
サンドウィッチマンの伊達みきおが脳梗塞で活動を休止してから1週間あまり。9月6日放送の読売テレビ「上沼・高田のクギズケ!」で、上沼恵美子が伊達の多忙ぶりとテレビ業界の体質について踏み込んだ発言をした。ワイドショーが深く扱わない時事ネタを独自の視点で切り込むことで知られる同番組らしく、「使い倒すでしょ」という一言には、長年テレビの現場を見てきた大先輩ならではの実感がにじんだ。
「食べ過ぎやで」に「僕健康ですから」、見過ごされた予兆
伊達みきおは8月28日、公式サイトを通じて脳梗塞のため活動を休止すると発表した。発表文では「当面の間は治療に専念し休養」するとし、現在は入院しながら「担当医と相談しながら活動再開に向けて努める」としている。全国ツアーは中止となり、当面は相方の富澤たけしが個人で活動を続ける形だ。
上沼は番組内で伊達との過去のやり取りを振り返った。ロケ先の会津若松で伊達の食べ方を見て「食べすぎやで」と声をかけたところ、伊達は「大丈夫なんです。僕健康ですから」と笑って答えたという。上沼はさらに、伊達の話し方について「しゃべりにくいっていうことはちょっと偏頭痛があったりとか」という兆候があったのではないかとも指摘した。当時は誰も気に留めなかったやり取りが、脳梗塞という結果を経たいま、思い返せば見過ごされた予兆だったのではないかという重みを帯びている。
「使い倒すでしょ」、売れっ子ほど断れない構造への一言
上沼が最も踏み込んだのは、テレビ業界そのものへの指摘だった。同紙によれば、上沼は「言いたいの」と前置きしたうえで、伊達について「使い倒すでしょ」と表現し、仕事を断らない性格の持ち主であることに触れたうえで、業界側の起用のあり方に「どうなんかな?と思う」と私見を述べた。売れっ子芸人であるほど依頼が集中し、本人も応えようとしてしまう。その積み重ねが心身にどう跳ね返るかという想像力を、現場全体がどこまで持てていたのか。単なる同情や心配で終わらせず、業界の慣行そのものに踏み込んだところに、ベテランならではの遠慮のなさが表れている。
正月特番は「サンドウィッチマンじゃないとイヤ、私は降ります」
上沼の発言でもうひとつ注目されたのが、正月の恒例特番についての本音だ。上沼とサンドウィッチマンは今年1月2日に放送された新春特番「上沼×サンドの最幸運グランプリ2026」でMCタッグを組んでおり、次回開催も見込まれる人気企画になっている。上沼はこの特番について「サンドウィッチマンじゃないとイヤ。私は降ります」と述べ、伊達抜きでの続行には応じない考えを明らかにした。人気企画であっても、コンビが揃わない形での続行は望まないという姿勢は、共演者としての情の深さと同時に、伊達の回復を急かさずに待つという意思表示にも読める。
上沼は「休むのも仕事」だと伊達に呼びかけ、ファンの多さにも触れながら「みんな待ってる」と回復を後押しする言葉も残している。業界への苦言と本人への温かい言葉が同居する語り口は、上沼らしい率直さの表れだ。
「出続けること」を15年背負ってきた東北魂
伊達が仕事を断らない背景には、単なる人気者ゆえの多忙さだけでは説明しきれない事情もある。サンドウィッチマンは東日本大震災の直後から東北出身の芸人として復興支援に力を入れ、2011年10月には冠番組「東北魂TV」を開始した。すべてを震災と結びつけるのではなく、純粋にお笑い番組として楽しんでもらうことを心がけながら、震災関連の義援金活動や東北ロケ企画を10年以上にわたって継続してきたコンビだ。震災の記憶が薄れがちな時期にあっても発信し続けることそのものを使命としてきた経緯がある以上、伊達にとって仕事を断るという選択肢は、単なる体力配分の問題を超えて重みを持つ。上沼が指摘した「使い倒すでしょ」という一言の背後には、こうした事情を知る先輩芸人としての複雑な思いも透けて見える。
多忙を美徳としてきたテレビの現場に問われるもの
脳梗塞の一般的な発症要因としては高血圧や糖尿病、高脂血症、喫煙や肥満などが知られているが、伊達本人がどの要因に該当するかは公式に明らかにされていない。それでも、休まず働き続けることが評価されがちなテレビの現場にあって、上沼のような大御所が「使い倒すでしょ」と言葉にしたことの意味は小さくない。人気タレントが体調の急変で活動休止に追い込まれる例は今回が初めてではなく、首の緊急手術を受けたマツコ・デラックスのケースなど、多忙な人気者が体を壊してから初めて周囲が事の重さに気づくという構図は繰り返されてきた。所属も事務所も異なる面々に共通するのは、断らない、あるいは断りにくい立場に置かれた売れっ子ほど、周囲がその厚意に甘えて無理を重ねさせやすいという一点だ。
上沼の一言は、伊達個人への心配であると同時に、業界そのものへの静かな警鐘でもある。「サンドウィッチマンじゃないとイヤ」という一言は、裏を返せば伊達がいなければ成立しない企画をこれ以上増やさないでほしいという、業界へのもう一つの注文でもあるはずだ。



