
建築資材の常識を覆し、価値あるバッグへ変貌させた山口産業の試み。技術と発想の転換がもたらす新たな価値創造の背景を探る。
大阪関西万博から届いた建築資材の新たな息吹
山口産業は、大阪関西万博のクウェートパビリオンなどで使われた建築用テント膜の端材を再利用し、上質なバッグブランドを始動させた。2026年10月3日と4日の2日間、アミュプラザ博多で限定店舗を開設する。
香蘭女子短期大学との産学連携で生まれた製品は、産業廃棄物を減らしながら高いデザイン性を叶え、洗練されたバッグへと姿を変えた。
建築用の膜を丁寧に折りたたむ逆転の発想

建築の現場において、テント膜はピンと強く張るのが常識だ。山口産業はこの当たり前をあえて反転させ、職人の手仕事で繊細な折り目を施す道を選んだ。
年間およそ100トンにおよぶ端材を、単なるゴミではなく美しい布として捉え直している。
機械のプリーツでは表面を傷つけてしまうため、100度の蒸気と型紙を使い、職人が1枚ずつ手作業で挟み込む。10年を超える耐久性と撥水性を兼ね備えた、意欲的な試みだ。
素材の特性を直感的に組み替える技術への誇り
企業の根底にあるのは、自社の確かな技術力と、素材の魅力を引き出すしなやかな思考だ。1972年の創業以来、テント倉庫から大規模な空間構造まで一貫して手がけてきた歴史が土台にある。
タフな産業資材を服飾雑貨へと転換する発想は、技術への深い理解があってこそ成り立つ。素材を無駄にせず価値を跳ね上げる文化が、社内にしっかりと根付いている。
自社の強みを捉え直す思考が価値創造を生む
山口産業の歩みから学べるのは、既存の強みや素材をまったく異なる角度で見つめ直す大切さだ。自社にとっては見慣れた素材や技術であっても、視点を切り替えて異分野と掛け合わせれば、新しい価値が生まれる。
廃棄物の削減という社会課題の解決と、上質な製品の開発を両立させた事例は、すべてのビジネスパーソンに事業開発のヒントを与えてくれる。



