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ガーシー「夜職・不良にスポットライトは再考を」それでも“危うい人”を見てしまうのはなぜ?

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ガーシー
ガーシー 公式Xより

ガーシーがXで「そろそろ夜職にスポットライトあてたり、不良にスポットライトあてたりするのは再考するときが来たんとちゃうかなー」と問題提起した。

「またこの人が話題になってる」と思いながら、つい記事を開く。炎上すれば続きが気になり、過去まで検索する。なぜ私たちは、“危うい人”から目を離せないのだろうか。

 

「夜職・不良ばかりでいいのか」

ガーシーは9月14日、元キャバクラ嬢の有名インフルエンサーが始球式を務める予定だったイベントの中止を伝える記事を添え、「そろそろ夜職にスポットライトあてたり、不良にスポットライトあてたりするのは再考するときが来たんとちゃうかなー」とXに投稿した。コメント欄には賛同する声のほか、「昼職を真っ当に働いている人にも光を当ててほしい」という趣旨の反応も寄せられた。

言われてみれば、最近のネットコンテンツではキャバ嬢、ホスト、元不良といった肩書きを目にする機会が多い。華やかな生活、巨額の売り上げ、壮絶な過去、激しい口論、人生の逆転。テレビでは扱いにくかった世界がYouTubeやSNSでは主役になった。だが、ここで気になるのは「なぜ出すのか」以上に「なぜ見るのか」だ。見られなければ、ここまで巨大なコンテンツには育たない。

 

『LAST CALL』10億回再生 しかも視聴者の75%が女性

その勢いを数字で示しているのが、2026年1月にYouTubeで始まったキャバ嬢オーディション番組『LAST CALL』だ。運営会社によると、開始から約4カ月で本体チャンネルや切り抜きなどを含む関連動画の累計再生回数が10億回を突破。本体チャンネルだけでも月間900万~1100万回超、関連動画では月間最大3億回を記録した。第1回は9月10日時点で約450万回、第7回も約376万回再生されている。

さらに興味深いのが視聴者だ。運営発表では約75%を女性が占め、25~34歳だけで40.6%に達する。キャバクラを利用する男性が店の裏側をのぞいている、という説明だけでは足りない。むしろ20~30代女性が大量に見ている。彼女たちは何を見ているのか。そこを考えると、『LAST CALL』が単なる「夜の世界紹介」ではないことが見えてくる。

 

見たいのは「この人、どうなるの?」

人気動画のタイトルには「母の病気のため稼ぐ」「親・金・子どもを全て失った」「場外乱闘」といった強い言葉が並ぶ。最近の動画でも「妹の死」「19歳で2カ月No.1」「600人斬りナンパ師」など、その人が背負ってきた人生や極端な経歴が前面に出る。視聴者が見ているのは接客テクニックや店のシステムだけではない。「この人はこの先どうなるんだろう」という、人間そのものへの興味だ。

普通なら人に隠したくなる失敗や家庭事情、借金、挫折、過去の職歴までが物語の材料になる。そこへ審査員との衝突、合否、売り上げ、成功が重なる。ドラマなら脚本家が用意する展開を、実在する人が自分の人生で見せてくれる。しかも結果は誰にも分からない。次回を待つ間にも本人のSNSが更新される。この「現実なのに連続ドラマのように続く」感覚が、視聴者を引っ張っている。

 

「どん底から逆転」の方が気になる

ここには少し残酷な構造もある。ずっと真面目に働き、借金もトラブルもなく生活してきた人より、「すべてを失った」「元不良だった」「夜の世界で人生を変えた」という人の方が、短い言葉で強い物語を作りやすい。「年収300万円から1億円」なら変化が見える。「昔も今も真面目に働いています」では、その落差が生まれにくい。

人は結果だけでなく、ビフォーとアフターの差に引きつけられる。ダイエット番組もオーディション番組も、最初から完成した人より変化する人を追う。夜職や元不良のコンテンツも同じだろう。過去が荒れているほど現在との落差は大きくなる。かつてなら隠したかった経歴が、SNS時代には「この人をもっと知りたい」と思わせる入口にもなる。

 

「あの人、その後どうなった?」

さらに強いのが、番組を見終わった後だ。出演者の名前を覚えると、今度はXやInstagramが気になってくる。誰と仲がいいのか、誰と揉めているのか、店では売れているのか。番組本編とは関係のない投稿まで「続き」として追いかけ始める。『LAST CALL』でも出演者同士のSNS上での応酬や審査員をめぐる動きが注目され、本編の外側まで話題が広がってきた。

