
ガソリンスタンドは、客が来るのを待つ商売だ。だが和歌山県上富田町のナカト産業は、逆をいく。タンクローリーに燃料を積み、必要とする現場へ自ら届けにいく。給油所を持たない、配送に特化した燃料会社だ。中井政斗氏は、この仕組みを「動くガソリンスタンド」と呼ぶ。運送会社のトラック、建設現場の重機、農家のボイラー。地方の産業が動くために欠かせない燃料を、止めることなく送り届ける。合理的で、機動力のあるビジネスモデル。
だがその根には、もう一つの顔がある。災害が起き、当たり前にあるはずの燃料が途絶えたとき、この地域を支える最後の砦になる。中井氏が語ったのは、燃料を届け続けることの、そのもう一つの意味だった。
「動くガソリンスタンド」という発想
ナカト産業の事業を一言で言い表すなら、これがいちばん伝わる。
中井 政斗氏(以下、中井氏)
「タンクローリーで石油を運ぶ仕事は、よく目にはするけれど、イメージしにくいものだと思うんです。だから私は、分かりやすく『動くガソリンスタンド』とお伝えしています。普通のガソリンスタンドは、お客様に来ていただくのを待つ商売です。でも私たちは、その逆。配達を専門にやっているんです」

一般的なガソリンスタンドは、店舗で客の来店を待つ。給油に来た車へ燃料を入れ、代金を受け取る。ナカト産業は、その関係を裏返した。タンクローリーに燃料を積み、必要としている現場へ、自ら出向いて給油する。店舗を構えず、配送に特化する。それが、この会社のかたちだ。
届ける相手は幅広い。物流会社のトラック、建設現場の重機、ホテルや工場、そして農業や漁業の現場。個人宅へ届けることもある。地方の産業が日々動くために欠かせない燃料を、その使われる場所まで運んでいく。
なお、同社が扱うのはガソリンではない。配送するのは、軽油、重油、灯油といった石油製品だ。同氏によれば、その内訳はおよそ7割が軽油、2割が重油、1割が灯油だという。重油の比率がやや高いのは、農業が盛んな土地柄ゆえだ。ハウス栽培の温度を管理するボイラーに、重油が使われる。雪の多い地域なら灯油の需要が上がるように、その土地の産業や気候によって、届ける燃料の内訳は変わってくる。
この配送特化というかたちは、もともと先代である中井氏の父が築いたものだ。創業は1998年。当時、和歌山県の紀南地方には、タンクローリーで燃料を届ける事業者がいなかった。燃料が欲しければ、誰もが給油所まで足を運ぶしかない。都市部では当たり前にあった配送のスタイルが、この地方にはなかった。大型車両が給油所に入れば時間がかかり、ほかの客の妨げにもなる。建設現場では、作業員がドラム缶から手作業で給油している。そうした地方特有の不便に目をつけ、父は紀南で初めての配達専門業として、この事業を起こした。中井氏は、その二代目にあたる。
先代が見つけた地方の空白は、やがて確かな需要となって広がっていく。中井氏は、この「動くガソリンスタンド」を受け継ぎ、さらに前へ進めていくことになる。
現場が、本業に集中できるように
配送に特化することで、ナカト産業は何を実現しているのか。中井氏が挙げるのは、まず「機動力」だ。
一般的なガソリンスタンドも、まったく配送をしないわけではない。店舗を構えながら、タンクローリーで届ける事業を併せて行うところもある。ただ、そこには決定的な差があると中井氏は言う。店舗運営と並行してでは、依頼を受けてもすぐには動けない場合も少なくない。手が空いた時間に配送する、という形にならざるをえないからだ。対してナカト産業は、配送だけを専門とし、そのための人員を専属で置いている。だからいつでも動ける。和歌山県全域をカバーし、必要とされればすぐに現場へ向かう。この即応性が、店舗を持つ同業との明確な違いになっている。
