
中国当局の取り締まり強化を受け、ネット証券大手・富途控股(Futu Holdings)の株価が急落。創業者でCEOの李華(Leaf Li)氏の資産は1日で約17億ドル(約2700億円)消滅し、47億ドルまで目減りした。
李華とは何者か
富途控股は2012年に香港で設立されたネット証券・資産管理プラットフォームで、ナスダックに上場している。創業者の李華氏はかつてテンセントの初期開発メンバーとして知られ、テンセントQQやテンセントビデオの立ち上げに関わった人物だ。
テンセント退職後、個人投資家向けにネット証券サービスの開発を始め、富途を急成長させた。その後は国際展開を加速させ、資産は一時96億ドルにまで膨らんでいた。米国・シンガポール・オーストラリアなど8市場へ展開し、「moomoo(ムームー)」ブランドで日本人投資家にも認知されつつあった。
なぜ資産が1日で消えたのか
2026年5月22日、中国証券監督管理委員会(CSRC)が工業情報化部・中央銀行・国家外汇局など8部門と合同で取り締まり方針を発布。富途・老虎証券(Tiger Brokers)・長橋(Longbridge)の3社に対し立件調査を開始し、行政処罰の事前通知書を発出した。
富途への罰金・没収総額は18億5000万元(約390億円)に上る見込みで、創業者の李華氏個人にも125万元の罰金が科される方針が示された。
当局が問題視したのは、中国本土の投資家に対して無認可で株式売買・公募ファンド販売・先物仲介サービスを提供していた点だ。CSRCは富途・老虎・長橋に対し、中国本土での営業を2年かけて段階的に閉鎖するよう命じた。
中国投資家への影響
規制当局の処分決定を受け、一部の投資家が暗号資産を迂回路として海外株式に投資する動きに注目が集まっている。今後、本土の富途ユーザーの資金がどこへ向かうかは不透明だ。富途側は規制に従う姿勢を示しているが、既存ユーザーの口座や資産の扱いについて不安視する声も広がっている。当面は段階的な移行措置が取られる見通しで、ユーザーへの具体的な対応指針が注目される。
中国当局「グレーゾーン」への本格介入
富途は2019年から2025年にかけて、中国本土ユーザーが営業収益の40〜70%を占めていたとされる。14年間にわたり監督当局との間で「グレーゾーン」での営業を続けてきたが、今回の処分でその時代に終止符が打たれた形だ。
中国当局が掲げるのは資本流出の管理強化と国内金融秩序の維持だ。習近平政権下で続いてきた「巨大プラットフォームへの規制締め付け」の流れは、今回の富途ショックにも色濃く表れている。個人投資家の海外投資ルート縮小は、今後の中国マネーの行方にも大きな影を落としそうだ。