ここまで来ると、一つの番組を見ているという感覚とは少し違う。視聴者は「人」を追っている。番組で気になった人物が半年後に成功すれば見たくなるし、炎上しても気になる。何か問題が起きれば「あの番組に出ていた人だ」とクリックする。本人の人生が続く限り、コンテンツにも続きが生まれる。この終わりのなさは、映画やドラマにはない強さだ。

 

なぜ炎上まで見てしまうのか

SNSで誰かが揉めていると、内容を知らなくてもつい投稿を開いてしまうことがある。「何があった?」「どっちが悪い?」「このあとどうなる?」。人間関係の対立には、続きを確認したくなる力がある。『LAST CALL』でも、母親の病気や人生の再起を扱った回だけでなく、出演者同士の衝突を前面に出した第7回が約376万回再生されている。

炎上が起きると、さらに参加しやすくなる。「私はこっちだ」「それは違う」と誰でも意見を持てるからだ。見るだけだった人がコメントし、切り抜きが拡散され、別の人が反応する。制作側がゼロから話題を作り続けなくても、出演者と視聴者のやり取りで次の話題が生まれる。ネット時代のスターは、作品だけで有名になるとは限らない。揉め事や失言まで含めて「目が離せない人」になることがある。

 

「夜職だから見ている」だけでは10億回を説明できない

運営側は『LAST CALL』について、トップキャバ嬢がSNSやブランド運営などへ活動を広げ、「稼ぐ力」や「自己プロデュース力」を体現する存在として同世代女性から支持されていると分析している。実際、視聴者の約75%が女性という数字を見ると、「男性がキャバ嬢を見る番組」というイメージとはかなり違う。

ここには、夜職に対する見え方の変化もありそうだ。SNSでは売り上げ、ファッション、美容、恋愛、経営、人間関係まで発信される。数千万円、億単位のお金を動かす女性が、自分の名前で客を集め、自分自身をブランド化する。その姿を「夜の仕事」としてだけでなく、「稼ぐ女性」「自分で人生を変える女性」として見る層が生まれている。だから成功だけでなく、失敗や対立まで含めて追いかけたくなる。

 

「昼職にも光を」では埋まらない差

ガーシーの投稿への反応にあった「昼職を真っ当に働いている人にも光を当ててほしい」という声は、多くの人が感じている違和感を端的に表している。毎朝会社へ行き、家族を支え、誰とも揉めずに仕事を続ける人は社会の大部分を占める。それでもSNSで数百万回見られる主人公にはなりにくい。

理由は「真面目だからつまらない」という話ではない。ネットでは一瞬で興味を持ってもらう必要がある。「普通の会社員が今日も働いた」より、「元不良が年商○億円」「借金から人生逆転」「人気キャバ嬢同士が大激突」の方が、その先を想像させる。私たちはタイムラインを流しながら、わずか数秒で「続きを見るか」を決めている。その競争では、説明しなくても感情が動く肩書きや過去が強い。

 

スポットライトを当てているのは、結局誰なのか

ここまで考えると、ガーシーの「スポットライトを再考する時」という言葉の見え方も変わってくる。番組側がキャバ嬢やホスト、元不良を起用するのは確かだ。しかし、動画を100万回、300万回と再生しているのは視聴者である。切り抜きを開き、Xで名前を検索し、炎上の続きを確認する。その一つひとつが「この人をもっと見たい」という数字になる。

だから「なぜ夜職や不良ばかりが目立つのか」という問いを、作り手だけに向けても答えは出にくい。私たちは、順調な人生より逆転劇を見たい。穏やかな会話より対立が気になる。成功した人を見れば過去を知りたくなり、失敗すればその後も気になる。その好奇心を最も強く刺激する人物へ、次のスポットライトが向けられる。

 

「またこの人?」と思いながら、私たちはクリックする

ガーシーの投稿をきっかけに考えると、夜職や元不良がネットで目立つ理由は、肩書きの刺激だけでは説明できない。その人の過去を知り、成功を見届け、炎上すれば事情を調べ、その後まで追う。リアルな人生そのものが連続ドラマになり、視聴者はいつの間にか次の展開を待っている。

「なんでこんな人が有名になるんだ」と思いながら、その人の記事を開いてしまう。そのクリックまで含めて、いまのスターは作られている。ガーシーが投げかけた「誰にスポットライトを当てるのか」という問いは、画面の向こう側だけの話ではなさそうだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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