その機動力が生きる場面を、中井氏は三つに分けて説明する。ひとつは、あらかじめ計画して届ける定期配送。ひとつは、顧客からの依頼を受けて動く配送。そしてもうひとつが、緊急の配送だ。とりわけ現場で頼りにされるのが、この緊急対応だという。
中井氏
「現場では、うっかり燃料が切れてしまうことって、どうしてもあるんです。重機だと、次の日に動かそうとしたら入っていなかった、仕事にならないからすぐ来てくれないか、と。何人かで共有して使っている車両だと、なおさら起きやすい。誰が入れるという話でもないので。そういうときに、すぐ駆けつけられるかどうかなんです」
こうした不意の燃料切れは、現場の仕事を止めてしまう。重機が動かなければ工事は進まず、トラックが給油できなければ荷は運べない。そこへ、電話一本で駆けつけて給油する。ナカト産業の機動力は、現場が抱える小さな、しかし切実な穴を、そのつど埋めている。
この「届ける」という仕組みは、いま多くの現場が直面する人手不足にも効いてくる。とくに運送業では、労働時間の管理が厳しくなり、ドライバーの負担をいかに減らすかが課題になっている。そんななか、従業員がわざわざトラックを運転して給油所まで行き、列に並んで給油して戻ってくる。その時間が、地味に効いてくるのだ。

中井氏
「削れるところは、とことん削りたい。それが会社の本音だと思うんです。従業員がトラックで燃料を入れに行く、その時間や手間を、私たちが肩代わりできる。運送会社さんにとっては、そこが大きいんです」
給油のための移動が消えれば、その分、本来の仕事に時間を割ける。ドライバーは運ぶことに、重機のオペレーターは現場の作業に集中できる。ナカト産業が届けているのは、燃料そのものであると同時に、現場が本業に専念するための時間でもある。
さらに、コストの面でも利点があるという。店舗を構えるガソリンスタンドが配送を行う場合、製品代に加えて運送料を受け取ることが多い。一方、配送を専門とするナカト産業は、運賃を別立てで取らず、届けた製品の代金だけを受け取る。配送に徹しているからこそ、こうした価格の組み立てができる。手間を肩代わりしながら、コストはむしろ抑えられる。この両立が、顧客に選ばれる理由になっている。
消えていく、地方の燃料インフラ
配送特化という強みで顧客を広げる一方、中井氏が見据えているのは、和歌山の燃料業界そのものが痩せ細っていく現実だ。この地方では、燃料を扱う事業者が、次々と姿を消している。
理由のひとつは、激しい価格競争にある。和歌山県は、もともと燃料の販売価格が安い地域だという。仕入れが安いわけではない。売る側が競い合い、価格を下げてきた結果だ。加えて、車両の燃費は年々向上し、燃料そのものの使用量は減り続けている。売値が安く、売れる量も細っていく。利益率は薄くなる一方で、その薄い商いを、各社がしぶとく続けている。家族だけで営む小さな給油所なら、固定費が少ない分生き残っていける。だが、社員を雇って事業として回そうとすれば、経営は年々苦しくなる。そうして、廃業を選ぶ同業が後を絶たない。
こうした状況を、中井氏はただ憂えているわけではない。むしろ、燃料が地域からなくなることの重大さを、誰よりも実感している。
中井氏
「燃料って、使う人からすれば、当たり前にどこにでもあるものなんです。でも、本当は当たり前じゃない。災害があればあるほど、それを感じます。今回の中東の情勢のときも、実際に燃料が入ってこなくなった。当たり前にあると思っているものが、ふっとなくなる瞬間が、確かにあるんです」
燃料は、物流も、建設も、農林水産業も、製造業も、人々の生活も動かす土台だ。その土台が、地方から静かに抜け落ちようとしている。もし地域から燃料を届ける事業者がいなくなれば、そこで暮らし、働く人々は、遠くまで給油に通うほかなくなる。あるいは、必要なときに燃料が手に入らない事態すら起こりうる。
