
株式会社ProsWorkで取締役営業部長を務めながら、自ら創業した株式会社グラオブの代表取締役として、人材・採用支援を牽引する齊藤広江氏。リクルートで長く営業のキャリアを積み、人材領域のプロフェッショナルとして数々の実績を重ねてきた。議員秘書からリクルート、そして起業へ。決して一本道ではないキャリアを歩んできた彼女が今、最も力を注いでいるのは、地方の中小企業が抱える「人」の課題だ。
「好きなこと」と「得意なこと」は、必ずしも一致するとは限らない。では、あなたが本当に価値を発揮できる場所は、どこにあるのだろうか。
リクルートで培った営業力を武器に、今も自ら地方へ足を運び、飛び込み営業と社員全員面談で企業の採用・定着の課題に向き合う齊藤氏。その歩みの裏には、思うように売上が立たなかった起業初期の挫折と、「一社でも、目の前のお客様の役に立ちたい」という等身大の願いがあった。営業のプロが歩んできた軌跡と、「人」に尽くす仕事への思いを聞いた。
齊藤広江にとっての「ProsWork」とは
――齊藤さんは、2020年に立ち上がったProsWorkの創業メンバーのお一人だと伺いました。まずは、どのような経緯で参画されたのでしょうか。
齊藤氏:2020年の5月に、6人で集まって会社をつくったんです。私はその創業メンバーの一人です。集まった6人は、全員が今ProsWorkにいる野村のクライアントで、グループコンサルティングを通じて顔見知りでした。そこから「じゃあ、みんなで会社をやろうか」と。会社をやりたいと最初に思った発起人は、おそらく野村だったと思います。
――齊藤さんご自身は、2016年にご自身の会社を創業されていますよね。そこからProsWorkに加わろうと思われたのは、どのような思いからだったのでしょう。
齊藤氏:自分の会社を2016年に立ち上げて、その後2019年に野村のコンサルティングを受けました。当時を振り返ると、一人でやるよりも、仲間がいたほうが仕事の幅が広がると考えたのかもしれません。実際、ProsWorkには磯島や高野、森田など、それぞれ違う専門性を持つメンバーが集まっています。
――齊藤さんにとって、ProsWorkとはどのような会社ですか。
株式会社ProsWorkへの評価
ステークホルダーVOICE
齊藤広江さん (株式会社ProsWork・取締役営業部長)
取材・証言確認:綿引誠 / 2026.8.10 掲載
――齊藤さんにとって、ProsWorkとはどのような会社ですか。
齊藤氏:一言で言えば、「それぞれが自由に、自分のやりたいことを突き詰められる場所」だと思います。「これをやらなければいけない」という縛りがなく、一人ひとりが自分の裁量で動ける。そこがいいところだなと感じています。
――「自分の裁量でできる」と感じられるのは、たとえばどのような場面でしょうか。
齊藤氏:昨年、ProsWorkのみんなでAI研修を受けたんです。そこで得た知識をもとに、今度は自分でAI研修をクライアントに提供してみようと。誰かに相談しなくても、「学んだから、売ってみよう」と自分で動ける。実際に、今年の2月か3月頃には、自分のクライアントに提供し始めていました。
――具体的には、どのようにAIの活用を提案されるのですか。
齊藤氏:AIにはハルシネーションもありますし、中小企業では初めてAIに触れる企業も多いので、まずはメリットとデメリットをお伝えするところからです。私は自分のクライアントのことをよく分かっているので、「御社なら、こういう使い方ができるのではないですか」と、その企業に合った活用の仕方を一緒に考えて、実際に試してみる。普段からクライアントの業務を理解しているからこそ、一歩踏み込んだ提案ができるのだと思います。
リクルート仕込みの「営業力」。飛び込みで、地方の中小企業へ
――ProsWorkでは、具体的にどのような業務を担当されているのでしょうか。
齊藤氏:私が担っているのは、一貫して「人材」の領域です。求人広告や求人票を作成する採用支援、新卒研修やマネージャー研修といった企業研修、そして人事考課制度の設計などですね。中小企業では人事考課の仕組みそのものがない会社も少なくなく、そうした制度をゼロから整えることもあります。M&Aで組織が大きくなったものの評価制度が追いつかず、うまくまとまらないといったご相談に対応することもあります。

――ProsWorkは補助金申請の支援に強みがあると伺いました。その中で、齊藤さんは人材領域に特化されているのですね。
