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株式会社土屋

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〒715-0019岡山県井原市井原町192-2久安セントラルビル2F

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設立以来スピーディーな事業拡大ができたのも、おかやま信用金庫の真鍋氏のおかげ|株式会社土屋 代表取締役 高浜敏之

ステークホルダーVOICE 金融機関
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株式会社土屋 代表取締役 高浜 敏之さん(画像提供:土屋)

土屋グループは今でこそ、順調な成長を見せていますが、ここまでの会社になるまでには多くの荒波を乗り越えてきました。

今回、ステークホルダーとのつながりを情報開示する場であるcokiにて、苦しい時期に支えてくれた真鍋氏にこの場を借りてありがとうを伝えさせていただきます。

<土屋グループについて>
土屋グループは、障害を持たれる方をはじめ、高齢の方や児童が安心して共に生きられるような地域共生社会の実現を目指し、各種ケアサービスの提供や農福連携など、様々な事業を展開しているトータルケアカンパニーです。

メイン事業はホームケア土屋が運営する重度訪問介護(重度障害者への訪問介護サービス)となり、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とするクライアント(利用者)にも対応し、現在ではホームケア土屋では47都道府県においてサービス提供体制が確立され、クライアント数800名弱、アテンダント(ヘルパー)数1,500名超で運営しています。土屋グループ自体は従業員数が約2,500名となっています。

今の会社があるのも真鍋氏のおかげ

2020年8月に設立されましたが、スピンアウトによりスタートした経緯もあり、当初はとりわけ資金面で危機的状況に見舞われました。荒波の中、出帆した我々が、現在こうして事業の継続と新事業の展開が図れているのも、設立当時に並々ならぬご協力をいただいた「おかやま信用金庫」本店営業部主任(当時)・真鍋智也氏あってこそです。

我々と真鍋氏の出会いは、まさに邂逅と言えるものだと、いま実感しています。

創業から経営危機、そして真鍋氏に出会うまで

信念あればこそ

私は大学で哲学を学び、卒業後は介護の道を歩いてきました。初めて担ったのが、障害をお持ちの方に対するケアサービス(重度訪問介護)でしたが、当時はまだまだ法的にサービス体制も整っておらず、障害を持った方が自身の置かれている劣悪な状況を世の中に訴え、支援体制を勝ち取っていく、そのさなかにありました。

そうした中で、私自身もその苦境に胸を突かれ、共に障害者運動に参加し、パイオニア的リーダーと伴走する生活を7年ほど送ってきました。しかし生活等の事情もあり、2012年に前会社の立ち上げメンバーに参加して、通所介護(高齢者対応)の運営に携わることとなりました。

1事業所の管理者をしながら複数事業所のスーパーバイザーとして勤務する中で、やはりずっと心にあったのは障害者への支援サービスです。そこで2014年、重度訪問介護事業を立ち上げることとなりました。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィー等、難病の方に対するサービス提供に力を入れ、2016年から本格的に全国展開を開始しました。というのも日本各地より、施設等で自由を奪われた暮らしを送らざるを得ない方々、在宅介護で疲弊するご家族から助けを求める声が絶えなかったからです。

一刻も早い支援が必要だと、まずは関東全域に、翌17年には関西・東海、18年には九州・北海道・東北、そして19年に中国・四国地方へ事業所を設立するというように、非常にスピーディーに事業を展開していきました。

私自身、当時は事業責任者として全国に出張し、週のほとんどをビジネスホテルで暮らしながら各地で事業所を立ち上げていました。責任者を配置し、軌道に乗ると別の地域に飛ぶことを繰り返し、ようやく2020年に40都道府県以上でこのサービスを提供できるようになったんです。

けれど、事業の拡大と共に、社の方向性がどんどん当初の私の想いと逸れていくことにもなってきました。

ビジネスと想いのはざまで ~スピンアウトに至るまで~

当時は子どもが生まれたばかりでしたが、ほとんど家に帰れず、顔を見ることすらできませんでした。それも私自身が、若い頃から「いかにこの事業が大切な役割を果たしているか」、そして「このサービスが足りないことによって、いかに多くの人たちが今なお困っているか」ということを常に見てきたからです。その中で、事業を作る側の人間として、この問題を解決したいという思いに駆られて、全国を飛び回っていました。

