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ESG評価は企業価値向上の好機!非財務情報の収集・開示の先にある本質とは?

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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非財務情報の開示の重要度は年々増す一方で、ESG評価は過渡期にあり、指標のばらつきも大きい。そんな中、大日本印刷株式会社(以下「DNP社」)は、ESG対応を企業価値向上の好機と捉え、シェルパ・アンド・カンパニー株式会社(以下「シェルパ社」)のESG情報開示支援クラウド『SmartESG(スマート イーエスジー)』を活用しながら、非財務情報の可視化と分析を積極的に進めている。

部門を横断するESG経営に取り組むDNP社のIR・広報本部 若林尚樹 本部長、IR・広報本部 平川孝 リーダー、サステナビリティ推進委員会事務局 別府直之 局長、サステナビリティ推進委員会事務局 鈴木由香 副局長、マーケティング本部 もたい五郎と、シェルパ社の杉本淳 代表取締役CEOに、サステナビリティ推進の現況と課題、情報開示支援ツールの導入による変化、そして今後の展望を伺った。

ESG評価を俯瞰で見ると、自社の弱点が見えてくる。

―まずは、サステナビリティ推進の現況について聞かせてください。

鈴木

非財務情報の開示に関する要求事項の範囲は、年々拡大しています。ESGの取り組みを加速しなければ、サプライチェーンから外されるビジネスリスクもはらんでいます。しかしながら、いまだ明確な評価基準が定まっていないところに、サステナビリティ推進の難しさがあります。

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DNP社 サステナビリティ推進委員会事務局 鈴木由香 副局長(画像提供:DNP)
若林

毎年、様々なESG評価機関による膨大な数のアンケート調査があります。その全てに対応するわけにはいかないので、その評価結果を見る人は誰か、どれくらいの重要度があるかを見極める必要があります。また、E・S・Gを俯瞰して見ることも大切です。

評価結果を部門横断的に見ると、自社の弱点も見えてきますし、サステナビリティ推進を企業価値向上につなげられます。

当社では、ESG評価を企業価値向上に活かすべく、2022年4月に組織構成を刷新し、サステナビリティ推進委員会事務局を立ち上げました。
これは事業活動全体をサステナビリティの視点から俯瞰する基本組織で、現在は8人ほどのメンバーで構成されています。
その下部組織には、兼務も含めると本社の基本組織長が所属しています。

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DNP社 DNP社のIR・広報本部 若林尚樹 本部長(画像提供:DNP)
平川

評価機関によって評価のポイントは異なりますし、全ての評価を上げようとすると目的を見失ってしまいます。そこで当社では、評価機関から提示される調査項目から「今世の中に求められている活動はどういうものか」を見極めます。
そのうえで、できていること、できないことを洗い出し、当社が到達可能な最高得点を目指します。

「誰に響くか」を考える視点も大切です。例えば、株主というステークホルダーを念頭におくとFTSE(フッツィー)やDow Jones(ダウ・ジョーンズ)といったグローバル機関による評価が重要視されますが、国内のクライアントを念頭におくと、経済産業省によるなでしこ銘柄やDX銘柄が商談中に話題になることもあります。

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DNP社 平川リーダー(左)と若林本部長(右)(画像提供:DNP)

相対評価、基準のブレ、定量化、時間軸……非財務情報可視化の難しさ

―評価機関による調査に全方位的に対応するというよりは、取捨選択しながら活用するということですね。では、非財務情報の可視化にあたり、具体的にどのような点に課題を感じていますか?

