
反町隆史が鬼塚英吉を演じる連続ドラマ『GTO』で、教室のにぎわいから一歩引き、冷めた視線を向ける女子生徒がいる。若槻琴音役の梶原叶渚、17歳。父親は「カジサック」として活動するキングコングの梶原雄太で、幼い頃から家族動画に「かんちゃん」の愛称で登場してきた。第3話で出番が増えると、SNSには容姿や演技を称える声が並ぶ一方、「父親の力で選ばれたのではないか」という反応も広がった。二世タレントにとって親の名前は、扉を開く鍵であると同時に、本人の演技を曇らせる看板にもなる。梶原は『GTO』で、その看板より強い印象を残せるのか。
『GTO』若槻琴音役で注目された梶原叶渚
『GTO』は、元暴走族の教師・鬼塚英吉が、生徒や学校の問題へ型破りな方法で向き合う学園ドラマだ。梶原が演じる若槻琴音は、鬼塚が担任を務める私立誠進学園1年B組の生徒で、周囲と距離を置き、恋愛にも冷めた態度を崩さない。
鬼塚が生徒から高い評価を得ようと話しかけても、若槻は短い言葉であしらう。声を荒らげず、大げさに顔をしかめることもないが、細めた目や動かない口元から、これ以上踏み込んでほしくないという拒絶が伝わってくる。父親の動画で見せてきた、よく笑う「かんちゃん」を知る視聴者ほど、その落差に驚いたはずだ。
8月3日放送の第3話では、若槻に思いを寄せる吉田歩夢との関係が描かれた。恋愛に関心を示さず、相手から向けられる視線にも不快感をあらわにしていた若槻が、正面から気持ちを伝えられた瞬間、それまで崩さなかった表情に戸惑いをにじませる。筋書きを追わなくても、他人を遠ざけてきた少女の心がわずかに動いたことは分かる。梶原は台詞で感情を説明せず、視線と表情の変化でその揺れを見せた。
放送後のSNSには「制服姿がかわいい」「演技が上手い」「ひたすら美しかった」といった声が相次いだ。28人いる生徒役の中で第3話の軸を担い、カジサックの動画を見ていない層にも顔と名前が届いたが、注目が集まれば「親の七光り」という批判も強くなる。視聴者の前に現れたのは若槻琴音なのに、梶原叶渚について語ろうとすると、本人の演技より先に父親の名前が出てくる。それが二世タレントの逃れにくい宿命である。
家族動画の「かんちゃん」から女優へ
梶原叶渚は2009年7月31日生まれ、東京都出身。スターダストプロモーションに所属し、女優とモデルの両方で活動している。幼少期からカジサックの家族動画に出演しており、芸能活動を本格化させる前から「かんちゃん」として知られていた。無名の新人とは違い、最初から大勢の視聴者に顔を覚えられていたことは、芸能界で仕事を始めるうえで有利に働いたはずだ。
女優デビューは、2024年5月に放送が始まったNHK夜ドラ『柚木さんちの四兄弟。』。その後も『スカイキャッスル』『民王R』『浅草ラスボスおばあちゃん』『僕達はまだその星の校則を知らない』などに出演し、2026年1月期の『パンチドランク・ウーマン―脱獄まであと××日―』では日下寿々役を演じた。女優デビューから約2年、父親の動画とは異なる現場で経験を重ねてきた。
2025年には「ミスセブンティーン2025」に選ばれ、『Seventeen』専属モデルとなった。ランウェイへ立つ際は、緊張で上半身が固くなることや、音楽につられて歩く速度が上がる癖を直すため、何度もウォーキングを練習したという。家族動画なら自然体の姿も魅力になるが、モデルのステージでは姿勢、歩幅、視線まで評価される。父親のカメラの前で育った少女が、仕事としてカメラに映る技術を身につけてきた。
400人超の選考でも消えない「親の七光り」
「カジサックの長女」という肩書が、梶原の知名度を押し上げたことは否定できない。本人の名前だけでは届かない層にも記事や動画を見てもらえ、芸能界入りした時点から一定のファンを抱えていた。親の名前が入口で追い風になった以上、「完全に実力だけでここまで来た」と飾るほうが不自然だろう。
それでも、『GTO』の若槻琴音役が、父親の名前だけで転がり込んだ仕事とは言い切れない。生徒役のオーディションには400人を超える若手俳優が参加し、書類審査後に最大4回、約3カ月にわたる選考が行われた。梶原もその審査を経て役をつかんでいる。父親の知名度が応募前から顔を売ってくれても、何度も続く選考で台詞を覚え、演出に応え、役に合うと判断されなければ教室の席には座れない。
とはいえ、400人を超える選考を通ったという数字が、演技力を保証してくれるわけでもない。視聴者が見るのは審査の厳しさではなく、放送されたドラマである。台詞が浮いていれば批判され、役より本人が見えてしまえば「カジサックの娘」で終わる。二世タレントは早く名前を覚えてもらえる代わりに、仕事を得るたびに親の力を疑われ、失敗すれば「やはり実力がなかった」と決めつけられる。入口で得たものが大きいほど、現場で返し続けなければならない。
「カジサックの娘」より役名が先に出る日は来るか
梶原が父親から繰り返し教えられてきたのは、礼儀を忘れず、大きな声と笑顔で挨拶し、第一印象を大切にすることだという。芸能界を勝ち抜く裏技ではなく、現場で次の仕事につなげるための基本である。父親が渡せるのは名前と助言まで。撮影が始まれば、自分の表情と声で役を成立させるしかない。
『GTO』第3話では、梶原の容姿だけでなく、若槻の冷たい視線や、心が動いた瞬間の表情について語る声が生まれた。家族動画の「かんちゃん」ではなく、若槻琴音として見られる時間が生まれたことは、女優としての前進だろう。ただ、一話で脚光を浴びただけでは「親の七光り」という言葉は消えない。次の場面でも次の作品でも役を残し、父親を知らない視聴者から名前を覚えられて、ようやく評価は本人のものになる。17歳の今、父親の名前が添えられること自体は避けられないが、『GTO』で見せた表情より家族関係ばかりを語るなら、本人の演技を見ずに「親の七光り」と決めつけているのも同じである。



