
「16万5000円のエラボトックス、その値段はどうやって決めているの?」
高須克弥氏と若手美容外科医のX上のやり取りで飛び出した、思わず二度見してしまうような金額。実際、高須クリニックのエラボトックスは1回16万5000円。一方、8800円で受けられるクリニックもある。薬剤や単位数、施術内容が違うため単純な価格比較はできないものの、なぜここまで差がつくのか。Netflixで美容整形業界を描く「ダウンタイム」も話題になる今、美容医療の価格と価値について考えてみたい。
「無礼者」の発言から始まった疑問
発端は9月23日、高須克弥氏がXに投稿した内容だった。高須氏は、ボトックスの美容医療への導入について自身の経験を語り、価値ある後継者には技術を惜しみなく伝えるという趣旨を投稿。そのうえで、礼を欠いた相手に対して「無礼者」と強い言葉を投げかけた。これに反応したのが、HAAB BEAUTY CLINIC南青山に勤務する美容外科医のくもやま氏だ。くもやま氏は、高須氏から無礼者と言われたことについては「大先輩からそう言っていただけるのは光栄」という趣旨で返しつつ、知りたいのはボトックスの注射技術ではなく「エラボトックス16万5000円の価格が、どうやって決まっているのか」ということだと投げかけた。高須クリニックの公式サイトを見ると、料金は1回16万5000円。痛みを軽減する質の高い国産極細針の使用や麻酔処置、筋肉の発達や位置を見極めた注入技術といった独自のこだわりも説明されている。一方で薬剤代がいくら、技術料がいくらといった詳細な内訳が明記されているわけではない。だからこそ、若手医師の問いは妙に生々しく響いた。
クリニックによって異なる料金設定
実際に美容クリニックの料金を見てみると、エラボトックスの価格差はかなり大きい。湘南美容クリニックでは、韓国製ボツリヌストキシンを両側40単位で8800円、80単位で1万6000円としている。アラガン社製でも40単位1万8000円、80単位3万5800円だ。東京美容外科では、エラボトックス50単位で通常のボトックスが3万5000円、ボトックスビスタが4万5000円、コアトックスが5万円となっている。こうして料金表を並べると、16万5000円という数字がかなり目立つ。もっとも、薬剤の種類や単位数、施術内容などが異なるため、単純に価格だけを比較できる話ではない。高須クリニックは公式サイトで、自由診療の価格は一律に決まったものではなく、使用する資材や医師の考え方、設備、経営方針などによって変わると一般的な価格設定について説明している。つまり、同じエラボトックスという名前であっても、料金表にはかなりの開きが存在しているのが実情である。
X上で飛び交うリアルな反応
今回のやり取りをめぐっては、X上でもかなり率直な意見が飛び交っている。
【価格の提示・明朗会計を評価する声】
「安くはありませんが最初からこの価格で広告提示して患者さんが納得して支払っているなら問題ないと思います」(群馬の美容外科医)
「高いと思うなら安い大手とか工場系予約すればいい」
「ボトックス5000円って書いてるのに、見積もり50万になる病院の方がよっぽど詐欺だと思う」
【高額な価格設定に対する疑問や批判】
「どう考えてもエラボトックスに16万の価値があるわけない」
「相場より高い価格設定は信者狙い、情暗狙いなのは変わらず」
「銀座にコースで40万円以上するステーキ屋さんがあるのですが、高過ぎると思います。高須クリニックのエラボトは韓国製のものなのに16万円以上だということですよね? 上のステーキ屋さんと同じ感覚なのではないでしょうか?」
【ブランド力や姿勢を支持する声】
「高須クリニックって値段が大昔から変わってないのは有名だよね。だから豊胸は逆にめちゃくちゃ割安で克弥先生をご指名することもできてた」
「高須さんはエラで16万5,000円と、今も値下げ競争に乗っていない。老舗ブランドの価格政策は見習うところが多い。」(THE CLINIC あべ院長)
このように、価格の高さに対する批判がある一方で、明確な価格提示や老舗としての姿勢を評価する声も混在している。
安さや高さだけで選ばない理由
実際に美容医療を利用している知人にこの話をすると、「値段だけで決めるのは本当に危ないと思う」というかなり現実的な答えが返ってきた。その人も最初から特定の医師に決めていたわけではないという。美容クリニックは数が多く、料金もピンキリだ。いろいろ見たうえで、この先生なら任せられると思える医師を見つけ、現在もその医師に施術をお願いしているそうだ。美容医療では、施術を受ける前に医師の技術や経験を完全に見抜くのは難しい。料金表なら誰でも見られるが、その医師が自分の顔をどう見て、どこにどれだけ注入するのかまでは価格だけでは分からない。だからといって、高い施術なら安心、安い施術なら危険という単純な話でもない。価格以外の部分まで見て、自分が納得できる医師を選ぶ姿勢が重要になってくる。実際に美容医療を利用する人の中には、そうした選び方をする人も少なくない。
何にお金を払うのかという本質
ここで少し美容医療から離れて考えてみると、私たちは日々、価格と価値を比べながら買い物をしている。同じように見える商品でもブランドによって値段が違い、ホテルも寝るための場所として安さで選ぶ人がいる一方、立地やサービス、空間まで含めて選ぶ人もいる。「そこまで払う価値がある」と考える人もいれば、「そこまで払う必要はない」と考える人もおり、どちらが正しいという話ではない。大切なのは表示された価格だけを見るのではなく、その価格の背景に何があるのかを知ったうえで、自分にとっての価値を判断することだろう。美容医療でも同じだ。同じボトックスでも使う薬剤や量、医師の判断、注入の仕方、診察やアフターケアなど、患者が見るポイントはいくつもある。高ければ必ず満足できるわけではなく、安ければ技術が劣るとも言えない。最終的にその価格に価値があるのかを判断するのは料金を決める側ではなく、実際にお金を払う側だ。16万5000円を高いと感じる人もいれば、納得して受ける人もいる。何にお金を払うのか、その背景を知り自分自身で価値を考えるきっかけを今回のやり取りは提示している。



