
商品にならず廃棄されてしまっている規格外野菜を、新しい商品に生まれ変わらせる。そんなユニークな発想から生まれたのが、株式会社シーエープラント(伊地知裕吉代表取締役社長)が展開する「洛結」ブランドだ。美味しい商品として規格外野菜に新たな価値を与えることで、農家を支えながら、これまで見過ごされてきたフードロスの削減にもつなげていく。
幾度もの試行錯誤を重ね、完成した野菜ジャムは「調味料選手権2025」で最優秀賞を受賞。さらに総合グランプリにも輝いた。廃棄されるはずだった野菜を、消費者が「食べたい」と思う商品へ――。一つの想いから始まった挑戦は、農家と企業、そして地域をつなぐ新たな循環を生み出そうとしている。
農家の困りごとから生まれた、新たな事業
―本日はよろしくお願いします。御社は京都に本社を置き、「環境とエネルギーの総合マネージメント企業」として、ガス発電機やコージェネレーション設備、環境プラント等の再生可能エネルギー事業を展開されています。その一方で、規格外で廃棄される農作物の再利用にも積極的に関わられている。なぜこの事業を始められたのでしょうか。
中江 それは弊社を創業した前代表の谷の着想が発端になっています。
前代表は新規事業の開拓に積極的な方でした。そもそも弊社の前身は輸入雑貨を販売する会社だったのですが、前代表が知人に頼まれて彼のプラント事業に協力していくうち、この事業を新しく独立させよう、と思い立ち弊社が生まれました。
さらに前代表は食品加工設備の会社と繋がりも持っていたので、そこから購入した設備と、規格外で廃棄されている農作物を利用して何か生産できないか、と思いついた。
―御社は京都府南丹市で生産される野菜など、京都産の野菜を用いた商品ブランド「洛結(らくゆう)」を展開されていますね。
中江 南丹市は前代表の出身地です。京都府の中央部に位置する南丹市は、山地が多く農業や林業が主な産業の町です。こちらに住む農家さんたちの悩みが、規格外の農作物を廃棄しなければならないことでした。
故郷が抱えるこの悩みを聞いた前代表は、廃棄されている農作物を利用することは農家さんの支援になるだけでなく、フードロス問題の解決にもなると考え、社内に食品企画部を立ち上げます。しかし前代表は2022年に急逝してしまいます。計画を立てて補助金申請をし、交付が決定となりいよいよ工事……という時でした。
―そこで現在の代表取締役社長である伊地知祐吉氏に会社が受け継がれるわけですが、まだ食品企画部は端緒についたばかりですし、事業も具体的には進んではいなかった。止める、という選択肢はなかったのでしょうか。
中江 前代表の遺志であり、農家さんの助けにもなる事業ですから、どうにかカタチにしていきたいと考え、社内で話し合った結果、事業を継続していくことにしました。

規格外野菜を「美味しい商品」に変える
中江 しかし実際に始めてみると、工場内の機器の配置が生産に適しておらず設計を変更しなければならないなどトラブル続きで、なかなか軌道に乗らなかった。商品についても試行錯誤の連続でした。私は調理師免許を持っている、という理由で2022年からこの部署に配属になりましたが、一からレシピを作って商品開発を重ねていきました。
―現在、御社の「洛結」ブランドの商品にはスープやジャムなどのラインナップがあります。特にジャムは高い評価を得ていますが、どうしてジャムに注目されたのでしょうか。
中江 当初は野菜スープを生産していたのですが、スープは夏場には売上が落ちてしまいますし、他社製品との差別化が難しかった。それで注目したのがジャムでした。ジャムならば既存の機材を活用でき、また年間を通じて同じ商品を提供することができる。
弊社の商品は保存のための添加物を使用していないのですが、それだとスープの原材料となる作物が取れない時期には、スープも製造できなくなってしまうんです。
―ジャムはトマト、大豆、さつまいもで作られていますが、これらを用いれば年間を通してジャムが製造できる?
中江 さつまいもはうまく温度管理をすれば一年保ちます。それにトマトはハウス栽培なので年間を通して仕入れることができる。大豆は乾燥しているので長期間保存が可能なんです。
この三つの食材にたどり着いてから、さらに納得のいく味になるまで半年以上、試行錯誤を繰り返しました。さらに賞味期限や消費期限を設定するために必要な保存検査の期間を経て、やっと販売にこぎつけました。事業開始から2年、商品開発開始からも1年ほど費やしました。

