お客様の声を紹介する導入事例集は、見込み顧客が商品・サービスの導入を検討する際に欠かせないコンテンツです。特に企業向け商材を販売するBtoBマーケティングには必須です。
企業のサステナビリティが重視される中、「お客様」というステークホルダーの声は、ホームページや販促・営業資料のみならず、社内報、IR資料、サステナビリティレポートなどの様々な営業・広報シーンで活用されるようになりました。
しかし、実際に導入事例やお客様の声のコンテンツを制作したことがない方は、「インタビュー成功ポイントは?」「どうやって導入事例を書くのが効果的なのか?」このような疑問を持つことが多いでしょう。
そこで今回は、自社でも「導入事例集を作成したい!」と考えている方のために、現役の記者が導入事例やお客様の声の書き方、インタビューの仕方をわかりやすく伝授します。
【現役記者がアドバイス】導入事例の作成を完全サポート!
導入事例とは?お客様の声の効果とメリット
導入事例とは
商品やサービスを導入している「お客様の声」や「Works」、「実績」などを紹介するコンテンツのことをいいます。
商品・サービスの検討初期段階(情報収集中)、検討後期段階(具体的に導入を検討中)の見込み顧客に、既に商品・サービスを活用しているお客様の声を「導入事例集」として紹介することで、導入の意思決定を促すことができます。
特に企業向けの商材を販売するBtoBマーケティングでは定番のコンテンツです。
見込み顧客にとって、「導入事例・お客様の声」に関する情報は、商品・サービスの導入を検討する際に必ずチェックするページのひとつです。
いわば口コミ情報ともいえる他社の導入事例インタビュー記事は、見込み顧客が貴社の商品・サービスの導入の意思決定をするために欠かせない情報となっています。
また、企業もサステナビリティ(持続可能性)が重視される時代です。企業規模を問わず、SDGsやESGへの積極的な取り組み、お客様・取引先・従業員・地域社会・金融機関・株主・地球環境など、企業を取り巻く「全てのステークホルダーを大切にする経営」が求められるようになりました。
導入事例は、お客様という重要なステークホルダーの声を可視化することができるコンテンツでもあります。
上場企業においては、財務諸表(過去の実績に基づく定量評価)には現れない非財務情報(企業の潜在的な価値を示す定性的な情報、サステナビリティレポートなど)の情報開示、中堅・中小企業においては商品・サービスの販売促進のみならず、優秀な人材の採用を目的とした企業のブランディング活動にもつながります。
お客様との良好な関係性を可視化できる導入事例集やお客様の声は、ホームページへの掲載に限らず、営業資料・IR資料、SNS・メールマガジン等での配信など、様々な媒体で利用できます。多様なステークホルダーの目にとまる可能性がありますので、丁寧にコンテンツを作り込んでいく必要があります。
参考 サステナブル経営事例集:【SDGs取組事例55選】企業の具体的取り組み実例を業種別に紹介!
導入事例の効果とメリットは?
「導入事例集」や「お客様の声」を紹介する主な効果やメリットは以下の5点です。
1)営業活動の生産性向上
・商品・サービスの導入イメージが具体的に伝わりやすい
・起案者が稟議書を作成しやすくなる
・資料請求・問い合わせなどコンバージョンにつながりやすくなる
・上司(社内有権者)の導入意思決定がスムーズになる
・リードタイムが短縮でき成約率の向上につながる
2)リテンションマーケティング
・記事の掲載やインタビュー取材を通じて、お客様との関係を強化できる
3)ブランディング
・自社の存在意義(パーパス)や商品やサービスへの信頼感を訴求できる
4)ステークホルダーリレーション
・ステークホルダー(お客様)との対話から共創関係を対外的に発信できる
5)クロスメディア展開
・ひとつの記事がホームページだけでなく、さまざまな媒体に活用できる
・企業間で互いに広告するので、情報拡散の相乗効果が得られる
短期的には、見込み顧客の「資料請求」「問い合わせ」の動機付けになるだけでなく、上司による「意思決定」までのリードタイムの短縮、受注率の向上が見込めます。
中長期的には、ステークホルダーとの関係の維持・強化や、採用活動や企業価値の向上など「企業ブランディング」の効果が期待できます。
このように導入事例としてお客様の声を掲載することは、営業面でのメリットや効果性だけでなく、企業のサステナビリティを示すステークホルダー向けの情報発信に重要な広報コンテンツでもあります。
企業活動において、「攻め」と「守り」のバランスを最適化する重要な役割を担うコミュニケーションツールでもあるのです。
失敗しない!導入事例の企画のポイントは?