しかしビジネスというのは、ある意味で魔物でもあり、当初の目的が「サービスを提供することで問題を解決する」であっても、事業の持続のために収益性の維持を図る中で、次第に「数字を作る」ことそのものが目的になってしまうことも往々にしてあります。

どんな事業であれ、ある種のマネーゲームに変貌を遂げてしまう可能性がゼロではない中で、前会社でもそれに近い状況が見られつつありました。

ビジネスへの偏重が大きくなり、当時の社の理念との間に、徐々に“ずれ”が出始めたんです。会社内の空気感も変わっていく中で、私の中でビジネスと理念が乖離していくことへの恐れが生じ、ひいては支援現場にもその影響が及ぶのではないかという危機感が現れ始めました。そして前会社の社長と話し合った結果、別々の道を歩むということでスピンアウトの決断に至りました。

出帆と経営危機

2020年8月に株式会社土屋が出帆しましたが、課題は山積していました。何よりも資金面での問題です。

介護業界には独自の仕組みがあり、介護報酬という税金を元に運営がなされるので、実際にサービスを提供した月日と、国からの介護報酬の支払いに時間的なタイミングのずれが生じます。

当社はスピンアウトにより、出帆当初から関東圏以外の全国の事業所を引き受けることになっていました。この売上規模が当時は2億円ほどで、その約70%(1億4千万円)を人件費が占めます。新会社として稼働したのが2020年11月でしたが、その月の売上は2021年1月半ばまで入ってきません。しかし、給与は12月に支払わなければならない。

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つまり、資金が入って来るよりも出ていく方が先なわけです。このタイミングのずれが、とりわけ介護事業において資金問題を発生させる最も大きな要因ですが、出帆当時はまだ稼働していないので、理論上は資金が全くない状況です。この人件費をいかに捻出するか、それが新会社設立に当たって、最初に超えるべきテーマとなりました。

とはいえ、この問題は関係者の融資で何とか乗り切れそうではありました。設立に当たり、私の友人が多額の個人融資を申し出てくださり、設立メンバーや関係者等の協力で、出帆資金の準備はできていましたし、ファクタリングサービスという、高利子ですが、銀行融資を受けられない会社に資金を貸してくれるサービスもあります。これらを組み合わせることによって、何とか資金ショートすることなく事業を継続できる見通しは付いていました。

とはいえ、個人の融資や高い利率のファクタリングにずっと頼り切ることがあまり望ましくないことは確かですし、個人的な融資は諸事情でできなくなることもあり、安定性にも欠けます。また、資金面で自転車操業の状態が続くと事業の拡大も図れず、支援を求める全ての人に遍くケアサービスを行き渡らせるという、当社のミッションの実現も遠のきます。

やはり基盤の強化は必要だという事で、金融機関出身で、現在は当社の最高財務責任者であり、出帆に際して多大な貢献をしてくれた吉田政弘とともに、銀行へ相談に回ることとなりました。

おかやま信用金庫、真鍋氏との出会い

基本的に会社というものは、設立してから3年経たないと金融機関からの融資は受けられません。ですので、真っ先に出向いた地元の銀行には当たり前のように断られました。その他、複数の金融機関に行きましたが、ほぼ門前払いです。

当社は、前会社との間に法的紛争にはしないという共同基本合意書を交わしていたものの、銀行側としては訴訟リスクのある会社への融資は安全性の面で懸念もあり、その上、当社は不動産など担保になる資産も持っていないことから、銀行からの融資の可能性が極めて低かったのは事実です。

それもあり、創業融資を行っている政府系の金融機関、日本政策金融公庫の岡山支店に出向いたんですが、その後、すぐ近くにある「おかやま信用金庫」にも一応足を運んでみたんです。話だけでも聞いてもらいたいと。

そこで対応してくださったのが、当時、本店営業部の主任だった真鍋智也氏です。上司と2人で、私がとつとつと語る話に熱心に耳を傾けてくれました。スピンアウトの経緯、なぜそうせざるを得なかったか、我々の事業のもつ使命。私自身のバックグラウンドも含めて語る中で、真鍋氏は真摯にそれを受け止め、感動すらしてくださいました。そして、「すごい志を感じた」と。「ぜひ御社の力になりたい」と、検討を約束してくださったんです。

