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全東信破産1151億円の衝撃 最大債権者「近畿産業信用組合」は何者か、夜の街に走る未入金不安

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全東信倒産

「お客様、申し訳ありません。当店、ただいま『現金決済のみ』となっておりまして……」

そんなお詫びの言葉とともに、全国の歓楽街で決済端末が次々と電源を落とし、ただの箱へと変わった。

負債総額、1151億6400万円(ロイター報道)。2025年3月期末時点では約1259億円にも達するという超大型破産が7月6日、大阪地裁で決定した。倒れたのは、キャバクラや飲食店を中心に「売上の前倒し入金」で夜の街の心臓部を担ってきた決済代行会社「全東信」だ。

お客のカードからは引き落とされているのに、店の口座には1円も入らない。「夜の駆け込み寺」の突然の死は、地方の夜の街に“現金の蒸発”という最悪の悪夢をもたらしている。

問題は、単なる大型倒産にとどまらない。全東信のサービスを使っていた飲食店では、カード決済済みの売上金が入らない事態が起きている。食団連は、全東信の決済端末の利用停止、未入金額の集計、代替決済手段の確保を加盟事業者に呼びかけた。売上は客から支払われた。だが、店の口座には入らない。夜の街の小規模店にとって、それは帳簿上の損失ではなく、今週の家賃、酒屋への支払い、スタッフの日払いに直結する現金の消失である。

 

「夜の街の駆け込み寺」だった全東信

全東信の源流は、大阪ミナミの飲食業者による組合にさかのぼる。ITmedia NEWSは、同社のルーツを1987年設立の大阪南飲食事業協同組合とし、1999年に全東信飲食事業協同組合へ名称変更した後、全国に展開したと報じている。法人としての全東信は2006年設立だが、事業の核は、カード決済売上の早期資金化にあった。

キャバクラ、ホストクラブ、スナックなど、風営法の周辺にある業態では、カード会社の審査や入金サイクルが資金繰りの壁になりやすい。全東信はそこに入り込み、通常より早く売上金を立て替える仕組みを売りにした。ITmediaビジネスオンラインは、同社のサービスがキャバクラやホストクラブを含む飲食店に使われ、同社サイトでは「加盟店20万店舗突破」とうたっていたと伝えている。

だからこそ、破綻の衝撃は金融機関だけでなく、地方の歓楽街にも及ぶ。テレビ映像では、未入金約150万円を前に「売上金が入らないと夏が越せない」と訴える飲食店経営者の姿が映し出された。キャバクラ店であれば、影響はさらに生々しい。ボトル代、キャストの日払い、家賃、内装ローン、送迎費。カードで客は支払ったのに、店には入金されない。地方の小規模店にとって、数十万円、百数十万円の未入金でも資金繰りは詰まりかねない。

 

20年続いた疑いのある粉飾決算

倒産の裏側では、さらに深刻な問題が浮かび上がっている。東京商工リサーチによると、全東信は業績悪化を隠すため、多額の預金を架空計上していた疑いがある。粉飾は少なくとも20年前から続いていた可能性があるという。

手口は大胆だった。預金残高の水増しが約170億円、架空債権が約154億円、実質的に無価値な営業権の過大計上が約88億2000万円。さらに、加盟店に支払うべき未払立替精算金約217億円も未計上だったという。帳簿上は2026年3月期で純資産約24億8000万円のプラスだったが、これらを是正すれば、実質的には約605億円の債務超過だったとされる。

ここで問われるのは、粉飾した会社だけではない。これほどの歪みを、なぜ金融機関は見抜けなかったのかという点である。

 

最大債権者は近畿産業信用組合、約219億円

東京商工リサーチによると、全東信の金融債権者は63先、金融機関からの借入総額は約1130億円にのぼる。破産申立時点の負債総額は債権者115名に対し1151億6491万円。最大の債権者は近畿産業信用組合で、債権額は約219億円とされた。次いで東京スター銀行、東和銀行が各80億円、山口銀行が約74億円台で続く。

公開された債権者リストには、地方銀行、信用金庫、信用組合、リース会社、ノンバンクが並ぶ。近畿産業信用組合のほか、大阪厚生信用金庫、ハナ信用組合、北おおさか信用金庫、成協信用組合、第一勧業信用組合、三十三銀行、関西みらい銀行、バンカーズ・クラウドクレジット・ファンディングなども名を連ねる。東京商工リサーチは、これらの債権額は申立書記載額であり、担保や相殺の状況により変動する可能性があるとしている。

それでも、最大債権者がメガバンクではなく信用組合だったことは、金融関係者の関心を集めた。SNS上では「地銀ではなく信組が最大の貸し手だったのか」「審査は何を見ていたのか」といった声が相次いだ。問題の本質は、金融機関の規模ではない。売上債権、預金残高、加盟店への未払金という、資金繰りの根幹にかかわる項目をどこまで実査していたのかである。

