
経営環境が厳しい中でも被災者を最優先に行動した姿勢は、多くの人の心を動かした。
同社は東日本大震災をはじめとする過去の大規模災害でも、肌着を中心とした支援を継続してきた企業だ。
SNSでは「買い支えたい」との声が急増し、創業以来の理念や近年の経営判断も改めて脚光を浴びている。
熊本地震で迅速支援
令和8年熊本地震の発生を受け、グンゼは関係省庁などの要請に素早く対応した。
7月30日から支援物資の発送を開始し、男性・女性用肌着約10万枚を8月3日に熊本県へ届けた。
避難生活で着替えが不足しやすい状況を踏まえ、必要性が高い物資を優先した判断だった。
さらに緊急災害対応アライアンスSEMAを通じた追加支援も実施した。
男性用肌着上下1850枚、女性用1050枚、子ども用850枚を、グンゼ物流の岡山物流センターからピースボート災害支援センター経由で益城町や関連拠点へ送った。
到着は8月8日と10日で、被災地のニーズに合わせたきめ細かな対応が目立った。
食料や医療品の次に求められる日常用品を、自社の主力商品で補う行動は被災者の生活再建を直接支えるものとして高く評価されている。
東日本大震災から続く一貫した姿勢
グンゼの災害支援は今回に限ったものではない。
東日本大震災では発生直後から動き、肌着14万枚、ソックス10万足、パジャマ2500枚を岩手・宮城・福島の指定場所へ届けた。
総額は約2億円相当に上り、避難所での生活を支える大きな力となった。
その後も「がんばろう東北」キャンペーンを展開し、東北工場で生産した商品の売上の一部をあしなが育英会に寄付するなど、復興支援を中長期で続けた。
2016年の熊本地震では肌着数千枚規模をCivic Force経由で届け、令和6年能登半島地震では婦人肌着6万枚に加え、保温肌着1万2000枚と保温靴下4000足をSEMA経由で提供した。
西日本豪雨や九州の大雨、火災など比較的規模の小さな災害でも、要請に応じて数百枚から数千枚の肌着を送り続けている。
一貫して「肌着」という自社の強みを生かし、被災者の尊厳と快適さを守る姿勢が貫かれている。
業績悪化・国内工場再編の渦中でも 被災者優先の決断
2026年3月期の連結業績は売上高が前期比で減少し、純利益は大幅な減益となった。
主力のアパレル事業は販売低迷と構造改革に伴う費用が響き、営業損失に転落した時期もある。
国内工場の再編や物流拠点の集約、希望退職の実施など、効率化に向けた厳しい取り組みが進行中だ。
人件費や原材料費の上昇、需要構造の変化といった外部環境も重荷になっている。
そんな経営の苦境下にあっても、被災地への物資提供を優先した決断は短期的な収益を超えた企業の価値観を示している。
コスト削減を進める一方で、社会的な役割を果たそうとする姿勢が今回の支援を通じて多くの人に伝わった。
SNSで広がる買い支えたいの声
支援の事実が広がると、XをはじめとするSNSでは「経営が厳しいのに被災地を優先する企業を応援したい」「家族の肌着をグンゼに総入れ替えしよう」「品質が高く長持ちするから普段使いでも選びたい」といった投稿が相次いだ。
公式通販や店頭での購入を呼びかける動きも活発化し、実際に買い支える人が増えている。
災害時の迅速な行動が、日常の消費行動に結びつく好循環が生まれている形だ。
企業の社会貢献が単なるイメージ向上ではなく、具体的な支持につながっている点は現代の企業と消費者の関係を象徴している。
創業精神と現代の選択 グンゼの理念
グンゼの社名は、明治19年に波多野鶴吉が京都府何鹿郡で地方産業振興のために設立した「郡是」に由来する。
前田正名の「国是・県是・郡是・村是を定むるにあり」という言葉に共感し、地域と人を大切にする精神を掲げたのが始まりだ。この理念は今も生きている。
2021年には人権懸念から一部製品で新疆綿の使用を中止し、国際的な責任を果たした。
2023年にはストッキングの中国生産を終了し、宮崎の国内工場に集約して需要変化への対応力を高めた。
業績が厳しい時期に国内回帰や倫理的な選択を進める姿勢は、創業精神と現代の課題を結びつけるものとして受け止められている。
グンゼの一連の行動は、困難な経営環境下でも被災者に寄り添い続ける企業の姿を具体的に示した。
災害支援の実績と理念が重なり、社会からの信頼を着実に高めている。



