
アニメ「呪術廻戦」の5周年を記念し、焼肉チェーン「牛角」が全国で展開してきた人気コラボキャンペーン。その舞台裏で、ファンの信頼を根底から揺るがす不正が起きていた。店舗の従業員が、客に手渡すはずの特典を無断で開封し、封をし直して提供していたというのだ。
運営会社が16日に公表したこの事実はSNSを瞬く間に駆け巡り、コラボを心待ちにしていたファンから怒りと落胆の声が噴き出している。
牛角「呪術廻戦」コラボ特典を従業員が無断開封 私的な持ち出しも判明
牛角を運営する株式会社レインズインターナショナルは9月16日、公式Xアカウントにお詫び文を掲載した。それによると、「牛角×アニメ『呪術廻戦』5周年コラボキャンペーン」の特典であるオリジナルクリアカードのうちの数個が、店舗従業員によって開封され、再び封をされた状態で客に提供されていた。さらに、一部は従業員によって私的に持ち出されていたという。
同社は「ファンの皆様、権利者並びに関係者の皆様に、多大なるご迷惑とご不快な思いをお掛けいたしました」と謝罪。今後は全店舗で同種の事案の有無を調査するとともに、特典の保管や受け渡しに関する管理体制を見直し、従業員への教育を改めて徹底して再発防止に努めるとした。当該従業員については、社内規程に基づき厳正な処分をすでに実施したと説明している。
問題のコラボは、8月26日から9月30日まで全国の牛角全店で実施されているもの。対象のコラボメニューを注文すると缶バッジやクリアカードがランダムで配布される仕組みで、クリアカードは全8種。五条悟や七海建人、虎杖悠仁ら人気キャラクターが牛角の制服姿で描かれた限定デザインが、ファンの購買意欲を強くかき立てていた。
発端は「開封済みの痕跡」 缶バッジ・クリアカードに広がった不信
事態が表面化したきっかけは、SNS上の投稿だった。スポニチアネックスによると、コラボ開催中、利用客から特典に開封済みの痕跡があったとする投稿がX上でなされていたという。缶バッジの封が最初から開いているように見える、糊付けの部分が不自然だといった報告が、写真付きで共有されていった。
あるファンは、店舗に問い合わせた経緯をXで公表している。それによると、店舗側からは「一部従業員が数枚開封してしまった事実が判明した」「糊付け部分をみても明らかに一度開封したように見える特典が数枚混入している状況を確認した」と、メールで説明があったという。ランダム性が命であるはずのブラインド特典で、中身が事前に確認されていた可能性が示されたことになる。ファンの不信は、目当てのカードを引き当てる楽しみそのものへの疑念へと広がっていった。
「持ち出し分は全て返還、転売はない」 牛角側の説明と相談窓口
多くのファンが気にかけるのは、持ち出された特典の行方だろう。この点についてJ-CASTニュースの取材に対し、レインズインターナショナルの広報室は、持ち出された中身はすべて返還されており、転売の事実はないと説明した。開封された特典は現在、運営会社が保管しているという。
被害に心当たりのある客への対応も焦点だ。同社は心当たりのある客には個別に状況を確認したうえで対応するとし、お客様センターへの連絡を案内している。実際、公表に先立って個別に問い合わせたファンには、店舗責任者が未開封の特典を改めて用意し、直接の受け取りが難しければ郵送でも対応する、といった案内が届いていた。相談の際には当日のレシート番号を求められる場合もある。レシートを手元に残しておくことが、後の対応を円滑にするとみられる。
くら寿司・かっぱ寿司でも 相次ぐコラボ特典の不正と従業員の法的責任
見過ごせないのは、これが牛角だけの問題ではないという点だ。回転寿司チェーンのくら寿司は9月5日、人気キャラクター「ちいかわ」とのコラボキャンペーンを、従業員による不正行為が判明したとして翌6日から中止した。配布開始前のコラボグッズがフリマアプリに出品されていたことなどが問題視されていた。かっぱ寿司も、配布前のコラボグッズをフリマで購入しないよう注意喚起を出している。人気IPとのコラボが乱立するなか、特典をめぐる従業員の不正が、業界を横断する構図として浮かび上がっている。
法的な観点はどうか。弁護士ドットコムに寄せられた篠原修司氏の解説によると、会社が所有し、値段も付かず従業員が正規に購入することもできない景品を無断で抜き取れば、窃盗や業務上横領に問われうる。牛角のケースでは持ち出し分が返還され転売もなかったとされるが、無断で開封して封をし直し、客に渡した行為が特典の価値と客の信頼を損なった事実は変わらない。
初日欠品から購入制限、そして不正 人気コラボが突きつけた課題
牛角の呪術廻戦コラボは、当初から波乱含みだった。開始初日の8月26日には特典の欠品が相次ぎ、即日の転売も横行。第4期の制作が進むなかでの5周年という節目が需要を大きく押し上げた。牛角は8月28日、想定を上回る反響と注文を受け、翌29日から1会計につき各メニュー1点までとする購入上限を設けると発表していた。人気が過熱するほど、特典は希少な財へと化していく。
その熱狂の内側で、管理を任された従業員自身が一線を越えた。ファンは、作品にお金を落とすだけの存在ではない。作品を支え、次代へ語り継いでいく担い手である。その信頼を裏切れば、どれほど魅力的なコラボであっても、IPそのものの価値を静かに削り取っていく。透明性のある管理と、疑義が生じた際の誠実な説明。人気コラボが常態化した今こそ、その最も基本的な姿勢が問われている。



