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小野建設株式会社

https://www.ono-ken.co.jp/

〒411-0801 静岡県三島市谷田60番地の3

TEL 055-971-2020(代) TEL 0120-20-9870(フリーダイヤル)

「排出する責任」から「吸収する責任」へ。小野建設が守る94ヘクタールの森

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
ステークホルダーVOICE 地球環境
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小野建設 100haの森林
約100haの森林(画像提供:小野建設株式会社)

建設業は、道路や橋をつくり、暮らしの土台を支える。その一方で、重機を動かし資材を運ぶ過程で、多くのCO₂を排出する産業でもある。静岡県三島市の小野建設株式会社は、この「排出する側」という立場から一歩踏み込んだ。愛鷹山に広がる約94ヘクタールの森林を自ら維持・管理し、CO₂を吸収する側の役割まで担おうとしているのだ。

排出する責任と、吸収する責任。100年を超える歴史を持つ建設会社が、その両立に挑んでいる。

 

100年企業が、94ヘクタールの森林を守る

小野建設株式会社は、静岡県三島市に本社を置く総合建設会社である。1920年の創業から100年を超える歴史を持ち、道路や橋、学校や住宅といった建築・土木工事を手がけてきた。従業員は90名。「誠実」を掲げ、地域に根ざして事業を営んできた建設会社だ。同社を率いるのは、代表取締役社長の小野大和氏である。

その同社が、本業と並行して力を入れているのが、森林の維持・管理である。管理しているのは、静岡県東部の愛鷹山に保有する約94ヘクタールの森林。東京ドームおよそ27個分にあたる広さだ。同社はこの森林を、継続的に維持・管理している。

小野建設 2015年当時の森林

ここで同社が重視しているのは、森林を「所有する」だけでなく、「管理し続ける」という点だ。森林は、木を植えれば健全な状態が保たれるというものではない。樹木が過密になれば十分な日光が届かず、生育もCO₂の吸収能力も落ちていく。だからこそ、継続的な手入れが欠かせない。同社は森林の状態を確認しながら、林道の整備や定期的な間伐、巡視といった維持管理を続けている。

建設会社が、なぜこれだけの森林を抱え、管理し続けるのか。その背景には、本業で長年向き合ってきた現場の経験と、一つの選択があった。

 

なぜ「開発」せず、「守る」選択をしたのか

同社は長年、治山工事や林業土木を通じて、森林や山間部の整備に携わってきた。その現場で強く感じてきたのが、工事は実施されても、その後の維持管理まで続いている森林は決して多くない、という現実だったという。

背景には、林業を取り巻く構造的な事情がある。林業従事者の減少や木材価格の低迷により、木を伐採して搬出しても採算が合わない。その結果、森林の所有者だけで適切な管理を続けることが難しくなり、間伐が行われないまま荒廃する森林が、全国的な課題となっている。同社は、こうした現場を数多く見てきた。そして、森林を守る技術を持つ建設会社だからこそ、自ら行動すべきではないか、と考えるようになったという。

そうしたなかで、一つの話が持ち込まれた。ゴルフ場の開発用地として所有していた愛鷹山の森林を、譲り受けてほしいというものだった。

森林を開発すれば、短期的な利益を得ることもできる。しかし同社は、地域の自然環境や景観、水源、そして将来世代へ残すべき資産を考えたとき、「開発する」のではなく「守り続ける」という選択をした。目先の利益よりも、森林を維持・管理し続けることを選んだのである。

森林を維持・管理することは、建設会社として自然環境に対する責任を果たすことでもある。同社は、この考えを取り組みの原点に置いている。

 

本業の技術を、森林保全へ

同社の森林保全を支えているのは、本業で培った技術である。治山工事や林業土木で積み重ねてきた経験を、自社が保有する森林の維持管理へと展開している。森林内の林道整備や定期的な間伐、巡視といった作業は、いずれも本業の延長線上にある。過密になった森林を間伐して日光を届け、樹木の生育とCO₂の吸収能力を保つ。健全な森林環境を維持するための地道な作業を、継続して積み重ねている。

その技術力は、第三者からも評価されている。同社が施工した「小山地区(角取山1外)直轄治山工事」は、林野庁が主催する令和6年度の治山・林道コンクールで、治山工事部門の農林水産大臣賞を受賞した。この工事は、令和5年度に完成した全国454件の治山工事のなかから選ばれたものだ。