驚きの味が生んだ予想外の反響
―そうしてやっと販売に至ったわけですが、販売先に目星はついていたのでしょうか?
伊地知 スープが先に商品化していたので、スープを置かせてもらっている道の駅などにジャムも置いてもらえるよう営業して回りました。展示会にも積極的に参加して商品を宣伝していきました。
展示会の試食では、多くの方から「野菜のジャムでここまで美味しいものは食べたことがなかった」と驚きの声をいただきました。このジャムは感動する味だと。
―私も御社のトマトのジャムを試食させていただいたのですが、驚きました。私はトマトが苦手なのですが、トマトの青臭さが全くなく、フルーツのような爽やかな甘みと味わいだけがある。
伊地知 野菜のジャムに抵抗がある人ほどその美味しさに驚かれます。大豆のジャムもきなこのような香りが豊かで、パンだけでなくヨーグルトやアイス、お餅にも合います。
しかし、どうしても野菜のジャムは知名度が低くなかなか手に取ってもらえないのが悩みでした。
―せっかく美味しい物でも、知られていなければ売れず、規格外野菜の廃棄を減らすことも難しくなる。
伊地知 それでどうやったらこの商品を多くの方に知ってもらえるか考え、日本野菜ソムリエ協会主催の「第16回調味料選手権2025」に出品しようと思いつきました。
「パンのおとも部門」で出品したのですが、そこでまず最優秀賞を受賞できた。それだけでも満足なのですが、さらには予想外に総合グランプリまで獲得することができました。
グランプリになったことでテレビなどでも弊社の野菜ジャムを取り上げてもらえ、やっとこれまでの苦労が報われた思いでした。

農家を苦しめる「見えないフードロス」
―野菜ジャムが多く販売されることで農家の利益にもなる。売れることがSDGsにつながる。
中江 もともとのコンセプトが農家さんの支援ですから、農家さんに利益を還元することは徹底して続けています。
―そもそも規格外の野菜はどのくらいできるものなのでしょうか。
天候、虫、形が悪い、傷があるなどのさまざまな理由がありますが、収穫される量のおよそ3割は規格外となってしまいます。これらの規格外品のほとんどは半額などに値引きをして販売されている、と多くの人は思っています。しかしあれはほんのごく一部で、9割以上は収穫もされずに廃棄されています。
―ほぼ廃棄されている。
中江 元来、野菜生産は薄利多売です。ですから規格外品を収穫して洗浄・袋詰め・発送という従来のプロセスで販売すると、正規品より値下げしている分、赤字になってしまう。売れば売るほど損失が増えるのです。
これを「見えないフードロス」と呼んでいます。政府の統計に表れていない大量のフードロスが、畑ではずっと起こっていたんです。
註 農林水産省によると、2024年度の日本の食品ロスは約461万トンに上る。一方、生産現場で規格外などを理由に廃棄される農産物は、現在の食品ロス統計には含まれていない。いわゆる「見えないフードロス」の実態は、いまだ全国規模では十分に把握されていない。
伊地知 私は実家が農家でしたので、この廃棄は当然のこと、農家の常識と思い込んでいましたし、フードロスに関心がある人でも、この問題に気づいていないのが現状です。
―しかしそれが売れるようになることで、農家はこれまで失われてきた利益を得られるようになる。
中江 そうすれば農家さんは良い肥料を買ったり新しい機械を導入したりして、より一層いい野菜を作ることができる。正規品の野菜の価格を下げることもできるかもしれない。そういう循環が生まれていったらいいですね。中小規模の農家さんは農業だけでは収入が厳しく、自分のところの規格外の作物を使って飲食店をやっていたりアルバイトをしている人も少なくありません。
我々が京都の野菜を用いているのも、地元の野菜なら輸送コストを減らすことができるからですが、そういった企業努力と農家さんへの支援によって、どうにかこの見えないフードロスを削減していきたいと考えています。
―それには一企業だけの努力では限界がある。
伊地知 この輪が日本全国、47都道府県に広がっていったらいいと考えています。

企業の垣根を越えて、フードロスの解決へ
―今後の展開についてお聞きします。
中江 気候の変動によって農作物の収穫量は大きく変化します。近年、野菜の高騰などが取りざたされていますが、そんな状況だからこそ、廃棄されている野菜を減らすことで、人々の生活に寄与していきたい。
それに取り組むことは、決して食品加工会社だけの仕事ではありません。弊社ももともとは全く違う事業をしていました。それが廃棄野菜の問題を目の当たりにしたことで、どうやって解決していこうか考え、今の商品に至った。ですからどんな企業でも取り組むことはできるんです。
ですからもっと多くの企業にこの問題に注目してもらい、いろいろな企業が協力し合っていくことで、フードロスはもっと少なくしていけると思います。
―どうしてもフードロスというと、商品が賞味期限などで破棄されることばかりが注目されています。しかしそれ以前に規格外品の大量廃棄にも注目してもらいたい。
中江 それを消費者だけでなく企業も知らない。皆さんにもこの事実を知ってもらいたいですね。
―商品展開についてはいかがでしょうか。
中江 さらに新しい商品の開発も進めています。また海外の展示会にも出品しており、販路も開拓しています。「京都産」は海外でも注目のブランドですから。
当初は前代表の遺志を継ぐ形でスタートしたのですが、今は農家さんの苦労や日本の農業が抱える問題も見えてきました。私たちの挑戦は間違っていなかった、と実感しています。
伊地知 「洛結」の商品マークには贈り物に使われる水引きのデザインを入れています。ここからいろいろなものや人がつながっていってほしい。そういう願いが込められています。私たちの事業が私たちだけでなく、より大きい循環になっていってほしい。そう願っています。
―本日はありがとうございました。


株式会社シーエープラント
https://caplant.com/
京都市右京区梅津尻溝町67-1
TEL:075-863-3300
食品事業については以下のURLより
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