だからこそ、ナカト産業は、この地域に燃料の供給を残すことを、自らの役割と考えている。同社は、配送特化の強みを生かして業績を伸ばし、地域でのシェアを確かに広げてきた。その力を使って、廃業していく同業を引き受ける。事業を譲り受け、その顧客と供給網を自社に取り込むことで、地域から消えかけた供給力を、途切れさせずに保っていく。一社が退けば、その地域の燃料が途絶える。ならば、残れる者が引き受ける。そうしてインフラを守る発想が、事業拡大の裏にはある。
供給を支える備えは、和歌山の中だけにとどまらない。中井氏は、県外の同業者とのつながりも大切にしている。燃料が逼迫したとき、互いに融通し合える関係。災害時に連携できる体制。地域を越えたそうしたネットワークを、これから一層固めていく必要があると考えている。地方の燃料インフラは、一社の努力だけでは守りきれない。その現実を見据えたうえで、中井氏は自社の立ち位置を定めている。
能登で見た、インフラが途絶えるということ
燃料が地域から失われることの意味を、中井氏は言葉ではなく、その身で知っている。2024年に起きた能登半島地震。その災害復旧の応援として、ナカト産業も現地へ向かった。
拠点としたのは、石川県の津幡町。そこから、復旧にあたる建設業者のもとへ燃料を届ける。それが日々の任務だった。ただ、その一往復が、平時とはまるで違った。地震で道路が寸断され、現地までの道が失われていたのだ。
中井氏
「津幡町で燃料を汲んで、請け負っている建設業者のところまで配達に行って、戻ってくる。それだけで一日の仕事になるんです。片道で半日近くかかる。そういう業者が、全国から何社も集まって、みんなが同じように往復している。ああ、インフラが崩れるって、こういうことなんだと思いました」
被災した現場では、燃料の供給が、復旧そのものを左右する。中井氏が目の当たりにしたのは、土木や建設の業者だけでは、復旧が始まらないという現実だった。重機を動かすにも、車両を走らせるにも、燃料がいる。ところが、被災地は元々が地方で、燃料を扱う事業者の数も限られている。その数少ない業者までもが被災すれば、地元で燃料を手に入れる手段は、失われてしまう。
だから、復旧に入る建設業者は、燃料を運ぶ者を伴わなければ動けない。中井氏の言葉を借りれば、「燃料屋もセットで来ないと、地元で燃料供給に来てくれる者は誰もいない」。全国から集まった燃料業者が、崩れた道を片道半日かけて往復する。その光景こそが、インフラが途絶えた地域の姿だった。
この経験は、中井氏の中に、はっきりとした教訓を残した。自分たちの地域で同じことが起きたら、どうなるのか。ナカト産業は、かねてより南海トラフを見据えて備えを進めてきたが、能登で目にした光景は、その備えの意味を、いっそう確かなものにした。
中井氏
「近隣で、高台に燃料の設備を持っている業者が、まったくいないんです。みんな海や川の近くにある。津波が来れば、おそらく全部なくなってしまう。それなら、一社でもそういう場所を確保しておかないと、能登地震や東日本大震災と同じことがここでも起きてしまう。そう思ったんです」
燃料の備蓄を、高い場所へ。それは、事業の効率だけを考えれば、必ずしも合理的な選択ではない。人通りの少ない山間部より、道沿いの拠点のほうが、日々の配送には都合がいい。それでも中井氏は、災害のときに供給を絶やさないことを優先した。能登地震や東日本大震災で見た光景が、その判断を後押ししていた。
南海トラフに備える、最後の砦として
能登で得た教訓は、そのまま、自分たちの足元への備えになった。和歌山県は、南海トラフ地震で甚大な被害が想定される地域だ。県が公表する被害想定を、中井氏は率直な言葉で語る。壊滅状態だ、と。
その想定の中で、中井氏は自社の役割を明確に捉えている。災害からの復旧には、燃料が欠かせない。そして、当たり前にあるはずの燃料が当たり前でなくなるのは、まさに災害のときだ。もし南海トラフが起きれば、この地域で燃料を供給できる事業者が、どれだけ残るのか。
