
役目を終えた建物を壊して捨てるのではなく、次の暮らしへつなぐ企業がある。長野県諏訪市のリビセンは、自治体の入札を経て学校などの床板を回収し、地域の記憶を未来へつなぐ新しい試みを始めている。
諏訪市の入札から始まった思い出の詰まった床板の回収
長野県諏訪市で、公共施設の解体にあわせた新しい資源循環の取り組みが動き出した。空き家や解体予定の建物から古材を回収しているリビセンが、市が実施する公共施設解体に伴う古材利活用事業の一般競争入札を経て、諏訪市立城北小学校の体育館と諏訪市武道館の床板を回収することになった。
対象となる城北小学校は、2023年に公開された映画のロケ地としても知られており、閉校してからも地域の方々や映画ファンに大切にされてきた場所だ。全国的に見ても老朽化や少子化による公共施設の解体は増えているが、これまでの解体工事では、どんなに思い出が詰まった床板であっても、その多くが産業廃棄物として処分されてしまうのが一般的であった。
今回の諏訪市の試みは、そうしたこれまでの当たり前に新しい風を吹き込むものだ。解体にかかるコストを抑えながら、資源を捨てずに循環させて脱炭素社会を目指すという、行政としても先進的なチャレンジとなっている。
廃棄物を宝物に変える行政と民間のチームワーク

リビセンが取り組む活動のユニークな点は、これまでコストをかけて捨てるしかなかった建築部材を、価値ある地域の資源としてもう一度社会に戻していくところにある。回収した床板はスタッフの手で一本ずつ丁寧に剥がされ、釘を抜いてきれいに掃除される。こうして手間ひまをかけてメンテナンスされた床板は、お店の内装に使われる建材や家具として生まれ変わり、再び誰かの暮らしを支える道具になっていく。
また、この回収作業の進め方にもリビセンらしさが詰まっている。現場で作業をするのは会社のスタッフだけでなく、活動に共感して全国から集まってくれるボランティアのサポーターたちだ。みんなで力を合わせて作業を進めることで、単にモノを回収するだけでなく、地域の思い出を共有しながら楽しく資源循環を体験できる温かいコミュニティが生まれている。
今後は、今回レスキューした床板を使ったオリジナルのプロダクトを制作し、諏訪市のふるさと納税の返礼品として届ける計画も進んでいる。行政と民間が手を取り合い、みんなの思い出が詰まった場所を新しい価値へと変えていく仕組みは、これからの時代の新しい解体のモデルとして全国からも注目されている。
捨てるを前提としない文化を育てるリビセンの想い
こうした取り組みの根底には、捨てるを前提としない文化をつくりたいというリビセンの強い想いがある。同社は長野県諏訪市を拠点に、地域資源のリユースカンパニーとして年間700件以上の回収を行っており、2026年現在の累計実績は4500件を超えた。社会や環境に配慮した企業に与えられる国際認証であるB Corpを取得していることも、その誠実な姿勢の証明と言える。
入学式や卒業式など、たくさんの記憶が刻まれた学校の床板には、住民の方々の特別な想いが宿っている。リビセンは、建物の解体を単なる終わりや破壊として捉えるのではなく、新しい価値が生まれるスタートラインだと考えている。歴史や思い出を大切にしながら、形を変えて次の世代へとつないでいく実直な哲学が、日々の活動を支えている。
目の前にあるものの価値を見つめ直すこれからのビジネス
この取り組みから私たちが学べるのは、これまでコストやゴミだと思われていたものを、アイデアと視点の切り替えによって新しい価値ある資源へと生まれ変わらせる着眼点だ。建物の解体ゴミは、企業にとっても環境にとっても頭の痛い課題であった。しかし、適切な技術と共感してくれる仲間の力を掛け合わせることで、それはたくさんの人に愛される商品へと姿を変える。
これからの時代、ただ利益を追い求めるだけでなく、社会の課題を解決しながら進むビジネスがより一層大切になっていく。自治体と連携しながら新しい試みに挑戦し、環境への優しさと経済の循環をどちらも叶えているリビセンの歩みは、これからの持続可能なビジネスのあり方に大切なヒントを教えてくれている。



