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インドネシアで「気候スマートエビ養殖」初収穫に成功 マングローブ再生と炭素吸収で持続可能性に道

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インドネシア中央スラウェシ州ドンガラ県ラロンビ村の気候スマートエビ養殖池
©︎ Photo by Konservasi Indonesia Eko Siswono Toyudho

インドネシア中部スラウェシ州の沿岸地域で、気候変動に配慮した新しい養殖手法「気候スマートエビ養殖(Climate Smart Shrimp:CSS)」が初の収穫を迎え、3日間で50トン超という予想を上回る成果を挙げた。エビ養殖とマングローブ再生を両立させるこの試みは、アジアで初の事例であり、持続可能なブルー・フード(海洋由来の食料)のモデル構築に向けた歴史的な一歩といえる。

 

エビ養殖とマングローブ再生の融合

気候スマートエビ養殖(CSS)の舞台となったのは、中央スラウェシ州ドンガラ県ラロンビ村に広がる総面積10ヘクタールの施設。うち2.5ヘクタールが養殖池として使用され、マングローブ林再生と排水処理には3.5ヘクタールが割り当てられている。

このCSSは、環境NGO「コンサバシ・インドネシア(Konservasi Indonesia)」が主導。地元大学、国の研究機関、そしてスタートアップ企業「JALA」などとの協業体制で実施された。エビの生産性を高めるだけでなく、マングローブというブルーカーボン生態系の回復を通じて炭素吸収と水質浄化も実現している。

テクノロジーと自然の共創が支える生産性

インドネシア中央スラウェシ州ドンガラ県ラロンビ村の気候スマートエビ養殖池
インドネシア中央スラウェシ州ドンガラ県ラロンビ村の気候スマートエビ養殖池©︎ Photo by Konservasi Indonesia Eko Siswono Toyudho

JALAのCEOアリョ・ウィリヤワン氏は、「1ヘクタールあたり52トンの収穫は国内平均を大きく上回った」と語る。これは、同社のセンサーとリアルタイム監視システムを駆使した水質管理の成果であり、最適な環境下でエビを育てることで国際的な輸出基準を満たすサイズにも到達した。

このように、生産性と品質を両立しながら環境への負荷を大幅に軽減するこのアプローチは、沿岸地域の環境保全と経済的自立の双方に寄与するモデルケースとして注目を集めている。

 

マングローブの力、炭素と生態系の再生

ラロンビ村の再生マングローブ林は、年間最大7.4トン/ヘクタールの炭素吸収能力を持ち、全体では約3,700トンの炭素貯蔵が見込まれる。加えて、この地域のマングローブは魚類やカニ類の繁殖場でもあり、海洋生態系にとっても極めて重要な役割を果たしている。

国立研究イノベーション庁(BRIN)の研究者マリスカ・アストリッド氏は、「自然のバイオフィルターとしてのマングローブが、排水の浄化に著しい効果を示した」と指摘。従来の養殖排水と異なり、泡立ちやリン濃度の高い水が、CSSでは透明で安全な水質に改善されたという。

 

「ブルーエコノミー」の未来を切り拓く

今回の成果は単なる技術革新ではなく、気候変動、環境悪化、そして地域の経済格差といった多層的な課題への統合的解決策としての意義を持つ。地域の協同組合や農業団体も巻き込みながら、現地経済の底上げと生態系の保護を両立する持続可能なモデルが築かれつつある。

「このラロンビの取り組みは、インドネシア全土の沿岸地域に広げることができる再現可能なモデルです」とコンサバシ・インドネシアは強調する。実際、日本を含む国際的な投資家からの関心も高まっており、エビ養殖の未来像を塗り替えるイノベーションとして注目を集めている。

ブルー・フードの分野で、技術・自然・地域社会を結びつけた本プロジェクトの成功は、アジア全域に広がる水産業の持続可能性を示す灯台となる可能性を秘めている。

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ライター:

サステナブル情報を紹介するWEBメディアcokiの編集部です。主にニュースや解説記事などを担当するチームです。

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