中井氏
「白浜町、田辺市、すさみ町といった海に面したエリアは、大きな被害を受けると思うんです。その中で、私たちのいる上富田町だけが、唯一、山間部に位置している。しかも、このあたりで私たち以上の規模の燃料会社はいないんです。だとすると、これはもう私たちの役割なのではないか、と。地域のインフラを支える企業としての、任務のようなものであると受け止めています」
この役割意識は、言葉だけのものではない。ナカト産業は、南海トラフを見据えた具体的な備えを、すでに進めている。
まず、拠点を置く上富田町とは、二つの災害協定を結んでいる。ひとつは災害時の燃料供給に関する協定、もうひとつはドローンを使った防災に関する協定だ。この協定を、今後は近隣の田辺市や白浜町、すさみ町といった自治体にも広げていきたいと、中井氏は考えている。
設備面での備えも進む。タンクローリーの台数を増やし、供給能力を高める。燃料の備蓄拠点は、能登での経験を踏まえ、高台へ移した。さらに、その拠点には自家発電の設備を整えつつある。災害で停電が起きても、燃料の供給を止めないためだ。海沿いに拠点が集中しがちなこの地域で、あえて高台に備蓄と電源を確保しておく。その一手が、非常時に効いてくる。
そして、もうひとつ、異色の備えがある。ドローンだ。ナカト産業は、赤外線カメラを搭載した事業用のドローンを購入し、中井氏と有志の社員が、操縦のための国家資格まで取得している。ただし、これは事業ではない。

中井氏
「ドローンについては、商売としては何もしていないんです。完全に、防災のためだけ。もし南海トラフのようなことが起きたときに、赤外線カメラで、瓦礫の下に人がいないかを探せる。そういう捜索の役に立てればと思って、ボランティアでやっています」
燃料の供給という本業の備えに加えて、人命の捜索という、一円の利益も生まない領域にまで踏み込む。そこにあるのは、この地域で災害が起きたとき、自分たちにできることはすべてやる、という覚悟だ。中井氏が「最後の砦」という言葉を口にするわけではない。だが、海に囲まれた地域で唯一、山間部に拠点を構え、高台に燃料と電源を確保し、捜索の手立てまで持つ一社。その姿は、まさに地域の最後の砦と呼ぶにふさわしい。
事業を続けてきた中で、芽生えた使命感
これほどの備えを、なぜ一民間企業が背負うのか。利益に直結しない防災に、なぜここまで踏み込むのか。その問いを向けると、中井氏は、自らの内側で起きた変化を、正直に語ってくれた。
中井氏
「本当に、初めはお金の部分でした。事業を拡大して、しっかり稼ぎたい。私も経営者ですから、その思いは強かったんです。でも、事業を展開していく中で、使命感みたいなものを、年々すごく感じるようになってきて。きっかけは、やっぱり災害です。能登の応援に行ったときもそうですけど、被災地って、まず地域そのものが動いていないと、外から応援が来ても復旧が進まないんです。地域が稼働していないといけない。それを、災害を通じて、すごく強く感じました」
事業を大きくしたい。経営者として当然のその思いを、中井氏は隠さない。だが、その動機を否定するのでもなく、災害の現場を重ねるたびに、そこへ別の感覚が積み重なっていった。地域が生きていなければ、復旧も始まらない。ならば、その地域を動かし続ける燃料を担う自分たちには、果たすべき役割があるのではないか。利益を追求してきた事業が、いつしか地域のための任務へと、意味を変えていった。
その使命感の根には、生まれ育った土地への思いがある。中井氏は、この上富田町で生まれ、育った。事業者としても、一人の人間としても、この町に育てられてきたという実感がある。
中井氏
「自分が生まれ育って、成長させてもらった上富田町に、何が貢献できるんだろうと考えたんです。上富田町自身にも、そういう強みを持ってほしい。上富田町があるから、周りの地域も支えられるんだ、と。そういう存在でありたいんですよね」
