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なぜ千葉ばかり大雨なのか?「また千葉」3度目の冠水、雨雲“狙い撃ち”の3つの理由

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千葉県大網市のセブンイレブンの様子 9月21日午前
千葉県大網市のセブンイレブンの様子 9月21日午前

大網白里市では、8月の豪雨から営業を再開してわずか2日目に再び大雨に見舞われたラーメン店が、今回また冠水した。これで3度目だ。テレビ朝日によると、9月22日に予定していた営業再開も見通せなくなった。

 

八千代市ではもっと生々しい。8月の浸水から約1カ月たっても床下が乾かず、住民はサーキュレーターを回し続けていた。エアコンも除湿運転のまま。「電気代も結構上がっちゃってますけど」。家財は次の浸水に備え、高い場所へ移した。

千葉市のマンションでは、8月豪雨で地下の電気設備が水没し、電気、ガス、水道が止まった。再び同じことが起きたらどうするのか。住民から出た答えは重かった。

「多分引っ越しを考えると思います」

テレビ朝日の9月21日の報道が伝えた言葉である。こうなると、さすがに疑いたくなる。

なぜ、また千葉なのか。

千葉県だけが、雨雲の新たな通り道になってしまったのか。それとも、何か地形上の宿命を抱えているのか。調べてみると、少々意外な事実が見えてきた。

 

理由1 9月は「台風が来る前」に、もう勝負がついていた

まず今回の台風25号である。台風と聞けば、多くの人は中心が近づいてきてから雨風が強くなると考える。しかし今回は、そう単純ではなかった。台風本体が関東から離れている段階から、関東南部には暖かく湿った空気が流れ込み、雨が降り続いた。そのうえで台風本体に伴う雨雲までやってきた。

つまり千葉は、台風が来る前から先制パンチを浴び、そこへ本隊が到着したようなものだった。

21日24時までの48時間降水量は、大多喜で489ミリ、千葉で419ミリに達したと日本気象協会の気象予報士・中川裕美子氏は解説している。ただ、ここは重要だ。

 

今回、大雨だったのは千葉だけではない。

東京や神奈川でも記録的な雨となった。千葉だけを狙って雨雲が飛んできたわけではないのである。では、なぜ「千葉ばかり」という印象になるのか。

その謎を解く鍵が、8月の豪雨にあった。

理由2 8月の千葉では、雨雲が渋滞

 

8月の千葉豪雨について、気象庁気象研究所が9月10日に公表した解析はなかなか興味深い。通常なら速い速度で移動する「スコールライン型」の降水システムが、なぜか房総半島付近で動かなくなっていたというのである。原因は、風の綱引きだった。

雨雲を東へ進ませようとする力がある一方、太平洋側からは西向きの風が吹き込んでいた。その力が拮抗したことで、雨雲の移動速度が大幅に落ちたと考えられている。高速道路でいえば、前へ進みたい車列が房総半島の上だけ大渋滞を起こしたようなものだ。

 

しかも気象研究所の解析では、雨雲の中に渦まで発生し、局地的に上昇気流を強め、さらに強烈な雨を降らせた可能性も示された。

つまり、8月の豪雨と9月21日の豪雨は、見た目は同じ「また千葉」でも中身が違う。8月は、強烈な雨雲が千葉の上で動かなくなった。9月は、台風が来る前から降り続け、そこへ台風の雨が重なった。

違う犯人が、たまたま同じ家を続けて襲ったようなものなのである。

理由3 同じ雨でも「水につかりやすい場所」がある

 

しかし、ここでもう一つ問題が出てくる。雨雲の位置は偶然性が大きいとしても、冠水する場所まで毎回偶然なのか。これはそうとも言えない。

千葉市中央区では21日、マンホール付近から水があふれた。君津市を流れる小糸川では川幅が一気に広がり、水が田畑やイチゴのビニールハウスへ迫った。撮影した住民はテレビ朝日の取材に「今年もこれで4回目」と話している。

降った雨は、どこかへ行かなければならない。下水や水路で処理できる量を超えれば、市街地にあふれる。排水先の川そのものが増水していれば、さらに水は逃げにくくなる。雨雲が来る場所にはたまたまの要素がある。しかし、一度降った水がどこに集まるかには、土地の高さ、河川、排水能力、地形が関係する。

ここを一緒にしてはいけない。千葉に雨が降ったことと、同じ場所が何度も浸水することは、別の問題なのである。

 

