
『妖怪ウォッチ』『レイトン教授』『イナズマイレブン』と、国民的人気シリーズを世に送り出してきたゲームメーカー、レベルファイブ。その新作発表会で披露された映像が、生成AIの使用をめぐって波紋を広げている。批判を受けて日野晃博氏が謝罪し、同社は17日、映像の修正と今後の方針を正式に発表した。
だが、ファンの反応はいまも賛否が分かれたままだ。作品への期待と、制作のあり方への不信。その狭間で揺れる声を追った。
発端は新作発表会「LEVEL5 VISION 2026 II 夢」 生成AI映像に国内外から批判
騒動の発端は、10日に配信されたオンライン新作発表会「LEVEL5 VISION 2026 II 夢」である。この場では『妖怪ウォッチ2 覇道』のティザーPVや『レイトン教授と蒸気の新世界』の発売日、『イナズマイレブン 烈火の革命』など、同社の看板タイトルが次々と披露され、大きな注目を集めた。
ところが配信直後から、その映像に別の角度から声が上がる。背景美術の不自然さ、キャラクターの顔つきの急な変化、動きの硬さなど、生成AI特有とされる痕跡を指摘する投稿がX上で相次いだのだ。とりわけ『妖怪ウォッチ2 覇道』の映像は、前日9日に公開された「Nintendo Direct」版と比べて主人公ケータの顔などの細部が異なる点も取り沙汰され、批判は国内にとどまらず海外へも広がっていった。
日野晃博社長が謝罪 「発表会を派手にしたかった」と釈明
事態を受け、同社代表取締役社長/CEOの日野晃博氏が動く。ゲーム情報サイトGame*Sparkなどによると、日野氏は12日、自身のXアカウントで発表会の映像に生成AIを使用したことを認め、経緯を説明した。
日野氏は、映像にAIを取り入れたのは「発表会を派手にしたいという思い」からで、最新のAIを使った実験を兼ねた処理を組み込んだものだと釈明。不快に感じた人がいたことを詫びた上で、シナリオやキャラクターデザイン、基礎設定といった作品の核となる部分はすべて人の手で作っており、発売されるゲームに安易なAI出力データが入ることはないと強調した。
もともと日野氏は、ゲーム開発における生成AIの活用を公言してきた経緯がある。それだけに今回の説明は、火消しになるどころか、かえって同社の姿勢そのものへ視線を向けさせる結果ともなった。
レベルファイブが公式に対応発表 「人的ミスがAIと誤解された」
そして17日、レベルファイブは企業サイトで「一部PVの修正と今後の生成AIに関する対応について」と題した文書を掲載した。今回の対応の中心となる公式発表である。
同社はまず、発表会で示した一部のPVについて、AIの使用による間違いや、そう見えてしまう人的ミスを含めて修正したバージョンを、東京ゲームショウ(TGS)開始のタイミングで公開し直すとした。
とりわけ踏み込んだのが『妖怪ウォッチ2 覇道』のイメージイラストに関する説明だ。AIの間違いと指摘された箇所には、実際には意図的な省略や人の作業上のミスが一定数含まれていたという。不自然と指摘された電線は、実物を参考に背景として簡略化した自社デザイナーの手描きであり、より自然に見える形へ修正したと説明。自動販売機や雨樋の描写、自転車のブレーキレバーの欠落なども、AIではなくディテールの省略によるヒューマンエラーだったとした。
また、ケータの顔がニンテンドーダイレクト版と異なる点についても、AIによる変更ではなく、キャラクターモデルの品質を理由とした修正が締め切りに間に合わなかった結果だと釈明。『レイトン教授と蒸気の新世界』ではAIを使用していないことも明記した。その上で同社は、今後AIの使用を効率化の範囲にとどめ、ユーザーに直接届ける映像には直接の使用を避けると約束し、制作作業への不信を招いたことを重ねて謝罪した。
「直接使用は避ける」約束にファン賛否 責任の所在を問う声も
ゼロ回答ではなく、具体的な説明と修正方針を示した今回の対応。しかしファンの受け止めは一様ではない。
対応そのものを評価する声がある一方で、あるユーザーは「本当に対応してくれる時点でありがたいんだけど、具体的にどこでAIを使用してたかを教えて欲しかった」と、説明の踏み込み不足を惜しんだ。別のユーザーは「ゲーム内で本当に使ってないってどうやって証明するんだろう?」と、言葉だけの約束に懐疑的なまなざしを向ける。
より根深いのは、責任の所在を問う声だ。あるユーザーは、生成AIを使わないと約束するのはいいとしても、現場の作業者に責任を押し付けてはならないとした上で、批判の根源は生成AIの根本的な問題と向き合わないまま推進を続ける日野氏の姿勢にあると指摘した。
一方で、過熱そのものを冷静に見る向きもある。「AIを使って楽をするはずが、少しの違和感も許されないほどのクオリティが求められるようになってしまったのは残念だな」という声や、そもそもファンの不満はAIではなくゲーム開発の遅延に向けられているのではないかとする指摘も見られた。とりわけ、勝手にAIと判定されてしまったイラストレーターの立場を気遣う投稿には、少なからぬ共感が集まっている。
生成AIと制作現場 揺らいだ信頼をどう取り戻すか
今回の一件は、単なる一企業の炎上にとどまらない広がりを持つ。あるユーザーが、企業が実際にAIを活用した結果、ユーザーとの最も重要な接点であるプレゼンテーションで品質が過剰に低下した事例だと評したように、議論はAIそのものの是非を超えた段階へ移りつつある。
制作物の細部に宿る違和感は、いまや作り手の意図を離れ、AIか人かという疑いのまなざしで読み解かれる。手描きの背景さえAIと誤解される状況は、生成AIをめぐる不信がいかに深く社会に広がっているかを物語っている。
作品のクオリティと、それを生み出す過程への信頼は、本来分かちがたい両輪である。レベルファイブが掲げた「直接使用を避ける」という方針が、言葉どおりに守られていくのか。ファンとの信頼をどう再構築するのか。TGSで示されるという修正版とあわせ、同社の今後の姿勢が問われている。