 

近畿産業信用組合とは何者か

大阪市中央区に本店を置く近畿産業信用組合「きんさん」は、預金量1兆6079億円、貸出金1兆2047億円(2025年3月末時点)を誇る、日本一・全国有数の巨大信用組合である。その沿革は一筋縄ではいかない。1953年京都で「日本芸術家信用組合」として設立(芸能人や芸術家向けの信組だった)。2001年〜2006年になると、「信用組合大阪商銀」「京都商銀」「関西興銀」「長崎商銀」といった破綻した商銀などの事業を次々と譲り受け、急成長を遂げたという。

ネット上では「半島系」「韓国系」といったラベル貼りや噂が飛び交うが、感情的な批判は本質を見誤る。ただ、公的な事実として、2005年に近畿財務局が長崎商銀との合併に際して出した談話には、きんさん側が「『民族金融機関』として在日同胞商工人や地域社会に根ざした金融サービスを目指す」と説明した趣旨が記録されている。つまり、在日コリアン社会や旧商銀との歴史的接点は、公文上でも確認できる事実だ。

しかし、ここで問われるべきは、金融機関の出自や歴史ではない。 問題の本質は「なぜ、資金繰りの根幹である預金残高や、加盟店への200億超の未払金をちゃんと見抜けなかったのか」という、金融機関としての審査・モニタリング能力(目利き力)の甘さだ。

 

2024年の不正契約事件が崩壊の導火線に

信用不安の導火線に火がついたのは、2024年1月のことだった。全東信の従業員が、「反社会的勢力などが実質的に運営する飲食店(ぼったくり店など)を、審査を通すために他人名義で契約させた」という詐欺容疑で逮捕されたのだ。さらに組織的な関与も判明し、会社自体も組織犯罪処罰法違反の疑いで書類送検される事態に発展した。

ただでさえコロナ禍で取扱高が落ちていたところに、この闇深事件が炸裂。銀行や信用組合からの融資が完全にストップした。 全東信の「売上げ早期入金サービス」は、常に膨大な立替資金(現金)を必要とする自転車操業だ。金融機関からの蛇口が止まれば、あっという間に夜の街に流す現金も枯渇する。崩壊は必然だった。

 

「夏を越せない」夜の店主たち

「客のカードから落ちてるのに店にはゼロ。もう夏を越せません…」

筆者の知り合いの地方都市の歓楽街でキャバクラを営むオーナーに話を聞いた。悲痛な叫びを聞いていただこう。

「決済端末が、ある日突然、ただの箱になったんですよ……」 (北関東でキャバクラを営む40代オーナー・A氏)

「うちみたいな地方の店は、週末の売上がすべてなんです。それなのに週明け、端末の電源を入れてもうんともすんとも言わない。ニュースで『破産』って見て、目の前が真っ暗になりました。

今週払うはずの家賃、酒屋への請求、女の子たちへの日払い、送迎車のガソリン代、内装のローン……全部パーです。売上が消えたんじゃない、お客さんはちゃんとカードで何十万、何百万と払ってくれた。なのに、店には一円も入ってこない!

ニュースの『未入金150万で夏を越せない』って飲食店経営者を見ましたけど、キャバクラはもっとエグい。数百万円の未入金で、完全に資金繰りが即死します。知り合いの店長たちと頭を下げて現金をかき集めてますが……もう、胃薬が手放せません」

売上は客から支払われた。だが、店の口座には入らない。夜の街の小規模店にとって、これは帳簿上の数字の話ではない。「現金の消失」という、まさに首をくくるかどうかの死活問題なのだ。

 

問われるのは「誰が見抜けなかったか」だ

今、全国の歓楽街では混乱が続いている。 食団連は破産管財人への債権届出を案内しているが、「全額回収はまず無理」という前提で資金繰り対策を急ぐよう呼びかけている。日本政策金融公庫のセーフティネット貸付などの案内も出ているが、一部で期待された「ゼロ金利制度」の適用は対象外だと明示された。

銀行から融資を受けにくい地方のキャバクラやスナックにとって、全東信は資金繰りを支える“最後の命綱(水路)”だった。その水路が突然ふさがれ、今、多くの店が息を止められている。

キャッシュレス決済は、いまや日本社会のインフラだ。その裏で売上金を預かり、流す会社に、これほどの不正会計やデタラメな経営がはびこっていた。 「最大の貸し手だった近畿産業信用組合をはじめ、銀行・信組はなぜ貸し続けたのか? 監査は何を見ていたのか?」

金融機関が見抜けなかった20年分の粉飾のツケを、最後に背負わされるのが、今夜も笑顔を作って店を開ける地方の小規模店主であってよいはずがない。

 

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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