齊藤氏:そうですね。ProsWorkは中小企業診断士が多く、補助金の申請代行が主な収入源になっています。ただ、私自身は補助金を手がけていません。そこは磯島や森田、和田が担っていて、私は採用や研修といった人事の領域を受け持っています。
――ご自身の強みは、どこにあるとお考えですか。
齊藤氏:商品そのものというより、私の場合は「営業力」なのかなと思います。中小企業や小規模事業者にとって、商品力だけで大きく差がつくことばかりではありません。だからこそ、どう届けるか。そこには自信があります。
――その営業力は、どのような形で発揮されるのでしょうか。
齊藤氏:今の時代にはあまりやる人がいないかもしれませんが、私は飛び込み営業をするんです。電話もせずに、いきなり訪ねていく。しかも狙うのは地方です。都市部の雑居ビルは受付が電話になっていて、なかなか会ってもらえません。でも地方には、ドアを開けると受付の方がいて、直接会える会社がまだ多いんです。そういう会社を調べて、次々と訪問していきます。
――飛び込みで、すぐに人事の方につながるものなのですか。
齊藤氏:規模の小さい会社だと人数もそれほど多くないので、「少しお待ちください」と、人事の方を呼んできてくださることが多いんです。そこで、他社ではこういう成果が出ています、といったお話をしながら、半ばコンサルティングのような形で提案していきます。地方の中小企業は、採用や退職に本当に困っていらっしゃる。「よく人が辞めてしまう」という悩みを抱えた企業がとても多いんです。
――そうした「飛び込む」力は、どこで培われたものなのでしょう。
齊藤氏:やはりリクルート時代ですね。求人広告の営業部門に配属され、大企業から中小企業まで、全業界で500社ほどの採用支援に携わりました。SUUMOで住まい探しのお手伝いをしたこともありますし、その後は人材紹介の営業企画部門で、新規事業の立ち上げにも関わりました。リクルートの営業は、とにかく攻め込む文化。数字も厳しく求められます。つらいこともありましたが、あの環境で鍛えられた足腰が、今の飛び込み営業につながっているのだと思います。
「好き」と「得意」は違う。議員秘書、リクルート、そして起業へ
――齊藤さんのこれまでの歩みも伺わせてください。ご出身はどちらですか。
齊藤氏:北海道の北見市です。網走に近い、東の方ですね。大学は札幌で、卒業後に就職で上京しました。
――最初のお仕事は、リクルートだったのですか。
齊藤氏:いえ、実は最初は衆議院議員の秘書だったんです。議員会館で働いていました。1999年のことですね。とはいえ、自分が政治家になりたかったわけではなくて。家族の縁がきっかけで、その道に進みました。
――そこからリクルートへ。
齊藤氏:はい。リクルートには2006年から2018年頃まで、12年ほど在籍しました。ずっと営業で、人材紹介の企画のような仕事もしていました。
――ご自身の会社、株式会社グラオブを設立されたのは2016年8月ですね。当初から人材の事業を?
齊藤氏:それが、最初はまったく違うことをやっていたんです。婚活の事業でした。私、婚活が好きなんですよ。今でも、仕事とは関係なく婚活のYouTubeを見てしまうくらいで。それで、30代後半から40歳くらいの女性の婚活を、コンサルティングのような形で支援していました。

――リクルートに在籍しながら、並行して?
齊藤氏:そうなんです。2016年に会社を立ち上げてからも、2年ほどはリクルートを辞められませんでした。婚活の事業だけでは、なかなか食べていけなかったからです。
――好きなことを事業にされたのに、うまくいかなかった。
齊藤氏:好きなことと、得意なこと、そしてお金にできることは、少し違うんですよね。私はずっと法人向けの営業をしてきたので、個人のお客様への営業がうまくできなかった。リクルートの営業は圧が強くて、つい攻め込んでしまう。相手が若い女性となると、かえって追い詰めるような形になっていたのだと思います。正直、商売としては全然うまくいきませんでした。
――これまでで一番の挫折は、と聞かれたら。
齊藤氏:やはり、起業して売上が上がらなかったことですね。リクルートの収入があったので生活には困りませんでしたが、思い描いていた通りにはいかなかった。「起業って、こんなに難しいんだ」と痛感しました。
――そこから、どのように今の人材事業へ?
