現代のビジネスにおいて、サステナビリティとESG経営は重要なキーワードとなっています。そのような中、SBT認証は、企業のサステナビリティへの取り組みと信頼性を高めるための国際的な認証制度です。しかし、その具体的な内容や、取得する際のメリット、方法についてはまだ不明な点も多いでしょう。
この記事では、SBT認証の基本情報、メリット、取得プロセス、そして日本における認定企業の成功事例を詳しく解説します。
サステナビリティに関する具体的な認証制度の選択に迷っている方々にも役立つ情報を提供しますので、最後までご一読ください。
SBT認証とは?
SBT認証とは、企業の温室効果ガス削減目標を科学的根拠に基づいて定める国際イニシアチブです。
パリ協定に沿った環境目標を企業が設定し、それを達成するための計画を評価します。目標は産業革命前比で気温上昇を1.5°C未満に抑えるための削減率を基準に設定されます。
2023年3月時点で、世界中で4,614社が参加し、日本では438社がSBT認証を取得しています。この日本の取得企業数は、イギリスに次ぐ世界2位、アジア地域では1位となっていることからも、国内での注目度が高いことがわかるでしょう。
SBT認証とRE100との違いは?
SBT認証と類似する機関のひとつに「RE100」がありますが、この2つは、企業が設定すべき目標に違いがあります。
- SBT認証:温室効果ガスの削減目標
- RE100:再生可能エネルギーを100%にする目標
RE100に参加するメリット、申請方法について知りたい方はこちらもご参考ください。
SBT認証を取得するメリット
SBT認証を取得することは、脱炭素社会の実現に向けて企業が取り組む中、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。
その具体的な理由について、環境省が公表する資料に基づき解説します。
投資家に自社のESG経営体制をみせられる
SBT認証を取得することで、国際的な温室効果ガスの削減目標を設定している企業だと証明されることになります。
さらに、SBTの運営機関の中には、CDPも所属しているため、SBT認証取得=CDPの評価アップにもつながることが期待できます。
2022年、130米ドル以上の資産を持つ機関投資家680社以上が、CDPを通じた環境情報開示を求めたことに注目が集まりました。
つまり、SBT認証を取得することは気候変動の取り組みに対する信頼性の獲得につながるだけでなく、CDPにおける評価アップにもつながり、機関投資家へアピールポイントになるでしょう。
顧客のサステナビリティへの関心に応えられる
顧客の間でもサステナビリティ意識が高まっており、製品購入の決め手となりつつあります。これは、製品の調達から廃棄までの全過程において、環境への影響が重要視されることを意味します。
例えば、コーヒー業界では原材料の調達やコーヒー豆の生産地、生産国の生活に配慮した供給体制を整えていることをアピールする企業が増えてきています。
SBT認証の取得は、企業が自らの環境努力を超え、サプライチェーン全体にわたるサステナビリティへの取り組みを示す証となります。
これにより、企業はサステナビリティに意識の高い顧客に対して、その責任ある行動をアピールすることになるでしょう。
サプライヤーへの協力を要請するきっかけになる
サステナブルな世界の実現を目指す現在では、投資家や顧客から高い評価を受けるためには、自社のみならずサプライチェーンの領域まで環境に配慮した取り組みを実施していることが重要です。
実際に、SBT認証の取得を目指す企業または、すでに認定を受けた企業には、サプライヤーへ協力を求めSBT認証に向けた目標設定を促す企業が増加しています。
企業名 | 概要 |
武田薬品工業 | 購入した製品・サービス、資本財、輸送・配送(上流)による排出量の80%に相当するサプライヤーに、SBT目標を設定させる |
ソニーグループ | 購入した製品・サービスによる排出量の70%に相当するサプライヤーにSBT目標を設定させる |
AGC | カテゴリ1(購入した製品・サービス)を対象とした排出量の76%に相当するサプライヤーのSBTの目標設定をさせる |
このように、SBT認証の取得は、サプライヤーへ環境に配慮した取り組みの協力を要請するきっかけになります。また、サプライヤー側の立場に立つと、企業との取引機会に獲得にもつながります。
従業員のエンゲージメントが上がる
SBTの目標設定を行い取り組む課程で、社内関係者や従業員にアピールすることにもつながります。
自社の目標や方向性がはっきりすることで、従業員のエンゲージメントが上がり、目標に向けたアイディアやイノベーションを起こそうとする動きを活発化するきっかけになります。
SBT認証の取得方法
SBT認証を取得するまでの手順を紹介します。
大まかな流れについては、以下の図の通りです
SBT取得までの大まかな流れについては、以下の図の通りです。
では、一つずつ解説していきます。
任意のコミットメントレターを提出
申請書を提出する前に、2年以内にSBTに則った目標設定の宣言がおこなえます。
宣言をすると、SBT事務局やCDPのWebサイトに公開されます。
<コミットメントレターの申請手順>
- 申請書類をダウンロード
- 必要事項を記入 企業名・日付・場所・署名(誰でも可)を記入
