
出資金総額は2000億円を超え、約3万7000人から集めた個人投資家向け商品が、分配金停止と集団訴訟に発展した。
約2500人が返還を求め提訴する事態は、低金利時代に高利回りをうたった商品のリスクを改めて浮き彫りにしている。
行政調査も進むなか、宣伝を担った媒体の責任論も浮上している。
債務超過2881億円と現状
運営会社が大阪府に提出した事業報告書によると、2026年3月期は営業赤字約65億円、最終赤字約2984億円を計上し、純資産がマイナス約2881億円となった。
前年同期の純資産が100億円前後だったことを踏まえると、わずか1年で急激に悪化した計算になる。
主な要因として保有不動産の減損損失と賃料収入の遅延が挙げられている。
主力商品の成田空港周辺大規模開発は工事進捗が極めて遅れ、分配金は2025年夏以降ほぼ全商品で停止した。
運営側は「保有資産の売却で債務超過を是正できる見込み」と説明するが、監督当局の大阪府は債務超過を違法状態と位置づけ調査を進めている。
出資者側では約2500人が総額200億円を超える出資金の返還を求める集団訴訟を起こしており、一部の個別訴訟ではすでに返還を命じる判決が出ている。
帳簿上の資産評価と実態の乖離がここまで大きくなった背景に、開発計画の遅延や評価額の見直しが強く影響した可能性が高い。
想定利回り7%の怪しさと投資を誘った構造
日本の金利水準を考えれば、年7%前後の想定分配は明らかに突出していた。
長期金利が長らくゼロ近辺で推移し、最近でも10年国債が2%前後にとどまるなか、都市部の賃貸不動産利回りはおおむね3〜5%程度が相場だ。
未稼働や開発途上の案件を中心に借入をほとんど使わずこの利回りを継続するのは、専門家からも「常識的に困難」と指摘されてきた。
宣伝では優先劣後出資の仕組みを前面に押し出し「元本評価の下落を一定範囲まで事業者が負担する」「大家の実務が不要」「2カ月に1回の安定分配」と安全性と手軽さを強調した。
しかし実際の収益原資が十分に確保されていない段階から高水準の分配を続けていた点に、新規出資金を既存出資者への支払いに充てる自転車操業の疑いが指摘されている。
預金や国債を大きく上回る数字を「比較的安定した不動産収入」として提示した構造自体が、リスクを過小評価させる要因になったと言える。
なぜ約2500人が集団訴訟に踏み切ったのか
出資者の多くは50代から70代以上の退職世代や年金生活者だった。
銀行預金の金利がほぼゼロの時代に「年金だけでは不安」「退職金を少しでも増やしたい」というニーズが強く、1口100万円から始められる手軽さと定期的な分配金が魅力に映った。
テレビCMを中心とした大規模な宣伝で「安心できる不動産投資」「年金プラス分配金で将来の不安を軽減」といった文言が繰り返され、過去数年間にわたり分配が実行されていた実績が信頼を積み上げた。
投資経験の少ない層も少なくなく、不動産特定共同事業法に基づく行政の枠組みを「お墨付き」と受け止めたケースが目立つ。
株の値動きを嫌う心理や、成田空港近くの大規模開発という夢のある話が後押しした面もある。
分配停止が明確になった後、解約や返還を求めて集団提訴に踏み切った約2500人は全体の一部に過ぎないが、被害意識の強さと「安定した収入源になるはずだった」という期待の大きさを物語っている。
広告媒体の責任と過去の類似事件
テレビやYouTubeなどで積極的に展開された広告は、商品の認知度を急速に高め集客に大きく寄与した。
運営会社が巨額の債務超過に陥っても、広告を掲載した媒体側は広告費を受け取って終わりという構造に出資者からは「逃げ得になりやすい」との批判が出ている。
法的に媒体の責任を直接問うハードルは高いものの、影響力が大きかった事実は否定しにくい。
類似の事例としては2018年に表面化したかぼちゃの馬車事件が挙げられる。
サブリースによる家賃保証をうたってシェアハウス投資を勧誘し、スルガ銀行の不正融資問題と絡んで数百人規模の被害者を出し、関連するローン残債は数百億円から千億円超とされた。
いずれも高利回りと安心感を前面に押し出した個人向け不動産商品で、説明不足や資産評価の乖離、宣伝の過熱が共通している。
今回の出資金規模はさらに大きく監督体制の強化と投資家へのリスク周知のあり方が改めて問われる事態となっている。



