ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

株式会社 日比谷花壇

https://hibiya.co.jp/

〒106-8587 東京都港区南麻布1-6-30

03-3501-8783

脱炭素・資源循環・生物多様性。株式会社日比谷花壇が描く花き産業の未来

サステナブルな取り組み SDGsの取り組み
ステークホルダーVOICE 地球環境
リンクをコピー
株式会社日比谷花壇 サステナビリティ推進室長 松本庸
株式会社日比谷花壇 サステナビリティ推進室長 松本庸氏(提供:株式会社日比谷花壇)

一輪の花が店先に並ぶまでに、どれだけの環境負荷が生じているのか。ふだん意識されにくいこの問いに、株式会社日比谷花壇が向き合っている。花き産業は土地や水、気候といった自然資本に支えられながら、温室栽培のエネルギーや資材の廃棄など、無視できない負荷も抱える。

1872年創業の同社は、2026年に花き業界初の環境省「エコ・ファースト企業」となり、業界全体を巻き込んだ脱炭素へと動き出している。

 

花の企業が掲げた、環境への約束

株式会社日比谷花壇は、1872年の創業から150年を超える歴史を持つ、花と緑の企業である。1950年に東京・日比谷公園への本店出店を機に会社を設立し、現在は全国に約190拠点を展開する。手がける領域は幅広い。ウエディングの装花、店舗やオンラインでのフラワーギフト、葬儀に関わるサービス、さらには緑を通じた景観のプロデュースや地域のまちづくりまでを含む。花の販売にとどまらない、暮らしの景観を扱う会社だといえる。

その日比谷花壇が、環境への取り組みで一つの節目を迎えた。2026年1月、花き業界として初めて、環境省の「エコ・ファースト企業」に認定されたのである。エコ・ファースト制度は、企業が環境保全に関する取り組みを環境大臣に約束し、その先進性を認定するものだ。同社は「エコ・ファーストの約束」として、2050年のネットゼロ達成や、生花の国産シェア80%といった目標を掲げた。

同社は、こうした環境への対応を、企業の社会的責任(CSR)の一部にとどまるものとは捉えていない。花き産業は自然資本に依存して成り立つ以上、環境への配慮は事業の持続性そのものに関わる、という位置づけである。自社の取り組みを示すだけでなく、業界全体の課題に目が向けられるきっかけをつくること。同社はそこに、業界の一社としての役割を見ている。

 

一輪が届くまでに、生じる負荷

花き産業は、土地や水、気候、生態系といった自然資本に深く依存して成り立っている。だが、その恵みを受け取る過程で、いくつもの環境負荷も生じている。日比谷花壇は、花が生産者から店頭へ、そして消費者のもとへ届くまでの各段階に、どのような負荷があるのかを整理している。

一つは、生産段階のエネルギーだ。品質を保つために欠かせない温室栽培は、化石燃料への依存が大きく、脱炭素に向けた課題となっている。次に、資材の問題がある。花を包むOPPフィルムや、アレンジメントに使う吸水スポンジなど、石油由来の資材が使われ、その廃棄も生じる。これらを減らすには、素材を置き換えるだけでなく、デザインや物流、販売方法まで含めた見直しが要る、と同社は捉えている。加えて、気候変動の影響もある。温暖化による開花時期の乱れや、台風などの気象災害は、切り花の日持ちや出荷の時期に影響し、供給の不安定さにつながっている。

そしてもう一つが、フラワーロス、つまり花の廃棄である。ここで同社は、慎重な姿勢を示している。ネット上では「年間10億本廃棄、1500億円の損失」といった数字が広まっているが、その根拠は不確かだというのだ。だからこそ、誇張された数字に頼るのではなく、生産から販売までの各工程で実態を正確に把握し、改善を積み重ねることが重要だとする。花き業界の環境課題を語るうえで、まず数字の確からしさから問い直す姿勢がうかがえる。

株式会社日比谷花壇 ユリの花
環境負荷を低減する高機能バイオ炭「宙炭」を導入する産地のユリ
 

脱炭素・資源循環・生物多様性、三つの軸

日比谷花壇は、環境への取り組みを、国が示す三つの軸に沿って整理している。カーボンニュートラル(脱炭素)、サーキュラーエコノミー(資源循環)、ネイチャーポジティブ(生物多様性)の三つである。

脱炭素では、2035年にCO₂排出量を50%削減し、2050年にカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げる。その実現に向けて、生花の環境配慮型生産について四つの基準を定めた。国際認証であるMPS認証や、鮮度を保つリレーフレッシュネス認証、露地栽培品、有機・減農薬栽培品という区分で、環境に配慮した花を見極める枠組みである。自社の排出だけでなく、サプライチェーン全体を対象とするScope3の排出量まで見える化と削減の対象としている。

資源循環では、花の美しさや品質を保ちながら廃棄物を減らす商品開発を進めている。代表例が、吸水スポンジを使わない花祭壇「SusBase(サスベース)」だ。従来のアレンジメントに欠かせなかった石油由来の資材を使わずに、花を飾る方法を探る試みである。あわせて、100%紙素材のラッピングの導入なども進めている。

生物多様性では、全国1200カ所以上の公園や施設の管理を通じて、地域社会と連携しながら保全活動や環境教育に取り組んでいる。花や緑を扱う企業として持つ現場と社会の接点を、生態系を守る活動へとつなげている。

 

一社の取り組みを、業界全体へ

環境負荷は、花き産業のサプライチェーン全体にまたがって生じる。だとすれば、一社だけが努力しても解決には届かない。生産、流通、小売が一体となって取り組む必要がある。日比谷花壇は、この考えのもとで外部との連携を広げている。

その一つが、花き産業の国際認証を扱うMPSジャパンとの連携だ。2025年7月、同社は小売事業者として業界で初めて、MPSジャパンと包括的な協定を結んだ。環境に配慮した花の調達を広げるとともに、生産者が認証を取得できるよう支援する狙いがある。ここで用いられる国際認証「MPS-ABC」は、取得して終わりではなく、農薬や肥料、エネルギー、水の使用状況を日々記録し、評価と改善を続けていく仕組みだという。認証を一度きりの資格ではなく、運用の信頼性を育てるプロセスとして扱う点に特徴がある。

業界横断の動きにも関わっている。生産・流通・小売が一体となって環境に取り組む「well-blooming project」では、同社社長の宮島浩彰氏が、一般社団法人花の国日本協議会の環境部会長として旗振り役を担っている。世界の花きを社会・環境に責任ある形で生産・流通させるという国際的な目標が掲げられるなか、日本の業界全体としての対応も課題になっている。

花や緑の販売、装飾にとどまらず、暮らしの景観そのものを扱う会社として、日比谷花壇は環境への取り組みを事業の土台に据えようとしている。自社の削減を示すだけでなく、業界全体を巻き込みながら、花き産業の持続可能性をどう高めていくか。同社の挑戦は、その問いに答えを出そうとする段階にある。

Tags

ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

関連記事

タグ

To Top