
捨てられるはずだった規格外の大葉が、スーパーの惣菜になった。全国有数の大葉産地・愛知県豊川市のひまわり農業協同組合(JAひまわり)は、農業と福祉が連携する「農福連携」の取り組みから生まれた新商品「大葉メンチカツ」を1日に発売した。
産地が抱える人手不足と食品ロス、障がい者の就労機会という複数の課題に、一つの商品で応える試みである。
産地を悩ませた内職者不足
豊川市は全国有数の大葉産地だ。しかし、出荷前の袋詰めやパック詰めなどを担う内職者の高齢化や減少が課題となっていた。調製作業が滞れば収穫した大葉を出荷できなくなり、生産者の栽培管理や経営にも影響が及ぶ。
部会員のなかには、市外や県外の内職者へ作業を届けるために長時間の移動を余儀なくされるケースもあり、大きな負担となっていた。産地の足元で、収穫を出荷につなげる工程が細りつつあったのである。
「農福ポート」との連携で労働力を確保
この課題の解決に向け、JAひまわりのつまもの部会(大葉)は2022年9月から、株式会社農協観光が展開する農福連携事業「農福ポート」と連携している。豊川市内ではJAひまわりの遊休施設を活用した3拠点で事業を展開し、障がい者を雇用する8事業所が参画する。
現在は部会員19人のうち10人が農福ポートを利用し、3拠点で支援スタッフを含む91人が作業に従事している。2025年度には約19万パックの大葉の調製を担い、生産者の労働負担軽減や安定した出荷体制の構築につながった。生産者が作業を届けるための移動時間の短縮にも寄与し、産地を支える新たな仕組みとして定着しつつある。
規格外大葉を捨てずに商品化
大葉の選別作業では、形や大きさなどの理由で規格外品が発生する。これまで有効活用が難しかった規格外の豊川市産大葉を地域資源として生かしたいという思いから、農福ポートに参画する企業の1社が「大葉メンチカツ」を開発した。
商品化により、活用が難しかった規格外大葉に新たな価値が生まれ、生産者所得の向上や食品ロス削減にもつながっている。惣菜として販売される「大葉メンチカツ」は価格258円(税込)で、東海地方のAコープ13店舗に並ぶ。
「自分が関わった商品」がやりがいに
この商品は、農福ポートで大葉の調製作業に携わる障がいのある人々にとっても意味を持つ。自らが関わった農産物が商品として店頭に並ぶ姿を実感でき、農産物が流通し消費者へ届く過程が見えることで、仕事へのやりがいや社会とのつながりを感じられる機会になっているという。
JAひまわり青果課の佐藤光係長は「大葉産地では内職者の高齢化や減少が課題となっていた。農福ポートとの連携により、労働力の確保や生産者の負担軽減につながっている」と語る。規格外大葉の活用が食品ロス削減や所得向上につながり、関わった商品が店頭に並ぶことが障がいのある人々のやりがいにもなっていると説明する。
農業と福祉、互いの強みで支え合う
「農業だけでも福祉だけでも解決できない課題がある」。佐藤係長はそう述べ、互いの強みを生かしながら地域全体で支え合う仕組みを広げていきたいと話す。人手不足に悩む農業と、就労の場を求める福祉。両者が組むことで、それぞれ単独では動かなかった歯車がかみ合う。 JAひまわりは、農福連携を通じて農業分野の人手不足や食品ロスなど地域が抱える課題の解決に取り組んでいる。今後も関係機関や企業との連携を深めながら、農業と福祉が互いの強みを生かし、地域全体で支え合う持続可能な仕組みづくりを進めていくとしている。一枚のメンチカツが、産地の未来を映す試金石になりそうだ。



