
15周年を迎え、勢いそのままにミリオンヒットを飛ばしたばかりのアイドル集団。そのステージに熱狂し、決して安くはない対価を投じて何枚ものCDを買い支えてきた熱心なファンたちがいる。ところが今、その熱量の受け皿であるはずの特典施策の運用を巡り、当のファンから悲鳴と怒りの声が上がっている。
発端は、スターダストプロモーションの男性アーティスト集団EBiDAN(恵比寿学園男子部)が15周年記念シングル「Yes!東京」の購入特典として実施した特典会の抽選に当選したはずのファンのもとへ、後日になって当選権利無効を告げる通知が届いた、というSNSでの告発だった。
ミリオンの陰で噴出した「当選権利無効」問題
EBiDANといえば、超特急やM!LKをはじめ全10グループ・総勢60名を超える大所帯として知られる。2026年8月に発売された15周年記念シングル「Yes!東京」は、オリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得し、初週でミリオンセールスを記録するなど、その人気は円熟の域にある。しかし今、華々しい数字の裏側で、購入特典の運用の杜撰さが露呈しつつある。
問題となっているのは、CDの購入者に付与されるシリアルナンバーを使った特典会の抽選である。対象店舗でシングルを全額前金で予約・購入すると、抽選システム「chord」を通じて、メンバーとのお手紙お渡し会などを内容とする『EBiDANプレミアム特典会』に応募できる仕組みだ。ところが、第3弾スペシャル特典会の1次応募で一度は「当選」の結果を受け取った一部のファンのもとに、後日、その権利を無効とする通知が届いたという事態が相次いで報告されている。手元にCDがあるにもかかわらず当選が取り消されるという異例の展開に、ファンの動揺は広がっている。
「物が届いてるのに当選剥奪」Xで相次ぐ告発
騒動が表面化したのは9月中旬のことである。Xで拡散した投稿によると、ある熱心なファンが、長らく楽しみにしていた特典会に当選していたにもかかわらず、その権利を一方的に無効とされたと訴えた。この投稿は235万回を超えて表示され、大きな反響を呼んだ。
投稿者は「当選してたのにCD発送できないからって無効になった」「こちらいくらかけてると思ってんの」と、隠しきれない怒りをあらわにしている。さらに「こちら側には買った瞬間返金不可なのに、自分達が発送できなくなったら返金なの」と、購入者と運営との間にある対応の非対称性への不満をぶつけた。
同様の訴えは一人にとどまらない。別の利用者は、自身のマイページで抽選状況の表示が「当選」から無効に切り替わっているスクリーンショットを添え、「サイトを確認したらしっかり無効にされている。これはどうなってしまうのか」と困惑を隠せずにいた。作品や推しへの愛情ゆえに待ちわびていた当選が、身に覚えのない理由で覆される。その理不尽さを訴える声が、SNS上で次々と可視化されていった。
無効の根拠は「注文がキャンセル」 食い違う実態
ファンの不信を決定的にしたのは、無効の根拠としてchord側が示した文面だった。
複数の投稿によると、通知には「シリアルナンバーを提供した対象ストアより、対象商品の注文がキャンセルとなった旨の連絡を受けたため、当選権利を無効とさせていただく」という趣旨が記されていたという。マイページ上の抽選結果にも無効となる旨が反映される、との案内もあった。
しかし、当のファンたちは口をそろえて反論する。注文をキャンセルした覚えはなく、CDは手元にある、あるいはすでに配達済みだというのだ。あるファンは、楽天でグループのBUDDiiS盤を購入し配達済みであることを確認したうえでこの通知が届いたとし、「詐欺ですよこれ」「積んだ分、会わせろよ。こっちは金払ったんだよ」と、やり場のない心情を吐露している。買い支えてきたはずの対価が、自らの非ではない事由で無に帰す。その落胆は、企業姿勢そのものへの強い不信へと変わりつつある。
被害は約20名規模に HMV購入者を中心に拡大
事態は単発の行き違いでは説明がつかない広がりを見せている。被害者を募る投稿をした利用者によれば、現時点で約20名程度から同様に無効とされたという報告が寄せられているという。その多くはHMVのオンラインまたは店舗での購入者で、いずれも第3弾スペシャル特典会の1次応募に共通しており、まれに楽天ブックスやAmazonでの購入者も含まれていたとされる。
被害の実態は、単純な購入取り消しでは片づけられない。数百枚のCDを購入し、そのほとんどが落選するなかで、わずかに当選していた分のシリアルに限ってキャンセル扱いとされていた、というケースも報告されている。特定の店舗や応募回に偏って発生している以上、対象ストアからの連絡と購入者の手元の実態との間に食い違いがあるのではないか、データの照合や処理の過程に不備があったのではないか、という疑念がファンの間で強まっている。「何人もいるのに、CDを買わせるだけ買わせて参加させないのはあまりに酷い」と、同情の声も広がった。
「積んだ分、会わせろ」特典商法とファンの心理的搾取
今回の一件は、EBiDANという一集団の運用問題であると同時に、CDにシリアルや特典を付けて複数購入を促す、いわゆる特典商法の危うさを改めて浮き彫りにした。
目当てのメンバーに会うため、あるいは当選確率を上げるために、ファンが同じCDを何枚も買い込む「積む」という行為は、いまや珍しくない。企業側にとっては収益性の高い手法だが、そこには、正しく抽選が行われ、勝ち取った権利が正当に処理されるという、運営とファンとの間の暗黙の信頼が不可欠である。
その前提が崩れ、しかも購入者に非のない事由で当選が剥奪されたとなれば、ファンが抱く感情は単なる落胆から搾取されたという怒りへと変わる。「これだけ売上を出したのに、こんな結果では今後積む人がいなくなる」「当選が運営側の不手際で剥奪されるなど、めったにない」といった声は、忍耐の糸が切れかけていることを物語っている。
熱量と顧客対応は両輪であるべき
15周年でミリオンを達成したEBiDANの勢いは、熱心なファンの支えがあってこそのものである。ファンは、CDを買い続けるだけの都合の良い財布ではない。作品を共に育て、次世代へと語り継ぐ重要なステークホルダーだ。トラブルが生じた際に、自社側の過失の可能性を省みず、ファンの心情に寄り添う姿勢を欠いたままの対応を続ければ、長年かけて築いたブランドと人気を自ら損なうことになりかねない。
シリアルや抽選を用いた特典施策は、その不透明さゆえに常にリスクをはらむ。販売元や運営側には、店舗との連携やデータ管理の徹底と、異常が疑われた際の透明で誠実な対応が、これまで以上に強く求められている。今回の騒動が一過性の炎上で終わるのか、それともファンとの健全な関係を見直す契機となるのか。chordや販売元が今後どのような説明と対応を示すのか、その行方を見届けたい。



