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日本自動ドア株式会社

https://www.jad.co.jp

〒165-0031 東京都中野区上鷺宮3-16-5

03-3970-2511

日本自動ドア、ベトナム進出の舞台裏 目指せ保守文化の定着とASEAN市場開拓への軌跡

ステークホルダーVOICE 社員・家族 経営インタビュー
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ベトナムの自動ドアの写真イメージ
現地のイメージをAIで再現した画像、以下同

バイクがひしめき合うホーチミンの街角。突然の激しいスコールに見舞われると、道路は瞬く間に川のように浸水する。こうした水害から店内を守るため、ベトナムの建物の入り口にはすべからく10センチから20センチほどの段差が設けられている。

その段差と重い手動ドアの前に、ベビーカーを押す母親や車いすの高齢者が立ち往生する。これが、経済成長に沸くベトナムの日常風景だ。

日本自動ドア株式会社は、2025年11月にベトナムに100%出資の現地法人JADIAS CO.,LTDを設立し、2026年8月からホーチミン市を中心に営業を開始した。

狙いは、単なる製品の販売ではないという。はたして、見据えているものとは?

JADIASのロゴ
JADIASという社名に込めた思い

自動ドアを阻む「20cmの段差」と「保守文化の不在」

 
ベトナムの自動ドアの不便さを表す写真イメージ

自動ドアは本来、車いすユーザーやベビーカーを押す人にとって手を使わずに通行できるバリアフリーの象徴である。しかし、ベトナムの街には前述した20cmの段差という物理的な壁が存在する。現地の代理店や競合メーカーは、この矛盾に気づかず、段差の上にそのまま自動ドアを設置して売り切ってしまうことが多い。これでは生活者のアクセシビリティは一向に改善されない。

ベトナムの自動ドアの不便さを表す写真イメージ

そこでJADIASは、自動ドア単体ではなく、段差を乗り越えるためのスロープやドアサッシなどの建具をセットで提案する戦略に打って出た。当面は日本から輸入した完成品を在庫し、周辺建具は柔軟に現地調達を行いながら、バリアフリーの必要性を理解するマンションやオフィスビル、病院といった大型施設にターゲットを絞って展開している。

さらに同社が直面したのが保守文化の不在だ。ASEAN市場では、壊れたら放置するか買い替えるのが一般的であり、定期点検にお金を払うという保守契約の概念が存在しない。 自動ドアは、定期点検を行うことで10年、15年と長く安全に稼働する。売り切りではなく、

サブスクリプション型とも言える保守モデルを導入することで、顧客には長期的な安全を、企業には安定した収益基盤をもたらす。

この日本の当たり前を根付かせるため、JADIASは日本から輸入した完成品を約20台分常時在庫し、自社エンジニアによる材工一体の施工・保守体制を現地で構築した。当初はホーチミン市内から半径100km圏内にドミナント出店し、確実な保守体制から固めていく方針だ。

異国の地でゼロから文化を創るという難題に、彼らはどう立ち向かっているのか。ここからは、現地で陣頭指揮を執る吉原二郎社長と、ベトナム担当の駒井氏の生の言葉をお届けする。

 

インタビュー:トップが現場に立つ覚悟と、異文化融合の最前線

――数あるASEAN諸国の中からベトナムを進出先に選び、現地法人を設立された背景には、どのような理由があったのでしょうか?

日本自動ドア、吉原二郎社長
日本自動ドア、吉原二郎社長(取材はZoomで行われた)

吉原社長: 前提として、ベトナムは夜でも女性が一人で歩けるほど『治安が良い』国です。建物の入り口でピストルを持ったガードマンが手荷物検査をするような国では、自動ドアは普及しません。この安全な環境がある上で、設立の理由は大きく3つあります。

1つ目は『採用拠点』としての役割です。日本の少子化に伴いエンジニアの確保は困難ですが、ベトナムは理工系人材が非常に豊富です。現地で採用し、自動ドアの技術指導はもちろん、将来的な日本での勤務を見据えて『日本語教育』や『運転免許の取得支援』まで手厚く行います。その採用と育成の受け皿としての目的がまずありました。

2つ目は『サプライチェーンの構築と資材調達』です。日本では部品を製造する町工場が次々と廃業しています。また、モーターに必要な『ジスプロシウム』というレアアースは中国が市場の大半を握っていますが、ベトナムにも資源は眠っています。既存ルートに依存しない代替調達網の構築が不可欠でした。

そして3つ目が『自動ドア市場の開拓』です。経済成長を続けるベトナムには十分なマーケットがあると確信しており、現地にしっかりと根を下ろしてバリアフリー文化を広めていきたいと考えています。

――欧州や台湾のメーカーが代理店販売に頼る中、なぜ100%出資の直営拠点を置き、吉原社長自らがベトナムで陣頭指揮を執っているのでしょうか?

