
ジェイアンドダブルトレーディングを含む3社は2023年8月から2024年5月にかけて数千台のiPhoneを輸出したと帳簿に記載していたが、実際は鉄板入りの模造品だった疑いが強い。
関西空港での税関発見がきっかけとなり発覚したこの事案は、輸出免税制度の構造的な弱点を象徴している。
神戸3社に約1億1000万円の追徴課税
大阪国税局の調査で、神戸市に所在する3社が消費税の不正還付を受けていたことが明らかになった。
対象は総合エンジニアリング会社のジェイアンドダブルトレーディングなどだ。
3社は2023年8月から2024年5月の期間に、数千台のiPhoneを国内で仕入れて中国向けに輸出したと申告し、約1億円の還付を得ていた。
しかし仕入れ先の実在が確認できず、国税当局は不正と認定した。
ジェイアンドダブルトレーディングの担当者は「不正には関わっておらず、更正処分には不服申し立てをする」と反論している。
行政処分にとどまり現時点で刑事告発には至っていないが、追徴額の大きさと偽装の精巧さから単なるミスとは言い難い事案である。
関西空港で鉄板入り偽iPhone発見
発端は2025年夏の関西空港だった。
中国向け輸出貨物を検査した税関職員がX線画像に違和感を覚え、段ボール箱6箱を開封した。
中には「iPhone 15 Pro Max」と記載された箱が約200個入っていた。
外見や重さ、ホログラムまで本物そっくりだったが、内部は電子部品ではなく鉄板が詰められていた。
税関は輸出を差し止め、大阪国税局に通報。
これを受けた国税局の調査で、3社の還付請求との関連が浮上した。
高額機種を装いながら中身を安価な鉄板にすり替える手法は、税関の抜き打ち検査でなければ見抜けなかった可能性が高い。
水際での発見がなければ、不正は継続していたとみられる。
輸出免税と仕入税額控除を悪用した仕組みと制度の課題
消費税は国内消費に課税する制度で、輸出取引は税率0%の免税となる。
事業者は売上にかかる消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引き、差額がマイナスなら還付を受けられる。
この仕組みを利用し、帳簿上は高額な正規iPhoneを仕入れたことにして仕入税額を膨らませ、実際には偽品を輸出して還付を請求した疑いがある。
輸出許可書などの書類さえ整えば請求が通るため、仕入れと輸出の実態確認が追いつかない構造的欠陥がある。
国税庁も不正還付を重点課題とし、架空仕入れや偽装輸出の告発を重ねているが精巧な偽装には後手に回るケースが目立つ。税関と国税の連携不足も、発覚遅延の一因だ。

不正還付は氷山の一角 未発覚事案の存在を示唆
今回発覚した約1億円規模の不正は、決して例外ではない。
消費税の不正還付は過去にも金地金や高級腕時計、パワーストーンなどを巡る事案が摘発されており、告発件数は近年増加傾向にある。
輸出免税を装った虚偽申告は書類上の体裁を整えやすく、税関検査をすり抜けた貨物が多数存在する可能性が高い。
還付申告全体の規模は年間数兆円に達し、国税当局が全てを精査するのは現実的に困難だ。
「捕まっていないだけで、もっとある」という指摘は的を射ている。
今回の偽iPhone事案は、制度の穴を突いた計画的な手法を示したに過ぎず未発覚の類似ケースが相当数潜んでいるとみるのが妥当である。
還付制度廃止案の是非と現実的なデメリット
一部では「悪用されやすい輸出還付制度自体を廃止すべきだ」との声が出ている。
検知が難しく国庫を損なう仕組みを残すのは問題だ、という主張だ。
しかし輸出免税は国際的に標準の仕向地主義に基づくもので、廃止すれば日本製品の輸出価格に国内税が上乗せされ、競争力が大きく低下する。
自動車や電機など輸出依存度の高い産業への打撃は深刻で、雇用や経済成長にも悪影響が及ぶ。
現実的な対応は制度廃止ではなく、税関検査の強化、仕入れ実態の厳格確認、インボイス制度の徹底活用にある。
今回の事案を機に監視体制を抜本的に見直さなければ、同様の不正は繰り返されるだろう。



