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アグネス・チャンさん | 政府・企業・個人それぞれが責任を理解し行動できる社会へ

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
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20年以上にわたって日本ユニセフ協会の大使として、世界各国の助けを必要とする子供たちを支援し、守るための活動をしてきたアグネス・チャンさん。

第1弾では、アグネスさんの原点や、活動への思いを伺いました。第2弾となる今回は、実際にSDGsや社会課題に取り組むためにすべきことや、そのための心持ちについてお話しいただきました。

子供たちの権利が守られていないのは、私たちの責任

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アグネス・チャンさん(撮影:加藤)
――

企業もSDGsやサステナビリティに注力しなければならないというのがトレンドになってきていますが、この流れをどう見ていらっしゃいますか?

アグネス

素晴らしいと思います。私たちの活動も必要ですが、それと共に政府の協力や企業の応援がないとなかなか社会は変わらないですから。

日本ユニセフ協会(以下、協会)の言葉ですごく印象的だったのが「私たちはお涙頂戴で募金を集めない」というものです。

「私たちは子供が可愛いから、そして子供の権利が守られてないから活動しています。彼らが守られてないのは誰の責任ですか?私たちの責任です。」と言われてハッとしました。

つまり、自分の責任を果たすためにすることなので、可哀想でしょ?というお涙頂戴で活動するのは絶対やめてください、ということなんですね。

ずっとそれを胸に活動しています。良くするのも悪くするのも私たちですから、みんな貢献できるし、みんなに責任があるのです。

だから企業が参画することや、政府の意識が高まっていることは、ものすごく歓迎しますし良心のある行動だと思います。

社会意識や環境問題への関心、子供の権利が守られていないことへの怒りといった情熱は世の中を変えていきます。

そういった、自分の中の美しい部分や、人を愛する、力になりたいという気持ちに気づかせるというのは私の仕事だと思います。

企業はSDGsに取組むべき

――

まだ取り込んでいない企業は、何から始めるべきだと考えますか?

アグネス

まずはSDGsなどの社会の目標を理解することから始めると良いと思います。そうすると、特に関係がありそうなものが出てきますから。

もちろんいろいろな制限がありますし、会社は1人でやっているわけではありませんから、まずはその内容を会社の人達みんなに共有してわかってもらうことが大切だと思います。

すぐやるとかすぐ計画を立てるとかそういうことではなく、「このことを覚えておこう」と頭や心の中に”指定席”を作っておくんです。

そうするとチャンスがやってきたときに必ず気がつきます。機械を変えるならこっちの方がサステナブルなんじゃないかとか、どっちみち税金になるから寄付しちゃおう、みたいに。

この指定席があれば必ずいつか「今、近づいてるかもしれない」と気づくときがあります。だから一番大切な最初の行動は、指定席を作って自分の問題として受け入れることです。

――

サステナブルな世界になるためには、そのための取り組みをアップデートしながら続けていかなければならないと思いますが、続けるために必要なことはどんなことでしょうか。

アグネス

面白がってやることだと思います。プレッシャーになるとやめたくなるし、誰かがやるんじゃないかと思ってしまいますから。

子育てと一緒です。子供の好奇心を引き出すことを考えて、面白そうだったら向こうから来るし、一緒にやる時も楽しいし。指導者たちがその心構えだときっと長く続けられると思うんです。

うちの会社だったら何ができるだろう、どうやったら面白くなるだろう、どうやったら社員は喜ぶだろう、と考えることだと思います。

もちろん何の活動をするにしても人力か財力が必要だと思います。

だから自分1人でやるというのは絶対限界がありますし、同じ目標を持っている仲間は団結力が強くなるというコミュニケーション論もありますから、いろいろな人を巻き込んで一緒にやっていくことも長く続けるポイントだと思います。

みんなで取り組めば、誰か1人が息切れしてもほかの人が助けられますから。

周りの人を透明にせず、幸せの種まきを

アグネスさんの3人の子供は全員、米スタンフォード大学に進学している
――

目標を理解して、自分でも何かしたいと思ったときはどんなことから始めたら良いですか?