吉原社長: 一番の理由は、経営トップが行かないと方針がブレてしまうからです。現地に権限を委ねすぎると、どうしても目の前の『売上の誘惑』に負けてしまいます。例えば、現地には日本のコンビニの半分くらいしかない狭い店舗がたくさんありますが、そこに無理やり自動ドアをつけても適切な保守ができません。それでも『売上になるから』と取り付けてしまうのが現場の心理です。

『目先の利益なんか出なくていい。今は赤字でも保守文化を根付かせるんだ』と即断し、非難の矛先をすべて引き受けられるのは経営トップしかいません。現地の保守意識は想像以上です。私が住んでいるマンションでも、建具が壊れて業者を呼ぶと、ボロボロの壁をマジックのようなもので黒く塗っただけで『直ったよ』とニコニコして帰っていく。それが現地のスタンダードなんです。

だからこそ、最初からブレずに文化を創り切るために、私が先陣を切る必要がありました。

――現地で自社エンジニアによる施工・保守を一貫して行うために、日本の高い品質や技術をどう継承していますか?

駒井さん
駒井氏

駒井氏:ベトナムでは、ガラスを基調とした納まりが多く、開口部にそのまま取り付けられる簡易な施工スタイルの自動ドアが主流となっています。 また、壊れても開きっぱなしで放置されているのが日常です。 私を含め、日本での『自動ドア施工技能士1級や2級』の資格を持つ人間が、現地のエンジニアを直接育成指導しています。

営業開始直後の今年9月26日に、早くも1号店となる自動ドアを設置しました。その際も『なぜここをこうするのか』『なぜミリ単位の調整が必要なのか』を、対話を通じて一つ一つ丁寧に説明しました。 既存の自動ドアは簡易的に設置されたのみで、安全センサー等の対策が不十分であり、歩行者の挟み込み事故が発生しやすい状態とお困りでした。

そこで日本品質の挟まれ防止対策を徹底し、顔認証システムが故障した場合に備え、緊急時に電源を切って手動で開けられる装置も追加で提案・設置しました。こうした二の矢、三の矢の安全対策に対し、お客様からは「不満もなく快適に動いている。やはり日本製品は素晴らしい」と大変喜んでいただけました。私たちがいない時でも彼ら自身で完璧な施工ができる体制を作ることが目標です。

――「JADIAS」の社名には日本とASEANの「一体化(Integrating)」というビジョンが込められています。現地のスタッフとはどのようにチームを作っていますか?

駒井氏: ベトナムの方々は、何よりも『家族』を大切にします。進出時、現地スタッフのカンボジア国境近くにある実家まで、日本からの出張メンバー全員で足を運びました。ご家族に「息子さんは信頼できる会社で働いています。安心してください」と直接ご挨拶をしたところ、大変感謝されました。こうした現地の文化に寄り添うことが、強いチームづくりに直結しています。

吉原社長:現地では、社員同士が自然に彼氏や彼女、家族の写真を見せ合い、『昨日はこんな遊園地に行ったんだよ』と楽しそうに語り合います。日本の企業で同じことをすればハラスメントだと言われかねない時代ですが、私はベトナムの人間らしいナチュラルな関係性の方が素晴らしいと感じています。私たちがベトナムに日本の技術を教える一方で、私たち日本人が失ってしまった『昭和の温かさ』や『人間臭い生き方』を彼らから教わっているんです。お互いの文化をリスペクトし、混ざり合いながら良い企業文化を創り上げていきたいですね。

――最後に、ベトナムでのエンジニア育成を通じた「人材の還流」について、今後のビジョンを教えてください。

吉原社長: 過去数年、日本国内で優秀なベトナム人材を採用・育成してきましたが、彼らが母国へ帰る際、せっかく育てた技術を活かす場所がないのは大きな損失でした。JADIASがあれば、彼らが母国へ帰っても、同じ自動ドアの仕事で安定した生計を立てられます。ゆくゆくは、ベトナムをASEAN展開の要となるハブ拠点に育てていきます。

将来、台湾やマレーシア、スリランカなどで大規模なプロジェクトを受注した際、ベトナムの拠点で育った優秀なエンジニアたちを応援派遣・部材供給するといった機動的なネットワークを描いています。日本とASEANが共に成長できるエコシステムを、ここベトナムから発信していきたいですね。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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