
2026年10月16日開幕のミュージカル「鹿楓堂よついろ日和」で、角崎英介役の松永一哉が降板し、中谷優心に交代した。
制作のリンクスは10月3日、本人の申し出を受け出演を見合わせたと短い告知を出した。
翌4日、松永は7枚の文書で、ファン対応や制作過程のやり取りを降板理由として公表した。
公演直前の降板と代役発表
原作は清水ユウの漫画「鹿楓堂よついろ日和」。
お茶、ラテアート、スイーツ、料理を担う4人が営む甘味処を舞台にした作品で、2018年にアニメ化、2022年にドラマ化され、今回が初のミュージカル化となる。
脚本は元吉庸泰、作曲・音楽監督は西寿菜、演出は原田優一。
企画・製作・主催はリンクスで、公演期間は10月16日から25日、全13ステージの予定だった。
キャスト発表では、スイ役に二葉要、ときたか役に平野良、つばき役に内藤大希、ぐれ役に宇野結也、八京役に二葉勇、角崎役に松永一哉、野中さんらに畠中洋が名を連ねていた。
リンクスの告知は、降板の申し出を受けて協議した結果として出演見合わせを伝え、松永の今後を祈念する一文を添えた。
角崎役は中谷優心に交代し、チケットの払い戻し方法は公演サイトと告知のコメント欄で案内するとした。
発表時点では、なぜ本人が出演を見合わせる判断に至ったのかは示されていない。
松永一哉とは
松永一哉は1988年6月30日生まれ、茨城県阿見町出身の俳優・アーティストで、愛称はマツカズ。
つくばのアクターズスタジオ時代に三浦春馬、鈴木和也とユニット「Brash Brats」として活動し、2003年から2012年までアミューズに所属した。
歌、ダンス、アクロバット、アクションを軸に舞台へ進み、劇団四季「アラジン」には通算約150公演出演したと本人が紹介している。
東宝ミュージカルなどでも外部契約の形で舞台に立ち、Asia’s Got Talentのファイナリスト経験やシルク・ドゥ・ソレイユのキャスト登録もプロフィールに記している。
直近では、2026年夏に上演されたミュージカル「愛の不時着」に出演し、8月上旬に全公演を終えた。
本人の報告では、1幕7役、2幕9役の計16役を掛け持ちし、東京公演中に左足底の骨挫傷で一部休演したあと、大阪初日からは全シーンに復帰したとしている。
2022年以降は自身で作詞・作曲も手がけ、シングルやフルアルバムをリリース。
株式会社Juin Trente Amiの代表でもある。
本人が公表した降板理由
松永は10月4日、自身の記録と手元の資料を照合したとして経緯を公開した。
本人の説明では、最終的なきっかけはファンへの対応だった。
ファンクラブ向けチケットの一部がクリップで強く留められ、イラストに圧痕や擦れがあった。
公式アカウントでの謝罪を求めたところ、主催の専任事項でありどの公演でも同様だとして、説明しない方針が示されたという。
この対応で、出演を続けるために張り詰めていたものが切れたと感じたと記している。
文書には、これ以前のやり取りも並ぶ。
2026年7月3日から22日にかけ、降板を示唆する発言が複数回あったとし、券売数を理由に発言権がないという趣旨、名前を漫画の帯から外すという趣旨の言葉があったと記録した。
自身は降板を希望していない中のやり取りだったと述べ、マネージャーが強い精神的負担を受け、約1カ月通常業務が難しくなったとも書いている。
稽古では、約束されていた出演契約書が開始前に示されなかったこと、歌唱指導の予定が自身だけ組まれなかったこと、役のウィッグが用意されないまま撮影が終わったことも挙げた。
別件として、2025年12月14日に同じプロデューサーが関わったクリスマスコンサートの本番中、右足を骨折したとも記した。
治療費は負担されたが、労災や保険を尋ねると、怪我や事故は想定していなかったので入っていないと説明されたという。
約2カ月仕事に支障が出たとし、原因となった共演者には知らせたが再発防止には至らなかったと結んでいる。
いずれも松永側の記録であり、現時点では相手方の確認を経た事実ではない。
制作側の対応と未回答の点
リンクスはフリーランスの俳優向けエージェントで、2020年9月に坂紀史が立ち上げた。
マネジメント事務所ではなく、月額料金でプロフィール掲載や仕事のサポートをする仕組みだと説明している。
坂はぴあを経て株式会社ショウビズを起業し、サンライズプロモーション東京でも演劇プロデューサーとして活動してきた。
松永は2025年2月にリンクスとエージェント契約を結んだと発表されており、2024年の投稿でもクリスマスコンサートの打ち合わせ相手をプロデューサーの坂さんと呼んでいる。
制作側が現時点で公にしているのは、降板の申し出を受けて協議した結果として出演を見合わせたこと、中谷への交代、払い戻し、そしてファンクラブチケットの一部破損だ。
チケットについては、仕分け時点では破損がなく、引き渡しまでの過程で生じたとして不備を認め、希望者には手書きのチケットと交換すると案内している。
一方、7月3日に降板が示唆された発端、券売や名前に関する発言の有無、契約書や稽古スケジュール、骨折時の保険説明については、個別の反論は現在までに確認できない。
松永が所属契約を結んでいた時期の発言が、プロデューサーとしてなのか代理人としてなのかも、外部からは切り分けにくい。
ファンと関係者の反応
反応は一様ではない。
公演を楽しみにしていた人からは、原作が好きなだけに俳優の交代とトラブルが悲しい、という声が出た。
声明を読んだ人の間では、内容が想像以上だった、制作側の対応を問題だと思う、という投稿が目立つ。
松永に感謝し、事実の確認と再発防止をリンクスに求める書き込みもある。
同時に、一方の文書だけで判断するのは早いという慎重論もある。
ミュージカルの脚本・演出を手がける川尻恵太は、内容は相当なものだと認めつつ、エージェント側の意見が出ていないので何とも言えない、知り合いが多く出ているので心配だ、と投稿した。
別の観客は、7月3日に降板を示唆された理由が分かるまで一方を責めるべきではない、と指摘している。
チケットを持つ人は、公式案内に沿って払い戻しを選べる。
開幕まで残りわずかとなり、観客が知りたいのは応援の言葉より、どの点が事実で、どの点が争いの残る主張なのかだ。