「昔は台風といえば九州・沖縄」だったはずなのに

それでも、長く日本に住んでいる人ほど違和感を覚えるのではないか。昔、台風といえば沖縄や九州というイメージが強かった。沖縄では家を石垣やフクギで囲い、鉄筋コンクリート住宅も多い。長年、強烈な風雨と付き合ってきた地域だけに、暮らしそのものに台風への備えが組み込まれてきた。

ところが最近は、関東で「観測史上最大」「記録的豪雨」と聞く機会が珍しくなくなった。本当に台風は北へ移っているのか。

 

気象庁の「日本の気候変動2025」を読むと、単なる錯覚とも言い切れない。1951年以降、日本への台風接近数そのものに長期的な増加傾向は確認されていない。一方、1980~2019年の40年間だけを見ると、後半20年間の東京への台風接近数は前半20年間の約1.5倍だったとする研究が紹介されている。

さらに、北西太平洋の熱帯低気圧が最も強くなる位置は北へ移動している可能性が非常に高いとされる。

「台風が九州から千葉へ引っ越した」と言ってしまうのは乱暴だ。だが、これまで台風被害を強く意識してこなかった地域にも、強い台風の影響が及びやすくなっている可能性は考えておく必要がある。

 

本当に怖いのは、台風の進路より「雨そのもの」が凶暴化していること

もっと明確な数字もある。気象庁によれば、全国のアメダスで観測された「1時間80ミリ以上」の猛烈な雨は、1976~1985年と2015~2024年を比べると、年間発生回数が約1.7倍になった。

1時間100ミリ以上なら約1.8倍。日降水量400ミリ以上は約2.1倍だ。

理由の一つが温暖化である。暖かい空気ほど、多くの水蒸気を抱え込める。空気中に雨の「原料」がたくさん入るため、いったん条件が整えば、ドカッと降りやすくなる。年間を通じてずっと雨ばかりになっているわけではない。むしろ気象庁によれば、雨の降らない日は増えている。

降らない時は降らない。だが、降る時は容赦なく降る。日本の雨は、そんな極端な性格へ変わりつつある。

 

来年はどうなるのか?

そこで、住民にとってもっと現実的な心配が出てくる。来年はどうなるのか。来年もまたこうした大雨が降ってくるリスクはどの程度あるのだろうかと。ただ、こればかりは神のみぞ知るとしか言えない。

そして、これほど千葉で冠水というニュースが続けば、住宅を買う人が敬遠し、土地の値段まで下がるのではないかという心配もでてくる。

日本銀行の研究者らが2026年5月に公表した研究では、2019年の東日本台風で実際に浸水した地域について、その後、地価が徐々に下がり、5年後には約10%低下したとの推計結果が示されている。浸水区域から100メートル以内では、実際には浸水しなかった土地にも約5%の下落がみられた。一方、800メートルを超えると影響は確認されなくなった。

水害リスクが不動産価格に影響する可能性はある、ということだ。ただし、これは2019年の台風被害を対象にした研究で、今回の千葉の地価が10%下がるという話ではもちろんない。

そして、ここに最大の落とし穴がある。「だったら千葉から逃げればいい」と考えるのも、少々早い。

 

「千葉から逃げれば安全」は、一番危ない思い込みかもしれない

8月の雨雲が千葉に停滞したのは、その日の風の条件が重なったためだった。9月21日の大雨も、台風と湿った空気が重なった結果である。来年も同じ場所に同じ雨雲が来る、と決まったわけではない。

しかも気候変動で猛烈な雨そのものが全国的に増えているのなら、千葉県境を越えれば安全になるわけでもない。本当に見るべきなのは「千葉県か東京都か」ではなく、自宅がどんな場所に建っているかだ。

 

川より低いのか。かつて沼や田んぼだったのか。排水は十分か。マンションなら受変電設備や非常用設備は地下にないか。過去に何度浸水しているのか。

八千代市では前回の水害から床下すらまだ乾いていない。山武市でクワガタ販売店を営む藤井琢也社長は、大雨のたびに駐車場が冠水し、休業を重ねてきた。20年以上暮らしてきて「こんな(水が)たまったのは初めて」とテレビ朝日の取材に話した。

昔なら「何十年住んでもこんなのは初めて」で済んだのかもしれない。いまは、その初めてが翌月にもやって来る。

千葉が呪われているわけではない。

だが、これまでの常識が通用しなくなりつつある日本列島の最前線に、この夏の千葉が立たされている――そう考えた方が、今回の異様な光景を理解しやすいのかもしれない。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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