
2025年4月、広島県府中町の水分峡森林公園で、東京都の男性(52)が暴行を受けて死亡し、現金8万円余り入りの財布が奪われた。テレビ新広島(TSS)によると、事件当時18歳だった徳永孝志被告は6月22日の初公判で、強盗致死罪の起訴内容を認めた。犯行は、交際相手の「パパ活」相手だった男性を公園に呼び出す形で計画されたとされる。徳永被告の判決は7月3日に予定されており、改正少年法のもとで刑事処分と保護処分のどちらが相当かが争われている。
交際相手の「パパ活」を利用した犯行計画
テレビ新広島(TSS)の報道によると、検察側の冒頭陳述などで明らかにされた事件の構図はこうだ。犯行を計画したのは当時16歳の少年。交際していた当時18歳の女の「パパ活」相手だった被害男性から金を奪おうと考え、女に男性を公園へ呼び出すよう指示した。さらに「けんかが強い」ことを理由に、親しい友人だった当時18歳の徳永孝志被告を報酬の支払いを条件に計画に誘った。
2025年4月の深夜、女に誘導されて公園に現れた男性に少年らが因縁をつけ、応じない男性に殴る蹴るの暴行を加え、木の棒で頭を殴るなどして殺害。現金8万円余りの入った財布を奪って逃走した。徳永被告は少年から報酬として3万円を受け取り、カラオケ代や飲食代に使ったと指摘されている。広島地検は、当時16歳の少年を強盗殺人罪、徳永被告を強盗致死罪で起訴し、当時18歳の女は恐喝の疑いで家裁送致され保護処分となった。
検察「刑事処分が相当」、弁護側「保護処分による育て直しを」
6月22日の初公判で徳永被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。争点は事実関係ではなく、処遇である。検察側は「犯行は重大かつ悪質で、保護処分とする特段の事情はなく刑事処分が相当」と主張。一方、弁護側は、幼少期に両親の殴り合いのけんかを目撃するなど育った環境による「心理的なぜい弱性」が犯行につながったとして、再犯防止のための「育て直し」、すなわち保護処分が相当だと訴えた。
6月30日の公判では、被告が遺族に宛てた謝罪の手紙が弁護人により代読された。「本当に申し訳ございませんでした」と結ばれた手紙について、被告は「直接謝罪する機会がなく、どうしても書きたいと思った」と述べたという(テレビ朝日系・ANN報道)。強盗致死罪の法定刑は死刑または無期懲役という極めて重いものだが、被告は犯行時少年であるため少年法が適用され、生い立ちや更生可能性が量刑にどう影響するかが焦点となる。判決は7月3日に言い渡され、7月14日からは強盗殺人罪に問われた少年の裁判も始まる予定だ。
「特定少年」の実名報道――2022年改正少年法が変えたもの
本件で注目すべきは、報道機関の対応である。2022年施行の改正少年法により、18歳・19歳の「特定少年」が起訴された場合には実名報道が可能となった。TSSは「結果は重大で社会的影響も大きい」ことなどから実名報道が妥当と総合的に判断したと明示している。厳罰化を求める世論と、少年の更生・社会復帰を重視する少年法の理念との間で、報道機関も個別に重い判断を迫られているのが現状だ。
SNS上の「少年法を廃止せよ」という声の背景には、被害者遺族の無念や、成人であれば死刑・無期もあり得る罪の重さへの素朴な感覚がある。一方で、少年法が保護処分や家庭裁判所の調査を通じて再犯を防ぎ、長期的には社会の安全に資するという専門家の指摘も根強い。本件のように「刑事処分か保護処分か」が正面から争われる裁判の帰結は、その議論に具体的な材料を与えることになる。
もう一つ見過ごせないのは、事件の入り口が「パパ活」だったことだ。金銭を介した出会いは、未成年者の性搾取の温床になると同時に、本件のように利用者側が恐喝や強盗の標的になるリスクもはらむ。匿名性の高い出会いが生む危険は、加害・被害の双方向に及ぶ。徳永被告の判決は7月3日に言い渡される。さらに7月14日からは、強盗殺人罪に問われた当時16歳の少年の裁判も始まる予定で、事件の全容と刑事責任の判断が続いていく。



