
それでも9月、元ライフプランナーの秋山涼容疑者(33)が副業詐欺グループの幹部として逮捕された。
同じグループでは先に阿部悟容疑者(37)と福島守容疑者(31)が逮捕されていた。
信頼のスーツの下に隠されたもう一つの顔
ライフプランナーは顧客の家計、家族構成、相続まで把握する立場を与えられていた。
その近さが1991年から2025年まで、架空の投資話や「社員しか買えない商品」「高金利の預金がある」といった説明で金銭を受け取る温床になった。
1月16日の公表では社員・元社員107人が顧客503人から約31億4000万円を不適切に受領し、うち約23億円が未返金とされた。間原寛社長は引責辞任した。
その後補償委員会に700件超の相談が集まり、7月24日にはさらに125人・7億9000万円が判明し、ジブラルタ生命分を含め総額は約39億円規模になった。
会社は補償費用として約55億円の特別損失を計上した。
秋山涼容疑者(33)は表では保険の専門家として顧客と相対し、裏では阿部悟容疑者(37)らが率いるグループの幹部だった。
スーツを着た人間を信じた人が、社内ルートでも社外ルートでも同じように金を渡した。
報道で社名が繰り返し出ても、「自分の担当者だけは違う」と思う心理が残る。
「英雄」が「かけ子」に変わる瞬間
フルコミッションに近い報酬体系は、数字を出せば英雄、出せなければ生活が苦しくなる構造だった。
電話一本で相手の判断を動かす技術、短期間で信頼を作る技術は保険営業の延長線上にあった。
過去には同社出身の菊池啓太郎容疑者(当時30)が特殊詐欺のかけ子リーダーになり、約450人から約7億円を詐取したとして逮捕された事例も報じられている。
秋山涼容疑者(33)はその技術を社外に持ち出し、阿部悟容疑者(37)のグループに接続した。
逮捕容疑は、去年、仲間と共謀して副業サポート業者を装い、20代女性から保証金名目で50万円相当の暗号資産をだまし取った疑い。
警視庁は認否を明らかにしていない。
福島守容疑者(31)は指示役として資金管理を担っていたとされ、かけ子も十数人逮捕されている。
警視庁は2024年6月以降、全国1000人超から15億円超を詐取したとみて捜査している。
優秀だった人間ほど、成果至上の空気の中で境界が曖昧になりやすい。
報道で古い手口が知られても、保証金名目の暗号資産という新しい形だと警戒が緩む。
社内ルートと社外ルート、並行して進んだ二つの搾取
社内ルートは顧客を対象に静かに続いていた。
社外ルートは一般人を対象にした副業詐欺で、被害が急拡大したと捜査されている。
秋山涼容疑者(33)が在職中に同僚を勧誘した点が、個人の逸脱では済まないことを示している。
金融庁は1月末から同社に立ち入り検査を入れ、4月には親会社プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンにも検査を拡大した。
2月9日から新規営業を自粛し、期間は当初90日から11月5日まで延長された。
その自粛期間中にも多摩支社の営業社員による金銭受領疑いが発覚し、当該社員は既に亡くなっていた。
9月14日には元社員が退職時に1570人分の顧客情報を持ち出して紛失し、拾得者からの連絡で発覚したと公式発表された。
社内の膿と社外の組織が並行して動いていた構図はすぐには見えなかった。
調査が入った夜、消えたライフプランナー
調査が本格化した後に命を絶った社員が複数報じられている。
自粛期間中の受領疑いの当事者も死亡していた。
週刊誌が入手した2025年の内部懲戒記録には、契約者との金銭貸借、認められていない投資商品への関与、暴行での逮捕が含まれていたとされる。
会社は第三者委員会で補償を進め、営業社員に月35万円程度の最低報酬を設け、支社長や営業所長の歩合制廃止を打ち出した。
しかし現場からは「自粛は口だけ」「勝手に営業している」との声も漏れた。
円金利上昇で超長期国債に540億円の減損処理を実施し、国内債の含み損は6月末時点で約1兆円に達した。
秋山涼容疑者(33)の逮捕は、社内の問題が外のトクリュウ型組織とつながっていたことを可視化した。
関係者の沈黙と死が事実の層を厚くしている。
膿はまだ出尽くしていない
阿部悟容疑者(37)、福島守容疑者(31)、秋山涼容疑者(33)の3人が逮捕されても、グループの全容は捜査中だ。
金融庁の行政処分はこれから出る。
報酬制度を変えても、個人に任された関係構築と「数字さえ出せば」の空気が残れば、同じことが別の形で起きる。
これだけ情報が出ても騙される人がいるのは、人が「今回の話は特別だ」「この人は違う」と思いたがるからだ。
社名が知れ渡っても、担当者の顔と声が残っている限り、警戒は簡単には勝たない。
膿も、まだ出尽くしていない。