お客様の声を集めた導入事例集を制作し、活用する際におさえるべき重要なポイントは、
- 対象企業の選び方
- インタビューの基本的な構成
- インタビューの依頼方法(テンプレート付き)
- インタビュー取材の方法とコツ
- 導入事例の書き方(サンプル付き)
- 導入事例集の構成方法
- 導入事例集の効果的な活用法
- 導入事例の作成するときの注意点
いずれかひとつでも失敗すると、思ったほどの期待効果が得られませんので注意が必要です。順番にポイントを解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
導入事例の対象先の選び方
目的の明確化
まず大切なのが、なぜ、お客様の声を集めた導入事例集を作成するかの目的です。事例を作成して、どのような媒体に掲載するのが最も効果的かを検討することでアウトプットイメージが明確になります。
同業他社の事例をチェック
企画を検討する際は、同業他社のホームページをチェックして、他社の事例集を参考に成功のポイントを検討するのもよいでしょう。ターゲット層、掲載数、訴求ポイント、質問内容、など様々なヒントが得られます。自社の差別化ポイントで訴求すればいいかなど、アウトプットイメージがより具体的かつ鮮明になります。
対象先の洗い出し
お客様の声の導入事例集のアウトプットイメージが明確になったら、掲載したい候補先の洗い出し、どれくらいの数が必要か(社数)を検討します。事例集の制作目的、顧客との関係性、競合状況によっても対象先の選定基準が変わります。
事例の選定基準
販売促進を目的とするなら、ターゲット層の同業他社の成功事例を選定することをオススメします(できれば業界トップの企業)。さらに具体的な目的として、見込み顧客の発掘と育成の場合、ターゲット企業のセグメント(業種・業態・規模・地域・課題など)に応じて幅広く選定します。
また広報が目的なら、訴求イメージが伝えやすい有名企業との関係が伝わる事例を選定することをオススメします。企業ブランディングや、ステークホルダーとの関係強化を目的にIR資料や社内報などに掲載する場合、大手企業や目指す社会の姿を共有している企業・団体との協業事例をピンポイントで選定するのが効果的です。
バランスを考慮
特定の業種・規模、同様の課題を持つ事例ばかりが並んでしまうと、
「うちの場合とは違うから参考にならない」
「そもそも対象にならないのではないか」と思われかねません。
見込み顧客の獲得を主目的にする場合、正しい情報が伝わらないと受注機会を逃してしまいます。導入事例で紹介する企業の選定は、目的を重視してバランス良い配置になるように慎重に検討する必要があります。
また、A社の事例が掲載されているのに、なぜB社の事例が掲載されていないのか、というクライアントへの配慮も必要になりますので、営業担当者と相談しながら検討するとよいでしょう。
訴求ポイント
「見込み顧客の発掘」と「見込み顧客の育成」では、訴求ポイントが異なります。見込み顧客の発掘の場合は「導入理由」、見込み顧客の育成の場合は「成果」を訴求ポイントにします。
「企業のブランディング」を目的にする場合は、お客様というステークホルダーとの「つながり」の可視化がポイントです。
例えば、あるプロジェクトで社会課題の解決を共に目指し、業務提携の相乗効果で今後さらなるイノベーションが期待できる、など両社が共創関係にあることを具体例として伝える事例は効果的です。
共通の価値観、同一の問題意識に基づき、よりよい社会づくりのために、具体的にどのようなアクションを起こしているのかなど、数字や文章だけでは伝えられない情報をビジュアルで表現することもできるでしょう。
導入事例はこのようにお客様の声を公開し、財務諸表には現れない定性的な企業価値を可視化することにもつながります。
- 「見込み顧客の発掘」が目的なら「導入理由」を訴求
- 「見込み顧客の育成」が目的なら「導入後の成果」を訴求
- 「企業のブランディング」が目的なら「ステークホルダーとのつながり」を訴求
導入事例インタビューの基本構成
導入事例のインタビュー候補の洗い出しができたら、導入事例集のアウトプットイメージをデザイン面も含めて具体的にしていきます。
アウトプットイメージには、インデックス構成、いわゆる、導入事例集が一覧として掲載されているサイトの作り方、導入事例記事本体の構成(シナリオ)を具体化する必要があります。
ここでは導入事例記事本体の構成について、インデックスの構成は後の項目で解説します。
事例記事の基本構成は、テンプレートに沿って共通の構成にするとよいでしょう。
インタビューの質問内容をある程度決めておき、テンプレート化して、必要に応じてカスタマイズするという方法をおすすめします。
導入事例記事の基本構成
- 企業概要
- インタビュー対象者
- 導入前の課題
- 導入理由
- 導入効果(Before-Afterの変化)
- 導入後の状況(使い勝手、フォロー、社内の声)
- 今後の展開
導入事例インタビューの依頼方法(テンプレート付き)
インタビュー取材の依頼は、「取材依頼書」を作成し、営業担当者や広報担当者を通じてアポイントを取得することが一般的です。
大手企業の場合、広報部門等で取材許可が下りたあとに、インタビュー対象者に正式に取材のアポイントを打診することになります。
「取材依頼書」テンプレートの入手はこちらから!
