
警視庁は7月1日までに、女性2人を性風俗店に違法に紹介したとして、職業安定法違反の疑いで佐藤健容疑者(41)を逮捕した。容疑者は、新宿・歌舞伎町を拠点におよそ20年にわたりスカウト行為を続け、関係者から「伝説のスカウト」と呼ばれた男だった。
容疑は2人の紹介、実態は「20年のキャリア」
報道によると、逮捕容疑は2025年4月と12月、SNSなどで知り合った当時23歳と41歳の女性2人を、東京都台東区千束の性風俗店2店舗に紹介し、雇わせたというもの。職業安定法は、公衆衛生・公衆道徳上有害な業務に就かせる目的での職業紹介を重く禁じており、違反には通常の無許可職業紹介よりはるかに重い罰則が定められている。
FNNによると、佐藤容疑者は特定の組織に属さず複数の店から依頼を受けるフリーのスカウトで、雨の日も風の日も路上に立ち続け、その報酬は月に約30万円ほどだったという。20年以上のキャリアから「歌舞伎町の伝説のスカウト」の異名を取ったが、調べに対しては「記憶が曖昧なので、今後思い出しながら話します」と供述し、容疑を否認しているという。今後の捜査では、余罪の有無、すなわち20年間で何人の女性を夜の街に送り込んだのかが焦点となる。
スカウトは「入り口」――規制が需要側に及び始めた
スカウト行為そのものは古くから歌舞伎町の風景の一部だったが、近年、その法的な位置づけは大きく変わりつつある。悪質ホストクラブ問題を受けて2025年に成立した改正風営法では、ホストクラブの高額な売掛(ツケ払い)規制などとあわせ、スカウトに紹介料を支払う「スカウトバック」への規制が盛り込まれた。女性に売掛金を背負わせ、その返済のために性風俗店で働かせ、紹介したスカウトが店から報酬を受け取る――この「負の循環」の各結節点に、法の網がかかり始めたのである。
今回の逮捕容疑となった職業安定法違反(有害業務への職業紹介)の摘発も、近年は大規模スカウトグループの摘発が相次ぐなど、明らかに強化されている。スカウトは夜の街の「人材供給網」の入り口であり、ここを断つことは、困窮や孤独につけ込んで女性を性風俗産業へ流し込む構造全体への打撃になる。警察の狙いもそこにあるとみられる。
「伝説」という言葉が覆い隠すもの
SNS上ではこの逮捕が「伝説のスカウトついに捕まる」と、どこか英雄譚のように語られている。しかし、その「伝説」の中身は、20年にわたって女性を性風俗店に送り込み、店から対価を受け取り続けたということに他ならない。紹介された女性の中には、自らの意思で夜の仕事を選んだ人もいれば、経済的困窮や借金、孤立といった事情から他の選択肢を持てなかった人もいたはずだ。夜の街の華やかな物語の裏には、常に「人を商品として流通させる」構造がある。