小野建設 農林水産大臣賞

受賞した工事は、静岡県の駿東郡小山町北郷地内で、林野庁関東森林管理局静岡森林管理署の発注により行われた。土砂の流れをせき止める治山ダム5基や、水の通り道を整える流路工、丸太で斜面を支える丸太法枠工など、山地の崩壊や土砂の流出を防ぐための工法を、二つの工区にわたって複数組み合わせて施工した。

施工にあたっては、ICT建機のマシンガイダンスを用いた掘削や、点群と3次元設計データを組み合わせた完成予想図の活用などにより、計画的な工程管理と施工管理が行われ、作業の効率化が図られた。加えて、現場事務所には環境に配慮して太陽光発電と蓄電池を設置して電力を確保し、静岡県産材の加工丸太を外壁に用いて木材利用にも取り組んだ。さらに、インターンシップの学生を受け入れ、治山事業への理解を広げ、人材の確保にもつなげている。工事の品質だけでなく、環境への配慮や地域社会への貢献まで含めて評価された受賞だった。

治山工事は、山地の崩壊や土砂の流出を防ぎ、森林を守るための工事である。その分野で培った技術が、自社保有林の維持管理にも生かされている。同社は、こうした本業の技術を公共工事だけにとどめず、森林保全へと広げることで、本業そのものを社会課題の解決につなげたいとしている。環境保全を新たな事業として切り離すのではなく、本業を通じて環境価値を生み出す。そこに、この取り組みの特徴がある。

 

排出と吸収、両面からの環境責任

建設業は、社会インフラを支える一方で、重機の稼働や資材の運搬など、多くの工程でCO₂を排出する産業でもある。同社は、この事実から目をそらさない。省エネルギー化などによる排出削減に取り組むだけでなく、自ら森林を維持・管理してCO₂の吸収源を守ることで、「排出する側」と「吸収する側」の両面から環境責任を果たすことを目指している。

同社の試算によれば、保有する森林は年間で約376トンのCO₂を吸収している。これは、ガソリン車およそ752台分の年間走行によるCO₂排出量に相当し、自社の工事活動による年間のCO₂排出量とほぼ同等の規模だという。排出する分を、自ら管理する森林で吸収する。数字の上では、その均衡を意識した取り組みになっている。

ここで同社が強調するのは、カーボンクレジットの購入によって排出量を相殺するのではない、という点だ。クレジットを買って埋め合わせる方法もあるなかで、同社は、自らの技術で森林を健全な状態に保ち続けることこそが、地域に根ざした建設会社としての責任の果たし方だと考えている。「排出する側」である建設会社が、「吸収する側」の責任も担う。同社は、この考え方を自社のサステナビリティ経営の特徴として掲げている。

もっとも、約94ヘクタールの森林による吸収は、あくまで自社の排出に見合う規模のものであり、建設業全体の脱炭素を左右するようなものではない。それでも、排出する産業が自ら吸収源を守るという姿勢は、環境への向き合い方の一つのかたちを示している。

小野建設 整備された林道
 

建設会社の新たな役割を、社会へ

同社が森林保全を通じて示そうとしているのは、建設会社の役割そのものの捉え直しである。

森林は、CO₂を吸収するだけの存在ではない。水を育み、土砂の流出を抑え、生態系を守り、災害のリスクを低減するなど、地域の暮らしを支える多くの役割を担っている。同社は、森林を未来へ引き継ぐことは、地域の未来を守ることでもあると考えている。近年、豪雨災害の激甚化や森林放置による山地の荒廃が社会課題となるなかで、健全な森林を保つことの意味は、環境の面にとどまらない。

建設会社には、道路や橋、建物といったインフラを整備する役割がある。しかし同社は、これからの時代には、それに加えて地域の自然環境を守り、次の世代へつないでいく役割も求められると考えている。インフラを造るだけでなく、自然環境も守る存在へ。森林保全を通じて「建設会社だからこそできる環境貢献」のあり方を発信し、本業の技術を生かして社会課題の解決に取り組む企業が増えるきっかけをつくることも、同社は見据えている。

森林の維持・管理は、一度整備すれば終わるものではない。健全な状態を保つには、長期にわたる継続的な管理が欠かせない。同社は今後も、愛鷹山の約94ヘクタールを維持・管理しながら、CO₂の吸収源としての機能や、水源の保全、生物多様性の維持といった、森林が持つ多面的な価値を次の世代へ引き継いでいきたいとしている。

排出する側の建設会社が、吸収する側の責任も担う。100年を超えて地域とともに歩んできた建設会社の挑戦は、その両立の先に、企業と自然の新しい関係を描こうとしている。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

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