導入事例のお客様へのインタビューをする際には、相手先企業にも何らかのメリットとなるように配慮することが大切です。場合によって、特典や謝礼を準備することもあります。
有名企業や導入ターゲット層の場合、受注段階から導入事例として掲載することを前提に打診しておくとスムーズです。
取材依頼書には、取材の目的、日時・場所、主な質問内容、写真撮影の有無などを記載します。掲載記事の見本も併せて提示すると理解してもらいやすいでしょう。
そうすることで、どんな質問をされるか、誌面イメージが事前にわかるため、回答内容を準備することができ、安心してインタビューを受けてもらうことができます。
公表可能な実績数値や資料を事前に調べておいてもらったり、写真撮影を想定した場所の選定をしてもらえるため、取材をスムーズに進めやすくなります。
導入事例インタビュー取材のコツ
インタビュー取材をうまくやることができれば、お客様との信頼関係をより強くできますし、反対に準備不足だと相手に不安感を抱かせることになります。
ここでは、数々のインタビュー取材を経験してきた、coki記者による、インタビューを成功させるコツを紹介していきます。
- 取材する内容を具体的に準備する
- 取材対象者に準備して欲しいことを伝える
- 取材場所を事前に調べロケーションを確保
- リラックスして話してもらえるようなアイスブレイク
- 大切な話を聞き漏らさないようにICレコーダーを準備
- 導入の成果や根拠となる数字、エピソードの聞き取る
- 余裕をもったタイムスケジュール
- 取材後のアフターフォロー
具体的に解説します。
事前準備
先ほどご紹介した取材依頼書は、取材の可否や日時などのアポイント情報のみならず、インタビュー取材の内容や、準備してほしいことを伝える目的も兼ねています。
取材対象者と主な構成を決めたら、具体的な質問内容を検討していきましょう。
対象者が取材に慣れている人、慣れていない人がいます。
それぞれの場合において、具体的にどのような話をすればいいか事前にイメージできるようにしておくことが大切です。
オンライン取材の場合は、インタビュー動画のスクショの掲載、別途写真撮影が必要になる場合があります。訪問取材の場合ではロケーションの確保が重要です。
落ち着いて話を聞ける場所、訴求したいイメージの写真や動画が撮影できる場所(背景、照明、騒音など)を考慮して最適な場所を指定してもらいましょう。
インタビュー当日
訪問取材の場合、まずは取材場所について確認しましょう。
写真撮影をする場合、企業ロゴの前でポートレイト写真を撮影したり、インタビュー風景を撮影したりするなど、さまざまなカットを撮影します。
広報担当者がいる場合は、事前に撮影場所についてすりあわせておくとスムーズです。
営業担当者にも同席してもらうとお互いに安心です。うまく話が引き出せない場合などにフォローしてもらえたり、お客様とのさらなる関係構築にもつながります。
取材対象者・アテンド担当者に挨拶をしたら、当日のタイムスケジュール、制作の進行の流れについて説明します。
アイスブレイク(緊張をやわらげる話題)の準備はオススメで、和やかな雰囲気でスタートするようにしましょう。
取材依頼書に記載した質問事項に沿って進行しても、想定していた話題が引き出せない、脱線が多く話がまとまらない、といったケースもあります。
また、話しのスピードにメモが追いつかなかったり、業界用語などで言葉が理解しにくかったりする場合もあります。
原稿にする際、的確に整理できるように、必ずICレコーダーで録音しておくことが必要です。執筆前に文字起こしをしたり、理解が不十分なところを聞き直すこともできます。
特に導入の成果や導入前後の変化を示す数字や具体的なエピソードはとても重要です。
事前に、公表できる数字を調べておいてもらったり、固有名詞(社名・部署・役職・お名前など)を掲載してよいかどうかを確認しておきましょう。
実は、余談の中にも重要な情報や、面白いエピソードが聞ける場合があります。
気持ちよく話してもらえるよう、余裕を持ったスケジュールを組むとよいでしょう。
インタビュー後
終了後には、当日中にお礼のメールを送りましょう。早いタイミングで文字起こしをして、不明点があれば確認するようにしてください。
原稿を作成したら、取材対象者に(広報部門があれば広報担当者にも)原稿と写真を確認してもらい、最終的な掲載許可を取得します。
お客様の声・導入事例の書き方のポイント(サンプル付き)
導入事例・お客様の声の書き方は、以下の4つのパターンが主流です。
Q&A形式(質疑応答形式):比較検討しやすく
QとAの形式です。
各社同様に定型の質問に答えてもらう場合に有効です。
商品・サービスを比較検討してもらいやすいというメリットがあります。テンプレートに沿ってまとめることができるので初心者向きで、内製化する場合におすすめです。
ただし記事が淡泊な印象にならないように注意が必要です。
訴求力のある事例にするには表現に変化を付けたり、発言した内容をかみ砕いて書くとよいでしょう。
QA形式の記事はこちら!