- SBT専用のGoogleフォームに申請書類をアップロード
目標設定・申請書提出
SBTの認定要件を満たす目標設定を行い、
Target Submission Form(目標認定申請書)をダウンロードして作成します。
次に、専用の予約システムから事務局に申請書類を提出します。
なお申請書類の記載事項は以下となりますので、目標設定をしてから記載をします。
- 目標の妥当性確認に関する要望
- 企業の基本情報
- GHGインベントリに関する質問
- Scope1/Scope2に関する質問
- バイオエネルギーに関する質問
- Scope3に関する質問
- 算定除外に関する質問
- GHGインベントリ情報(Scope1/Scope2/Scope3排出量)
- 削減目標(Scope1/Scope2/Scope3)
- 目標の再計算と進捗報告
- 補足情報
- 申請費用の支払い情報
妥当性の確認後にSBT認証取得
申請書提出後、SBT事務局により目標の妥当性の確認され回答が届くまで待ちます。
(最大で30営業日かかります)
確認の結果、妥当だと判断されればSBTのWebページやSBTパートナー企業のWebページに認定企業として登録されます。
妥当性の確認を受けるためには、
- 9,500米ドル(外税)最大2回の目標評価を受けられる
- 4,750米ドル(外税)3回目以降、目標評価を1回受けるごとに必要
もし、妥当性が確認されなかった場合、以下の2通りの手順のうちどちらか一方を実施する必要があります。
- 目標の再設定を行い、申請書を再提出
- 提出した目標設定を編集する
どちらかの方法を実施し、再提出し妥当性が確認されれば認定企業として登録されます。
再提出における妥当性の確認に対しても費用が発生しますのでご注意ください。
認定後の対応
SBT認証は、認定を受けたら終了という訳ではありませんので、ご注意ください。
温室効果ガス排出量と目標に向けた取り組みの進捗状況を年1回、SBT事務局へ報告し、目標達成の妥当性を証明し続ける必要があります。
中小企業向けのSBT認証
SBTでは中小企業向けの認証制度が設けられています。
通常のSBTとは、目標設定の対象範囲に大きな違いがあり、Scope1.2、つまり自社内の生産活動に限定して、温室効果ガスの排出量削減目標を設定することになります。
中小企業向けのSBT認証では、通常のSBTと申請手順が異なります。
下記の違いを参考に、こちらの申請フォームから作成してください。
SBT認証を取得している日本企業
すでにSBT認証を取得している、国内企業の事例を2つ紹介します。
キリンホールディングス株式会社
2022年7月にSBTネットゼロ認定を、世界の食品企業で初めて取得したのが、キリンホールディングス株式会社です。
具体的な目標設定と取り組みは以下となります。
<目標設定>
- グループ全体Scope1とScope2の合計を50%削減する
- Scope3(サプライヤー)を30%削減する
- 2030年までに2019年と比較しての目標
<具体的な取り組み>
ソニーグループ株式会社
2022年8月にSBTネットゼロ認定を取得し、耐久消費財・家庭用品・パーソナルケア製品セクターの大手企業の中では初の認定となります。
<目標設定>
- Scope1〜3までを含む全体でのネットゼロ目標を2050年から2040年へ前倒し
- Scope1、Scope2においては、2030年までにネットゼロを達成する目標を設定
- 2030年までに100%再生可能エネルギー由来の電力へ切り替える
<具体的な取り組み>
- 製品のライフサイクル全般で温室効果ガス排出量を削減する
- 環境配慮製品やサービスを開発、提供するとともに、事業所の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を推進する
- 製造委託先や部品サプライヤーにも温室効果ガス削減を働きかける
(引用:ニュースリリース|ソニー株式会社ホームページより)
SBT認証取得の効果を高めるには?
SBT認証を取得する目的としては、パリ協定の水準に則った世界基準でのGHG排出削減に取り組む一方で、新たな事業機会の獲得も目標のひとつかと思います。
もしビジネスチャンスを広げていくなら、SBT認定を受けたことを社外へ積極的にアピールしていくことも大切です。
そこで活用していただきたいのが、『サステナビリティ対応支援サービス』です。
『サステナビリティ対応支援サービス』では、統合報告書やサステナビリティレポート、ESGデータブックの作成を通じて、ステークホルダーへの情報発信を支援してくれます。
情報発信がきっかけに、新たな機会になった実例を紹介しています。
「SBT認証を事業機会獲得のために活用したい」
「自社のサステナビリティをステークホルダーへアピールしたい」
もし、このようにお考えでしたら、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回は、SBT認証の概要やメリット、取得方法、認定企業例についてご紹介しました。
これからSBT認証の取得を検討しており、企業価値の向上や企業のサステナビリティ向上を図りたいという方にとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
<編集:水戸 湊>