
米テキサス州連邦地裁の陪審が16日、同社に対し米衛星通信会社ビアサットのフラッシュメモリ関連特許侵害を認め、2億2900万ドル(約371億円)の賠償支払いを命じる評決を下したことが要因だ。
キオクシア株価のストップ安と市場への影響
17日の東京株式市場でキオクシアホールディングス(東証プライム、コード285A)の株価は寄り付き直後から急落した。
前日終値の約6万2110円から一時16.1パーセント安の5万2110円まで下げ、ストップ安を付けた。
出来高も急増し、市場の注目を集めた。6月には上場来高値の約11万2700円を記録し、時価総額で日本企業上位に浮上していた同社株だったが今回の下落で時価総額が30兆円を割り込み、最高値から半値以下となった。
ボラティリティの激しさも目立ち、AI関連需要の期待で急騰した反動に加え、今回の特許関連のネガティブ材料が売り圧力を強めた形だ。
日経平均株価も軟調で、半導体セクター全体に売りが広がった影響も指摘されている。
米陪審による特許侵害賠償命令
米テキサス州ウェーコの連邦地裁陪審は16日、キオクシアがビアサットの保有する米国特許第8615700号を侵害したと判断した。
この特許はフラッシュメモリ製品の消費電力低減や信頼性向上、寿命改善に関する技術を対象としている。
陪審はキオクシアのフラッシュメモリ製品が同特許技術と同様の仕組みで動作する誤り訂正技術を備えていると認定。賠償額は2億2900万ドルで、2026年3月30日までの過去侵害分をカバーする継続ロイヤリティ形式とされる。
ロイター通信によると、両社の広報担当者は評決に関するコメントを控えている。
キオクシア側は侵害を否定し、特許の無効性を主張していたが、陪審はこれを退けた。
ビアサットは衛星通信向けに開発した技術をフラッシュメモリに応用したと主張している。
控訴の可能性とキオクシア側の法的戦略
陪審評決後、キオクシアは地裁段階で判決変更請求や新審理請求を行う可能性が高い。
これらが却下された場合、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)への控訴が予想される。
CAFCは特許訴訟の控訴を専門に扱う裁判所だ。控訴の強みとして、同特許をめぐる過去の当事者系レビュー(IPR)で一部クレームが無効化され、CAFCもこれを支持した経緯がある点が挙げられる。
損害額の算定根拠や請求項解釈を争う余地もある。半導体業界の特許訴訟では控訴により減額や和解に至るケースが少なくない。
一方、弱みとしては陪審の事実認定(侵害の有無)が尊重されやすい点がある。
CAFCの統計では地裁判決の肯定率は約70パーセント前後で、損害額がそのまま維持される割合は約3分の1程度とされる。
完全な逆転はハードルが高いものの、部分的な修正の可能性は残る。
株主や投資家たちの反応と市場心理
今回の急落を受け、個人投資家を中心に失望の声が広がっている。
6月の急騰局面で新規参入した層が多く、「最高値から半値」「落ちるナイフを掴んだ」といった表現で短期的な損失を嘆く投稿が目立つ。
X(旧ツイッター)などのSNSでは「放置」「様子見」といった慎重な意見も散見される。
一方で、時価総額約28兆から30兆円規模に対し330億円程度の賠償額は相対的に小さいとの指摘もある。
長期保有の機関投資家や大株主にとってはファンダメンタルズへの影響は限定的とみる声もあるが、ボラティリティの激しさに対する警戒感が強まっているのは確かだ。
市場全体のAI関連調整の流れも重なって、短期的な売りムードが支配的だ。
今後の見通しと市場の展開
控訴審の結果が出るまでには1年から2年程度かかるとみられる。
地裁での和解交渉が並行して進む可能性もあり、最終的な支払い額が減額されるシナリオも想定される。
キオクシアの事業基盤であるNANDフラッシュメモリ需要はAIデータセンター向けに堅調とされ、業績への直接的な打撃は現時点で限定的との見方が多い。
市場では今回の件が同社の競争力を根本的に損なうものではないとの分析もある。
半導体セクターの需給状況やAI需要の動向が今後の株価を左右する要因として注目されている。
ボラティリティの激しい銘柄特性を踏まえ、市場全体の動きにも注意が必要だ。