アグネス

全ての行動において一番大切なのはリサーチだと思います。知識ですね。知識がなくて選択肢が分からないと良い選択ができません。それに、選択を間違えると嫌になっちゃうんですよね。

だから、何かやりたいけど何をしたらいいのか分からないときは、とにかくリサーチや足を運んでみることです。

今はChatGPTみたいなAIもあるので、「これに興味があって、これが得意で、時間がこれくらい使える場合はどの活動がいいですか?」みたいにうまく活用してみるのも良いと思います。

もし社会貢献活動に興味があれば、ぜひユニセフハウスにも行ってみてほしいです。展示や資料が一杯あって、NGOの紹介などもできます。

ここまでは本気でやろうと思ってる人へのアドバイスですが、何でもいいからちょっと貢献したい人は、純粋に募金をするでもいいですし、そうでなければ応援メッセージを何かの団体に送るのでもいいと思います。

すごく励みになりますから。特に若いスタッフはすごく励まされます。それでもいいんです。誰かのためになっているんです。

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会ったその人の心の中にどういう愛の種と幸せの種をまこうか考えなさい、と子供には教えてきました
――

必ずしもお金を払うといったことでなく、身近なことから始められるのですね。

アグネス

「全ての出会いを大事にしなさい」と私は自分の子供によく言ってきました。

私たちは生活の中で、例えば電車に乗ったら周りを全部透明にして自分の世界に入ったり、トイレに入って掃除をしている人がいても気が付かないふりをしたりしてしまいがちです。

そうではなく、いつもマインドフルに、自分に何ができるかを考えてほしいのです。

それはすぐに人助けをすることではなくて、トイレを掃除している人がいれば「お疲れ様です。今日は暑いですね。」と声をかけるみたいに、その人がいないように振舞わないということです。

そういうことからスタートなのではないかと思います。アフリカに行ってすぐに子供を救うのではなく、そういったことからスタートしたら自然と力が湧いてきます。

そうすると、いつの間にか仲間も増えたり、自分がやりたいことが見えてくると思います。

――

私たち全員に責任があることを自覚して、何かちょっとしたことでも誰かが喜んでくれることを一人一人積み重ねていけたら良いですね。

アグネス

一人一人に責任があることを知ってもらえるよう、私たちもインターネットで広めたり、安い時間のテレビCMで広告を打ったり、必死にいろいろやっているところでもあります。

ほかにも、会った人とときどき社会問題について話したり、何かの媒体で書いたりもしていますが、こういうことを地道に続けるしかないですよね。

種をまこうと思っても、路上で枯れてしまうものの方が多いですから、諦めないで広め続けるしかないです。だから私はこれからも広め続けていきます。

取材の感想

安藤憧果

ライター

第2弾では、実際にSDGsや社会課題に取り組むためにすべきことや、そのための心持ちについてお話しいただきました。

SDGs等の取り組みは持続可能な世界にするため、そしてその結果が巡り巡って結局自分や自分の大切な人の生活にも返ってくるから取組むのだと思っていました。

しかしアグネスさんの話を聞いていて、その思いの原点にある、人や生き物、環境を思いやる心に気づいたように感じます。

私自身も含めこの社会で生きる皆が、何かを大切に思うその心を、形を変えることがあったとしても忘れないでいてほしいと思います。

◎プロフィール
アグネス・チャン
ユニセフ・アジア親善大使/歌手/エッセイスト/教育学博士。香港生まれ。1972年に「ひなげしの花」で日本で歌手デビュー。1998年に日本ユニセフ協会大使に就任し、以来、タイ、スーダン、東西ティモール、フィリピン、カンボジア、イラク、モルドバ共和国と視察を続け、その現状を広くマスコミにアピールする。2016年にユニセフ本部より「ユニセフ・アジア親善大使」に任命され、就任。現在は芸能活動だけでなく、エッセイスト、大学教授、ユニセフ・アジア親善大使、日本対がん協会「ほほえみ大使」など、知性派タレント、文化人として世界を舞台に幅広く活躍している。

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ライター:

フリーライター。昔から感想文や小論文を書くのが好きで、今なお「書くこと」はどれだけしても苦にならない。人と話すのが好きなことから、取材記事の執筆が主軸となっている。新潟県で田んぼに囲まれて育った原体験から、田舎や地方への興味があり、目標は「全国各地で書く仕事をする」こと。

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