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被害総額31億円オンラインオリパの闇 弁護士法人・響が消費者庁に申告、なぜここまで野放しだったのか?

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オンラインオリパ
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トレーディングカードの「オリジナルパック」、通称オリパ。カードショップが開封済みカードを独自にパック詰めして売る、いわばくじ引き商品だ。長らくカード業界の片隅で黙認されてきたこの商売が、いまオンライン化によって「実質カジノ」と化し、ついに法曹界と行政を巻き込む大騒動に発展した。

弁護士法人・響は9月7日、「DOPA!オリパ」「オリパワン」「日本トレカセンター」など大手オンラインオリパ業者7社を、特定商取引法違反の疑いで消費者庁に申告した。同法人に寄せられた被害相談は購入者460人、被害総額は実に31億円にのぼるという。1人あたり単純計算で約670万円。もはや「カード遊び」の域をはるかに超えている。

だが、この問題の本質はどこにあるのか。「還元率100%」を謳うサイトの何が疑われているのか。そして――そもそもオリパは賭博ではないのか。

 

「還元率110%」のカラクリ 申告された3つの疑惑

響が問題視するポイントは大きく3つだ。

第一に、還元率の透明性不足。オンラインオリパの多くは「還元率100%」「105%」といった数字を掲げて集客する。1万円分回せば1万円以上の価値のカードが返ってくる、そう読める表示だ。しかし当たりカードの封入確率や算定根拠は開示されず、「本当に表示どおりなのか」を利用者が検証する術がない。実際、響のLINE相談窓口では「確率や当たり方に疑問を感じた」ケースを返金請求の対象になり得る事例として挙げている。

第二に、発送トラブル。 当選したはずのカードが届かない、届いたカードの状態が表示と異なる、といった苦情が相次いでいるという。

第三に、ポイント還元による”循環取引”だ。 これが最も根深い。オンラインオリパでは、当たったカードを自宅に発送してもらう代わりに、サイト内ポイントに即時変換して再びガチャを回せる仕組みが標準装備されている。ハズレカードは実物のやり取りすら発生せず、ポイントに変わって次のくじに消えていく。つまり利用者は、カードを集めているつもりで、実際には画面上で光る演出を見ながら現金を溶かし続けているのである。

 

「3店方式のパチンコのほうがまだ誤魔化す努力をしている」

そもそもオリパは賭博罪(刑法185条)に当たらないのか。賭博の成立要件は、①偶然の勝敗に関して、②財物を賭け、③その得喪を争うこと。オリパは完全な抽選方式で金銭を支払う以上、①②は明らかに満たす。争点は③だ。

事業者側の理屈はこうだ。「100口のパックを1万円で売れば売上は100万円で固定される。誰が当たりを引こうが事業者は損をしないから、財産の得喪を争っていない」。全パックを売り切る前提なら、この整理には一定の説得力がある。ソシャゲのガチャが景品表示法をすり抜けたのと同様、「パックのカード自体が商品であり景品ではない」という消費者庁の過去見解も、オリパ業者の追い風になってきた。

しかし法律実務家の間でも「グレー」というのが正直な評価だ。当たりカード1枚が99万円、残り99枚合計が1万円という極端な構成なら、初手で当たりを引かれた事業者は明白に損をする。賭博罪成立の余地は消えない。

 

そして、オンラインオリパはこのグレーをさらに黒に近づけた。前述の即時ポイント変換である。当たりを”ほぼ現金”に換えられる仕組みは、換金性という賭博の核心にダイレクトに触れる。ネット上では「3店方式のパチンコ・パチスロのほうがまだちゃんと誤魔化す努力をしている」と皮肉られる始末だ。

なお刑法には富くじ罪(187条)もあるが、事業者が先にカードを仕入れてリスクを負担している限り「落選者の損失で当選者に利益を与える構造」には当たらないとされる。逆に言えば、カードを仕入れる前にくじを売り、売れてから仕入れるような自転車操業型のサービス設計であれば、富くじ該当の判断すらあり得る。

8時間で5000万円完売 市場をゆがめる異常な売上

 

「街のカードショップのオリパなんて昔からあるでしょ」という声もある。そのとおりだ。ではなぜ今、問題になるのか。答えは規模である。

あるオンラインオリパサイトでは、売り切れ商品の販売額を数えただけで1億9250万円分が確認された。しかも売り切れラインナップは次々と非表示になり、新商品に入れ替わっていく。総額5000万円のオリパがわずか8時間で完売した例もある。

