
製造工程の未活用資源に着目し肥料化を図る企業がある。第一工業製薬グループの四日市合成は産学連携を通じて輸入依存が高いカリウムの国内代替を目指す。資源循環と供給安定化の両立を狙う同社の試みに迫る。
未活用カリウム成分を肥料へ再利用する産学連携研究の開始
モノづくりが生み出す副産物を、どう未来の資源へ変えていくか。
化学製品を手掛ける第一工業製薬のグループ会社、四日市合成が面白い一歩を踏み出した。2026年4月から静岡県立大学との共同研究を開始し、これまで活かしきれなかった製造工程のカリウム成分を、肥料として再利用する挑戦を進めている。
研究の舞台では、食品栄養科学部の研究室と手を取り合い、実際にトマトなどを育てる栽培試験が進行中だ。作物の育ち具合や品質を科学的に見極めながら、実用化への道筋をたどっている。捨てられていたものに光をあて、新しい価値を与える発想がここにある。
従来の廃棄物を資源化し農業資材の国産化を推進する独自性
日本の農業にとって、肥料原料の多くを海外からの輸入に頼っている現状は、逃れられない大きなリスクだ。国際情勢の揺れや物流コストの高騰が、そのまま国内の農家を直撃してしまう。
こうした中で、国内の工場から出る副産物を資源として捉え直し、国内で循環させる仕組みをつくる意味は大きい。
四日市合成の試みが他と一線を画すのは、単なる自社のゴミ減らしで終わらせない点にある。化学工業と農業という一見離れた世界をつなぎ、アップサイクルによって肥料の国産化に挑んでいるからだ。供給の安定と調達リスクの軽減を同時に狙うアプローチには、他社にはない筋の通った独自性がある。
高度な技術力を基盤に社会課題の解決を志向する企業哲学
四日市合成は、四日市石油化学コンビナートのなかで高度な合成技術を磨いてきた企業だ。根底にあるのは、技術を通じて社会の課題に応えていくという揺るぎない姿勢である。
現場で研究に挑む関係者は、その情熱をこう語る。
「製造の途中で残る成分を単なる廃棄物で終わらせたくない。循環型社会に役立つ資源へと育て上げたいのです。大学の専門知識とタッグを組むことで、確かな根拠を持った製品を届けることができます」
自社の技術をただ自社製品のためだけに使うのではなく、より広い社会の循環に役立てようとする姿勢が、この共同研究を支えている。
自社資源の再定義と外部連携による新たな価値創出の教訓
この試みが教えてくれるのは、自社の事業の中にまだ眠っている可能性を見つめ直すことの大切さだ。
自社の中だけで完結させようとせず、大学などの専門機関と手を取り合うことで、技術的な壁は越えられる。畑の異なる知見が混ざり合うことで、これまでなかった新しい市場や価値が生まれていく。
環境への配慮と事業の成長を、矛盾させずに進めていく。そんな未来のモノづくりのヒントが、この取り組みには詰まっている。