海に面した近隣の町々が津波に襲われても、山間部の上富田町が持ちこたえれば、そこが供給の起点になれる。上富田町が踏みとどまることが、周辺地域を支えることにつながる。中井氏が思い描くのは、自社の存続にとどまらない。自分たちが拠って立つこの町が、災害のときに地域全体を支える要になる。その絵姿だ。
利益のために始めた事業だと、中井氏は率直に言う。だが、その言葉に卑下の響きはない。むしろ、まっすぐに事業と向き合ってきたからこそ、災害の現実が見え、地域を支える意味が見えてきた。事業への意欲と、地域への使命感。その二つは、いまの中井氏の中で、分かちがたく結びついている。
和歌山を、先へ進める
地域を守るという視点は、防災だけにとどまらない。中井氏は、燃料そのものの未来にも目を向けている。
環境への配慮は、燃料業界にとっても避けて通れないテーマになりつつある。ナカト産業は、すでに環境配慮型のGTL燃料を取り入れている。さらにその先として、より二酸化炭素の排出を抑えたRD燃料への移行も視野に入れる。ただし、こうした次世代燃料は価格が高く、普及にはなお時間がかかるというのが、中井氏の冷静な見立てだ。理想と現実の距離を見据えながら、それでも一歩ずつ進もうとしている。
その一歩として、中井氏がいま準備を進めているのが、森林の力を借りた新しい試みだ。和歌山県内には、森林による二酸化炭素の吸収量が公的に認証されている取り組みがある。その認証を活用し、配送する軽油に、二酸化炭素の排出を相殺する仕組みを組み合わせる。地域の森林と、地域へ届ける燃料とを、一つの循環でつなぐ構想だ。実現に向けた話し合いは、着実に前へ進んでいる。
こうした取り組みの背景には、和歌山を先へ進めたいという思いがある。
中井氏
「和歌山県は、環境への取り組みが、都市部と比べるとまだ遅れていると感じます。だからこそ、早くそこに取り組んで、県を牽引していきたい。都会のモデルをしっかり見て、その立ち位置に自分が先に行っておかないと、出遅れてしまう。そういう思いがあるんです」
遅れているからこそ、先駆けて動く。中井氏のまなざしは、常に一歩先の和歌山を見ている。
地域を支えるという中井氏の姿勢は、燃料の枠さえ越えていく。その舞台の一つが、地元スポーツだ。中井氏が拠点を置く上富田町は、スポーツに力を入れる地域として知られる。温暖な気候とスポーツ施設の充実から、全国のチームが合宿に訪れ、町を拠点とするチームも育ってきた。サッカーの「南紀オレンジサンライズFC」と、野球の「和歌山ウェイブス」だ。いずれも上富田町とスポーツ協定を結び、地域とともに歩むチームである。
このうち南紀オレンジサンライズFCで、中井氏は顧問を務めている。プロを目指して全国から集まった選手たちが、サッカーに打ち込みながら暮らしていくには、練習と両立できる仕事が欠かせない。中井氏がそこで担うのは、選手たちの働き先を見つけることだ。本業の燃料事業を通じて築いた地域の事業者とのつながりを生かし、選手を受け入れてくれる職場をつなぐ。プレーする若者にとっては生活の支えになり、人手不足に悩む地域の現場にとっては、意欲ある担い手が加わることにもなる。中井氏は、このチームをもっと世に知ってほしいと願っている。燃料を届けることも、選手の働く場をつなぐことも、中井氏の中では地続きだ。どちらも、この地域を元気にするための営みなのだ。
給油所を持たず、燃料を現場へ届ける。廃業する同業を引き受け、地域の供給を絶やさない。災害に備え、高台に燃料を蓄え、捜索のためのドローンまで携える。次世代の燃料に挑み、地元の若者の背中を押す。ナカト産業がしていることは、一言で言えば、この地域を支え続けることだ。当たり前にあるものを、当たり前のまま守り抜く。中井氏の営みは、和歌山の地方から、その静かで確かな道を照らしている。



