
新型コロナウイルス禍で2020年1月に日本企業として最も早く導入してから約6年半が経過した。
IT業界ではLINEヤフーや楽天など大手が相次いで出社を原則化する中、通勤負担増やワークライフバランス悪化、人材流出への懸念が強まっている。
在宅勤務完全廃止を発表
GMOインターネットグループは2026年7月13日付で、在宅勤務のグループ推奨を完全に廃止した。
熊谷正寿代表が同日、自身のXアカウントで発表した。
投稿では「2020年1月29日からパートナーの命を守るべく、日本で一番早く在宅勤務を開始致しました。コロナ後も、採用やパートナーのQOLを鑑み、週一日は在宅勤務を認めておりました。6年半続けましたが、昨日付でグループとしての推奨は完全廃止を致しました」と述べている。
同社はこれまで、コロナ禍の緊急対応として在宅勤務を推進し、2023年2月には新型コロナ対策の完全撤廃に伴い週2日在宅勤務の推奨をいったん廃止していた。
その後も週1日程度の柔軟な対応を認めていたが、今回これを完全に終了した形だ。
個別の事情がある場合は各グループ会社の判断に委ねるとの位置づけになっている。
導入から撤回までの経緯
GMOは2020年1月、新型コロナウイルス感染拡大を背景に、国内企業として最も早くグループ全体で在宅勤務体制に移行した。
当時、約4000人の従業員を対象に迅速に切り替え、事業継続を図った。
導入当初は感染防止を最優先とし、ツールの活用により業務への大きな支障は出なかったとされる。
その後、2023年2月には新型コロナ対策の完全撤廃と連動して、週2日在宅勤務のグループ推奨を廃止し、出社を原則とした。
ただし、採用力の維持や従業員の生活の質向上を考慮し、週1日程度の在宅勤務を柔軟に認めていた。
2026年7月13日の決定は、この残された推奨枠も完全に終了させるものだ。熊谷代表はこれまでの経緯を振り返りつつ、全体最適の観点から判断を下した。
廃止の背景と企業側の理由
廃止の主な理由として、熊谷代表は「トータルではマイナス」と指摘している。
具体的に、時間当たりのパソコンのタイピング数が減ったことなどを挙げ、生産性全体への影響を懸念した。
従業員同士のコミュニケーションが希薄になり、意思決定のスピードや偶発的なアイデア創出に悪影響が出ていたとの認識だ。
企業側は、対面での交流を通じた組織文化の維持や新人育成の円滑化を重視している。
在宅勤務が長期化する中で、チームの一体感やメンタリングの機会が減少し、結果として組織全体の活力に影響を与えていたとみられる。
また、同社は生成AIを活用した業務改革を並行して推進しており、2026年7月13日には熊谷代表がグループAI変革最高責任者(CAIO)を兼務することを発表した。
在宅勤務の廃止は、こうした組織体制の見直しと連動した動きとみられる。
現場や世間の反応
発表後、XなどのSNSでは元社員や現役社員と思われる投稿が相次ぎ、在宅勤務廃止への強い懸念と不満が噴出している。
ある元社員は「こうなったので、先月付でやめました」と明かし、政策変更が退職の直接的なきっかけになった可能性を示唆し、投稿は大きな反響を呼んでいる。
共働き世帯や子育て・介護を抱える社員からは「子供の急な発熱対応や習い事との両立が不可能になる」「通勤時間が無駄で生活の質が大幅に低下する」との声が相次いでいる。
地方在住者や通勤時間が長い社員は特に影響が大きく、「日本で共働きを推進する政府方針と矛盾している」「優秀な人材が流出するのではないか」との批判が強い。
企業側が生産性向上を掲げる一方で、個人の生活負担を無視した強引な決定として、現場の反発は今後も続きそうだ。
IT業界全体の出社回帰動向
GMOの決定は、IT業界全体で広がる出社回帰の潮流を象徴している。
LINEヤフーは2025年4月から完全リモート勤務を廃止し、出社日を設定した。
楽天グループも原則週4日出社を基本とする方針を打ち出している。
サイバーエージェントなど他の大手でも、ハイブリッドワークから出社重視へシフトする動きが見られる。
背景には、コロナ禍で一時的に拡大したリモートワークの長期的なデメリットが指摘されている。
対面での偶発的な議論や信頼関係の構築が難しくなり、組織のダイナミズムが損なわれるケースが報告されている。
一方で、完全出社にこだわらず柔軟性を維持する企業も依然として存在し、業界内では二極化が進んでいる。
政府がテレワークを推進する方針とは対照的に、企業独自の判断で出社を原則とする動きが強まっている状況だ。
こうした変化は、IT人材の採用や定着に深刻な影響を与える可能性が高い。
企業は生産性と働きやすさのバランスをどのように取るか、さらなる検討を迫られている。