若林

非財務情報は相対評価なので、昨年と同じことをしていても点数が下がることがあります。基準そのものが突然上がることもありますし、自社でコントロールできる範囲は限定的です。

鈴木

ESGのS(社会)に関する項目は定量化が特に難しいうえ、見る人によって評価のブレも大きい分野です。これをどう定量化し、いかに自社の価値創造に結び付けるかも課題です。GHGなどは定量化しやすい項目ですが、それでもやはり、自社のおかれた事業環境を除外してCO2排出量だけで判断されてしまうという点では難しさを感じています。

また、ESGの取り組みは結果が出るまで時間がかかるうえ、やらないデメリットを明示しにくい。

一方で、遅れをとると多大なリスクにつながります。時間軸の長さとリスク分析の難しさゆえに、「いまやらなければ」という経営判断を導きにくいことも課題といえます。

別府

とはいえ、世の中から求められるESGのレベルは年々高度化しています。「どう対応するか」にとどまらず、「この数値目標を達成したらどんなストーリーを描けるか」まで見据えておくことが重要です。 

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DNP社 サステナビリティ推進委員会事務局 別府直之 局長(画像提供:DNP)

―なるほど。そのような課題を前に、DNP社はシェルパ社のESG情報開示支援クラウド「SmartESG」を導入されました。改めて、サービス内容や機能について教えてください。

杉本

SmartESGは、社内における非財務情報の収集やデータ分析を、1つのプラットフォーム上で管理できるデータベースです。
社内の各部署は、評価機関からの調査にプラットフォーム上で直接回答できます。
それを管理するサステナビリティ部署では、効果的にデータの収集・管理ができるようになっています。

また、他社の開示データやESGスコアをAIで自動収集・分析できる機能も特徴です。
他社との比較の視点を入れることで、開示すべき事項や改善点が明確化され、高度なESG経営につなげられます。

これまでサステナビリティ担当者の負担となっていた情報開示の工程を大幅に削減し、効果的なサステナビリティ推進によって中長期的な企業価値の向上を支援します。

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シェルパ社の杉本淳 代表取締役CEO(画像提供:シェルパ社)

―DNP社がSmartESGを導入されたきっかけは何だったのですか? 

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当社がお付き合いしているベンチャーキャピタルより、「シェルパ社が面白いプロダクトを開発しているので、DNPとしての意見を聞かせてもらえないか」ということで、2021年12月にご紹介いただきました。

翌年1月以降には、鈴木、平川の部門も交えてディスカッションが始まったという経緯です。

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DNP社 マーケティング本部 もたい五郎さん(画像提供:DNP)
若林

時を同じくして、私と平川は、冒頭で申し上げた課題感のもと、部門間に横串を通す新チームを立ち上げようとしていました。サステナビリティ推進を俯瞰で見て、企業価値の向上につなげるためのチームです。

当初はメールなどを使って手作業で業務をおこなっていましたが、SmartESGを知って「これを使えば業務の効率化ができるし、データを整理・分析して次に活かせる」と感じました。

我々の取り組みと完全にマッチしていたわけです。

非財務情報の可視化と一元化で、サステナビリティ推進が「自分ごと」に

―実際に導入されて、いかがでしたか?

若林

何よりまず、業務効率化が達成できたことが大きいです。

例えば、従来だとメールでA部門、B部門、C部門に同じ質問を送り、各部門から回答を得て、我々がこれを1つにまとめて回答していました。SmartESGを導入してからは、A、B、Cの3部門がお互いの回答を共有できるので、主管となる部門Aが回答を作り、BとCがプラットフォーム上で確認、問題がなければそのまま提出、というフローで回答できるようになりました。

鈴木

これまでは、部門によって回答の仕方が違っていたり、粒度にばらつきがあったりと、回答のとりまとめに苦労していました。これをプラットフォーム上で共有できるようになったことで、各部門での回答もしやすくなり、テレワーク中の相手に「このURLからチェックしてください」と依頼することも可能になりました。

若林

システム導入を機に、各部門が非財務情報の開示やサステナビリティ推進をより「自分ごと」として捉えられるようになったことも、成果のひとつです。

以前はやはり、調査回答を「本業ではない」と片手間に捉えているところがありましたが、システムで「見える化」することで、「サステナビリティ推進が企業価値向上に寄与している」と全社に伝わりやすくなりました。これは、翌年の調査に向けて各部署が改善点を主体的に考えることにもつながります。

―サステナビリティ推進に対する意識を全社で共有する一助となったのですね。今回は、プロダクトに改良を加えながら開発を進めていくアジャイル開発の手法を採用されたそうですが、どのような改良点がありましたか?