比較しよう。2021年の国内カードゲーム市場は、ポケカ・遊戯王・デュエマなどすべて合わせて約1782億円。一次流通の市場全体がその規模のところに、二次流通カードを詰め直しただけの”くじ”が、たった1サイト・数週間で億単位を売り上げているのだ。「陰でコソコソやっている分には警察も動かなかった。見逃してもらっていただけ」――この指摘は、規模が黙認の閾値を超えたことを意味する。

しかも儲かる。本誌が以前取材したある事業者は、悪びれる様子もなくこう明かした。

 

「何せ、儲かる。YouTube広告をガンガン流しても、それでもかなり儲かる。だからやめられない」

有名YouTuberとのコラボオリパも次々登場し、案件動画が射幸心を煽る。広告費を湯水のように使っても利益が残るビジネスモデル――その原資が、大多数のハズレを引いた購入者の財布であることは言うまでもない。

ポケモンは黙っているのか IPホルダーの逆鱗

 

もうひとつ見逃せないのが知的財産の問題だ。オンラインオリパの多くは、実物カードの撮影写真ではなく公式のカード画像を演出に使っているとみられる。

カードショップのシングル販売なら、メーカーは画像使用を黙認してきた。二次流通がカードゲームの普及を支えるからだ。だがオリパは違う。ハズレはポイントに変換されるだけでカードは動かず、プレイヤー人口は増えない。メーカーにとってメリットはゼロ、あるのは「ポケモンカードがギャンブルの道具にされている」というブランド毀損だけである。

ポケモン・任天堂陣営は、自社ゲームへのガチャ導入にすら慎重を期し、パチンコ機種化も一切許してこなかった徹底的なクリーン路線で知られる。その知財が、無断で”合法カジノ”の目玉商品に使われている。権利者からの法的措置は時間の問題との見方も強い。

 

響の”錬金術”に冷ややかな声も

もっとも、正義の刃を振るう弁護士法人・響にも、ネット上では冷ややかな視線が注がれている。

同法人は債務整理案件を24時間体制で集めることで知られ、「サラ金過払いからB型肝炎、アスベスト給付金、占い・出会い系の返金まで、被害者ビジネスの鉱脈を掘り当ててきたプロ。オリパ返金は次のドル箱」と評する向きもある。実際、響はLINEで「オリパ返金診断」を展開し、5問程度の簡易診断で「返金の対象となる可能性があります」と電話相談へ誘導する導線を敷いている。

さらに一部ユーザーが目ざとく指摘したのが、響が「Veritas」というトレカ買取サービスを共同運営している事実だ。上位オリパ業者には返金を要求しつつ、オリパ発のカードは買い取って転売する――「ポケモン業界の金になりそうなことを全部やる姿勢がすごい」との皮肉も飛ぶ。

「自分で回したガチャの返金を求めるのは自己責任論的にどうなのか」という声も根強い。ただし、還元率表示が実態と異なっていたなら話は別だ。それは自己責任ではなく、単なる不当表示・詐欺的商法の被害である。

 

規制の行方 「オリパ全面禁止ならカードショップは全滅」

今後の展開はソシャゲ・ガチャ騒動の再現になる可能性が高い。かつてコンプガチャが社会問題化した際は、消費者庁の見解公表を経て業界団体が自主規制ルールを整備した。オリパも、①権利者からの警告・民事訴訟、②消費者庁による問題点の公表、③摘発、④新規立法――という段階を踏む筋書きが現実味を帯びる。

一方で、業界からは悲鳴も上がる。「オリパを完全に規制すれば、そこら中のカードショップがほぼ全部倒産する。今のカードショップはオリパがあるからこそ発展している。取り締まるなら悪質なものだけにしてほしい」(カードショップ関係者)。

 

実店舗の小規模なオリパと、億単位を吸い上げるオンラインの”換金装置”を同列に扱えないのは確かだろう。問題は、その線引きを業界の自浄作用に任せられるか、それとも行政のメスを待つしかないのか、である。

460人・31億円という数字は、氷山の一角にすぎない可能性が高い。消費者庁がこの申告にどう応えるか――カードゲーム業界の未来を左右する「X_day」は、すでに始まっている。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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