
有名なおかき屋が店を畳む。その理由が、社長と天皇陛下の合体合一だというのだから、閉店を惜しむ前に二度見してしまう。兵庫発祥の播磨屋本店が2027年3月末で直営店と通販の全営業を終えるのだ。
「朝日あげ」や「はりま焼」を送り出してきた店の閉店告知は、なんと「聖なる廃業のお知らせ」。お茶請けの買い物が、突然、人類の命運を背負う話になった。
なぜ廃業?
告知に署名した代表の播磨屋助次郎氏は、廃業の目的を「人類根本救済」の始動に必要な、自身と天皇陛下の「合体合一」の実現だと説明する。告知で理由に挙げているのは、原材料高でも後継者不足でもない。商売より大きな仕事が待っている、という筋書きなのだ。その根拠がまたすごい。助次郎氏は自分を「古今の全人類最高の知性」と位置づけ、人間とは何か、人生の真の幸せとは何か、その答えを完全に解明したという。ようは「日本一おかき処」の看板では、もう器が小さすぎるということらしい。
街宣トラックで救いたかったのは地球
播磨屋といえば、白い大型トラックに赤と黒の強烈な文言を載せた街宣活動でも知られる。過去の車体デザインには「日本は近々滅亡する」といった警告や、国産食糧の増産を迫る文句が並んだ。おかきの宣伝と思って眺めると、商品の説明が一向に始まらない。
右翼の街宣車を思わせる姿だが、助次郎氏が主題としてきたのは環境問題だ。2023年の東京本店閉店時の挨拶にも、そう明記されている。現在の公式サイトでは、富や名声を追い求めることが本当に善なのかとも問いかける。訴えをつなぐと、目指す先は単なる政権批判ではなく、人間の生き方そのものを変えることにあると読める。
そこで登場するのが天皇陛下だ。サイトには「覚者の神知と天皇の威徳」「合体すれば全知全能」とある。本人の構想を平たく言えば、自分が解き明かした知恵と天皇の威徳を組み合わせ、世界を救うということらしい。環境を守ろうという話が、いつの間にかおかき屋社長と天皇陛下の二人三脚になっている。
人類の幸せと、お茶請けの幸せ
しかも、商売よりこの活動を優先する姿勢は今回に始まらない。2023年の閉店挨拶では、大型トレーラーによる直訴の影響からか人手不足に陥ったと説明。「直訴中止か閉店か」で葛藤したものの、環境問題は公益、商売は私益だからと閉店を選んだという。普通なら、店を続けるために街宣を控えるのでは、と考えるところだが、助次郎氏の優先順位は逆だった。当時は閉店後も通販を利用してほしいと呼びかけていたが、今度は、その通販も終えるのである。
まいどなニュースが紹介した本人のプロフィールによれば、2025年には廃業に備え、一般財団法人「覚者播磨屋助次郎令和救世会」を設立したという。本人なりに準備を重ねた計画なのだ。客がその筋書きについていけるかは別の話だが。
人類の幸せを解明したという社長には、お茶をすすり、おかきをかじる幸せも、もう少し勘定に入れてほしかった。地球を救う大仕事の前に、あの味を残す相談くらいはできないものか。