平川

1つは、10以上の部署から多岐にわたる回答が集まるため、その集約工程を円滑化することが課題でした。また、英語で回答とエビデンスを求められるグローバル評価機関の調査に対応できるよう、翻訳機能を強化していただきました。

杉本

グローバル評価機関の調査は、英語で質問が届き、質問数も多い傾向にあります。各部署に回答してもらうためにこれを日本語に翻訳し、上がってきた回答をまた英語に翻訳しなければなりません。当初想定していたよりも翻訳機能を充実させる必要性を痛感しました。開発を進めながらDNP社よりご意見をいただいたことで、プロダクトの完成度を高められたと思っています。

平川

気づきを言い合ってシステムの完成度を高めていくアジャイル開発は、新鮮な体験でした。ESG、非財務情報の可視化といった事柄そのものが、ある意味アジャイル的な側面を持っています。これを支援するSmartESGというシステムも、逐次バージョンアップしていくだろうと期待しています。

「自社はどうありたいか」非財務情報の収集・開示の先にあるストーリー発信。

―今後の展開についても聞かせてください。

杉本

第1ステップ「業務効率化」で一定の成果が得られましたので、今後は第2ステップ「データ分析」に進みます。まさにDNP社が目指しておられる「非財務情報を企業価値向上につなげる」ための重要なステップです。

若林

AIを使ったデータ分析がシェルパ社の強みの1つだと認識していますので、データの蓄積から一歩進んでツールを大いに役立てたいところです。

杉本

まさに、ESG評価に関する専門性と高い技術力が、当社の強みです。

ESGの知見が豊富なメンバーとAIエンジニアのナレッジを土台に、DNP社をはじめとするユーザー様のご要望を反映しながら、より良い分析ができるプロダクトを目指しています。

―それでは最後に、DNP社の皆様から企業のサステナビリティ担当の方々に向けてメッセージをお願いします。

若林

2021年にサステナビリティ推進を俯瞰するチームを作った背景には、外部機関からの評価結果に一喜一憂して終わることへの問題意識がありました。
ESG対応を進めるうちに、例えば「労務で指摘されたことをD&Iでも改善すれば、D&Iの点数も上がる」といったことが分かってきました。
評価結果を俯瞰して見ることで、企業価値を上げ、ビジネスに活用できるのです。

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DNP社 別府局長(左)と鈴木副局長(右)(画像提供:DNP)
鈴木

最近の調査では、積極的な情報開示だけでなく、「それが何につながっているのか」を問う質問が増えています。単なる情報開示から、「それによって自社はどうありたいのか」を示すストーリーの発信へと、目線を移すときが来ているかもしれません。
そのための第一歩として、効率的な情報収集と全社の動きをとりまとめる一元化が必要なのだと思います。

別府

ESG経営でやるべきことは多岐にわたりますし、企業によって組織形態も対応する内容も異なります。
いろいろと方法はあると思いますが、他社の方々とも意見や情報を交わしながら、グローバル基準に則った情報開示・発信を行っていきたいものです。

若林

システム導入を経て、当社がお伝えできる事柄も増えてきました。

ぜひ、サステナビリティ担当の方々のお悩みも共有いただければと思います。

―企業の垣根を超えて、サステナビリティ推進が成熟化することを期待しています。本日は、ありがとうございました。

◉プロフィール
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杉本 淳(すぎもと じゅん)
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO
慶応義塾大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で国内外の大型M&A・資金調達案件や、IR・コーポレートガバナンス周りでのアドバイザリー業務に従事。2019年9月にシェルパ・アンド・カンパニーを創業。

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ライター:

1985年生まれ。米国の大学で政治哲学を学び、帰国後大学院で法律を学ぶ。裁判所勤務を経て酒類担当記者に転身。酒蔵や醸造機器メーカーの現場取材、トップインタビューの機会に恵まれる。老舗企業の取り組みや地域貢献、製造業における女性活躍の現状について知り、気候危機、ジェンダー、地方の活力創出といった分野への関心を深める。企業の「想い」と人の「語り」の発信が、よりよい社会の推進力になると信じて、執筆を続けている。

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