もちろん課題はありました。当社は岡山県井原市に本社を置いていますが、信用金庫は地域限定のサービスであり、井原は対象外だったこと。法的リスクやスタートアップ企業でもあり、先方の条件を満たしていなかったこと。けれど、それを超えて真鍋氏は上司と相談し、なんとか融資を実現させるよう努力すると言ってくれたんですね。

吉田は心底驚いていましたね。こんなことは、通常あり得ないと。私も驚きましたが、彼の驚きとは別なもので、それまで私は金融機関というのは利益の多寡が判断基準であり、理念や社会性、ビジョンを理由に融資を検討するとは思っていなかったんです。金融機関の価値観が、自分が思っていたものと違っていたことに感じ入りましたね。

そして、真鍋氏と上長の方はすぐさま動いてくれました。融資の対象となるよう、当社の第二支店を岡山市内に作るべく、自ら物件を探してくださると同時に、協調融資に向けて、岡山にある他の金融機関に積極的に働きかけてくださいました。すると、お宅がするならうちも、という形で、トマト銀行、三井住友銀行、広島銀行が協調融資に乗り出してくれたんです。

スタートアップ企業にもかかわらず、当初より4行が融資に入るという、きわめて例外的で、奇跡的なことが起きたんです。

真鍋氏への感謝を込めて

事業が2020年11月に稼働し、翌年1月にはボーナスを支給することもできました。今回のスピンアウトは危機的状況下で起こったものであり、経営層には納得のいくものでも、現場の方から見れば、よく分からないことに巻き込まれた感が否めなかったと思います。それでも新会社で働くことにそれぞれが決断を下してくれました。その想いに、せめてもの感謝を届けるつもりで、そして失敗したと思われない環境を作りたいという願いもあり、三井住友銀行に賞与融資をしていただきました。こうした、いわばあり得ないことが創業以来、次から次へと起こりましたが、その発端を作ってくれたのが真鍋氏です。

真鍋氏が我々の話を真摯に聴いて受け止め、協力してくださったことが出発点だった。彼なくして今の我々はありません。出帆時の約500名のクライアントと約700名のスタッフの生活が守られたのも彼のおかげです。とりわけ医療的ケアの継続は生死にかかわる問題であり、クライアントとご家族においては、命の恩人と言っても過言ではありません。

設立以来のスピーディーな事業拡大も、真鍋氏の協力なくしては可能性すらなく、地域で生きたいのに生きられないという機会損失を、未来のクライアントが被ることもなくなりました。こうしたことから、真鍋氏には深く感謝したいと思っております。

ファーストペンギンという言葉があるように、最初の1羽が水の中に飛び込んで、初めて他のペンギンたちが後に続きます。ただ、先陣を切るのはリスクを引き受けることでもあります。彼が当社に融資の決断を下したのが、リスクがゼロだったとは思えない。そうした中で融資いただけたのは本当にありがたいことですし、そういう方が多くいるから、この社会全体が成り立っているとも感じます。

リスクを取る、取らないというのは運命の分かれ道です。やはり、リスクを取れる人が活躍するのが社会であり、真鍋氏には深く感謝するとともに、今後もますますご活躍されることを信じ、ご多幸をお祈りしています。

◉会社概要
会社名  :株式会社土屋
URL    :https://tcy.co.jp/
所在地  :岡山県井原市井原町192-2 久安セントラルビル2F
代表取締役:高浜 敏之
設立   :2020年8月
事業内容 :障害福祉サービス事業及び地域生活支援事業、介護保険法に基づく居宅サービス事業、講演会及び講習会等の企画・開催及び運営事業、研修事業、訪問看護事業

◉代表プロフィール

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高浜 敏之
1972年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学文学部哲学科卒。大学卒業後、介護福祉社会運動の世界へ。自立障害者の介助者、障害者運動、ホームレス支援活動を経て、介護系ベンチャー企業の立ち上げに参加。デイサービスの管理者、事業統括、新規事業の企画立案、エリア開発などを経験。2020年8月に㈱会社土屋を起業。代表取締役兼CEOに就任。2023年1月には、重度障害者を24時間在宅で支援する重度訪問介護事業所「ホームケア土屋」を全国47都道府県に広げる。ALSなどの難病や重度の障害があっても、望む地域で望む人と安心して暮らせる社会の実現を目指し、日々奔走している。

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