売る――。コンバースが仕掛けたはずの広告は、米国でまったく別のものに見えてしまった。
「KKKの白装束ではないか」「黒人が吊るされているように見える」
ロイターが9月21日の米ABCニュースの報道をもとに伝えたところによると、問題となったのは「Chuck 70 X」の広告写真だ。白いロングスカートを着たカリナが、黒いスニーカーを手にしている。一見すれば、光と影を使ったファッション広告。ところが、白いスカートに落ちた光が尖った三角形をつくり、その横では黒いスニーカーがぶらりと垂れ下がっていた。
米国人の一部には、この構図が白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の白い尖り頭巾と、その横でリンチされ吊るされた黒人を思わせた。コンバースは画像を削除し、「この画像がなぜ深く傷つけるものなのかを理解している。われわれの判断が誤りだった」と謝罪した。
「偶然そう見えた」では済まない、米国に残るKKKの記憶
日本人の感覚からすれば、「そこまで読み取るのか」と思う人もいるかもしれない。しかし米国ではKKKの白装束は、単なる昔の悪役衣装ではない。
米国在住のジャーナリスト・町山智浩氏は、2009年にKKK発祥の地とされるテネシー州プラスキで実際に集会を取材している。当時、集まっていたのは50人ほどで、町山氏は集会自体は「ものすごくひっそり」していたと伝えている。
現在のKKKはかつてのような巨大組織ではない。それでも、尖った白い頭巾という記号そのものは、黒人へのリンチや人種テロの歴史と強く結びついている。
だからこそ、コンバースの広告は洒落にならなかった。制作者に差別的な意図があったことを示す証拠はないが、広告とは厄介なもので、「そんなつもりではなかった」より「そう見えてしまった」が勝つ。
実はもう1枚あった「木から吊るされた靴」
そして、この騒動にはロイターの記事だけでは見えにくい、さらに間の悪い話がある。
ロサンゼルス・タイムズや広告専門誌Adweekによると、同時期に問題視されたコンバースの広告は、カリナの写真だけではなかった。

別の広告には、木のそばに立て掛けられた梯子を人が登り、その上にはスニーカーが吊るされている構図があった。こちらはカリナの「Chuck 70 X」とは別のConverseとデンマークのブランドPalmesによる広告だったが、「木から吊るされた靴」というビジュアルまで重なり、黒人リンチを連想させるとの批判に拍車をかけた。
一枚だけなら「光の偶然だった」と説明できたかもしれない。しかし、同じブランドから似た時期に、今度は文字通り木の近くに靴を吊るした広告まで出てくる。コンバースにとっては、最悪の合わせ技となった。
ナイキ傘下の世界企業で、いったい誰も止めなかったのか
結局、一番気になるのはここである。
コンバースは個人経営の靴屋ではない。親会社はナイキだ。撮影にはカメラマンがいて、アートディレクターがいて、写真を選ぶ担当者がいる。さらにブランド側が確認して、ようやく世界へ公開される。
それなのに誰も「これ、まずくないか」と言わなかったのか。
AP通信はコンバースに対し、広告を公開する前にどのような審査をしていたのか、なぜ承認されたのかを質問したが、同社は詳細な回答を避けたという。米公民権弁護士リー・メリット氏も、問題の画像が法務、マーケティング、経営などのチェックをすり抜けたこと自体を問題視している。
なお、現時点でカリナ本人が広告の構図やライティング、写真選定に関与したとの情報はない。カリナや所属するSMエンタテインメントも、この問題についてコメントを出していない。モデルを叩くのは筋違いだろう。

新しい「Chuck 70 X」を世界に知らしめるはずだった広告は、確かに世界中で話題になった。ただし、人々が覚えたのは靴の履き心地でもデザインでもない。
「ナイキ傘下の巨大ブランドで、なぜこれを誰も止めなかったのか」。
コンバースにとっては、何とも高くついた宣伝になった。