齊藤氏:2019年に野村のコンサルティングを受けたことがきっかけで、事業を人材の領域に切り替えていきました。すると、始めて1〜2ヶ月で結果が出たんです。ずっと辞められなかったリクルートも、そこでようやく辞めることができました。自分が本当に力を発揮できるのは、やはり人材の領域だったのだと思います。
泥臭く、信頼を積み上げる。全員面談と内定辞退フォロー
――「人が辞めてしまう」という相談に対しては、どのように向き合うのですか。
齊藤氏:まず、社員の方全員と面談をします。私が一人ひとりとお会いして、何がその会社の問題なのかを突き詰めていく。そのうえで、改善案を出していきます。制度や仕組みの話だけでなく、実際に現場の声を聞かなければ、本当の課題は見えてきませんから。
――採用の場面でも、独自の関わり方をされていると伺いました。
齊藤氏:新卒採用では、内定辞退のフォローをしています。内定を出した方と月に1回はお会いして、一緒にランチ会をしたり、社員の方も呼んで研修をしたり、ゲームをしたり。必ずリアルでお会いするようにしていて、地方であっても私がそこまで足を運びます。
――かなり時間をかけて、信頼関係を築いていくのですね。
齊藤氏:そうですね。それまで、採用しても辞退されてしまうことが多くて、お客様自身が「また辞退されるのでは」とトラウマのようになっている会社もありました。でも、フォローを続けるうちに辞退がなくなっていく。お客様がそれをとても喜んでくださるんです。
――一番のやりがいを感じるのは、どんな瞬間ですか。
齊藤氏:やはり、クライアントに成果が出た時です。私が関わったことで新卒採用ができたとか、フォローした方が全員入社してくれたとか、退職が止まったとか。そうやってお客様に喜んでいただけると、本当に嬉しいですね。
数字が語る、伴走の成果
――具体的に、どのような成果が生まれているのでしょうか。差し支えのない範囲で教えてください。
齊藤氏:そうですね。たとえば、ある建設コンサルタントの会社では、それまで5年間、応募すら来ず、内定を出しても辞退が続いて、新卒採用ができない状態でした。そこから、4年連続で、内定辞退ゼロのまま理系の大学生を新卒採用できるようになりました。
――ほかにはいかがですか。
齊藤氏:工務店の事例もあります。数年間、設計士を募集しても応募がまったくなかったのですが、募集を出し直したところ、開始から3日で応募が入りました。2ヶ月のうちに建築士の資格を持つ方が4名応募してくださり、1名の採用につながりました。
――退職の面ではいかがでしょう。
齊藤氏:別の建設コンサルタントの会社では、毎年数名の退職者が出ていて、人材育成や組織体制に課題を抱えていました。そこに向き合った結果、2年連続で退職者ゼロを実現できました。定年退職を除いて、誰も辞めなかったんです。

2社を率いて。そして、これから
――齊藤さんは、グラオブとProsWork、2つの会社に軸足を置いていらっしゃいます。それぞれをどう位置づけていますか。
齊藤氏:自分の会社であるグラオブには社員が3名いて、10名から200名ほどの規模の中小企業をクライアントとしています。2つの会社を持っていると、正直、自分の力の配分をどうするかは難しいテーマです。ただ、だからこそ、どうすればうまく掛け合わせられるかを、いつも考えています。
――グラオブとProsWork、両方に関わることのシナジーは、どこにあるとお考えですか。
齊藤氏:一人で営業するよりも、5人、6人で営業したほうが、出会えるお客様の幅は広がります。私が対応できないことを仲間ができたり、逆に仲間ができないことを私ができたりする。実は、私の会社とProsWorkは、まったく同じ人材の業種なんです。だからこそ、私のお客様にシステム開発のニーズや補助金の相談があれば、ProsWorkのメンバーをご紹介できる。私はIT系が得意ではないので、そこは仲間の力を借りられます。逆に、ProsWorkが支援する補助金のクライアントで、人事に悩まれている企業があれば、私がお役に立てるかもしれません。
――ProsWorkという環境だからこそ、挑戦できることもありそうですね。
齊藤氏:そうですね。先ほどのAI研修もそうですが、学んだことをすぐ自分の裁量で形にできる。「これをやってはいけない」という縛りがないので、それぞれが自分のやりたいことを突き詰められる。そこはProsWorkの大きな魅力だと思います。
――最後に、これから目指していきたいことを教えてください。
齊藤氏:大きな野望のようなものは、実はあまりないんです。会社をどんどん大きくしたいというより、自分の目が届く範囲で、「この会社を助けたい」と思うお客様に、きちんと向き合っていきたい。一社でも、目の前のお客様の役に立つ仕事をしていく。それが、私の変わらない思いです。
議員秘書からリクルート、そして起業へ。決して平坦ではない道のりを歩みながら、齊藤氏が一貫して大切にしてきたのは、目の前の一社と、そこで働く一人ひとりに、泥臭く向き合い続けることだった。派手さよりも、確かな信頼を。営業のプロが積み重ねてきた歩みは、これからも地方の中小企業の「人」を、静かに支えていく。



