
【緊急追記:7月1日 13時半現在】 MRO北陸放送などの報道によると、1日午前11時すぎ、学校から約1.5キロ離れた「十二ヶ滝」の滝つぼで消防が男児を発見し、病院へ搬送された。警察が容体の確認を急いでいる。周辺の防犯カメラには、失踪直後の30日午前11時すぎに滝の方向へ走る少年の姿が捉えられていたという。一刻も早い無事を祈るばかりだ。
日本中に衝撃が広がっている。鹿児島県霧島市の温泉施設で5歳男児が行方不明となった事件から、わずか9日。今度は石川県小松市の特別支援学校で、10歳の男児が授業中に姿を消した。FNNプライムオンラインによると、行方がわからなくなっているのは県立小松特別支援学校に通う小松市在住の谷川叶汰(たにかわ・かなた)さん。「1人でトイレに行く」と教室を出たのを最後に戻らず、警察や消防が捜索を続けている。学校という最も安全であるはずの場所で、なぜ子どもは消えたのか。
豊かな自然が牙をむく、北陸・小松の死角
事件の舞台となった石川県小松市金平町。ここは、重機メーカー「コマツ」の城下町として知られる市街地から遠く離れた、霧島の温泉郷にも負けない圧倒的な大自然の死角である。北陸新幹線の小松駅から南東へ約7キロ、名湯・粟津温泉のさらに奥に位置するこの地域は、どこまでも平坦に広がる青々とした水田地帯のすぐ背後に、大杉谷川の急流と、行く手を阻むような深いブナの原生林がそびえ立つ、北陸特有の重苦しい緑に囲まれている。ひとたび梅雨の豪雨が襲えば、のどかな田園は一瞬にして濁流の通り道へと姿を変える、極めて危険な二面性を持った土地なのだ。小松特別支援学校は、まさにそんな深い森の入り口にぽつんと佇んでおり、その隠れ家のような静寂こそが、皮肉にも今回の不気味な空白を生み出す舞台装置となってしまった。
”正面は施錠、しかし裏口は…”という出来すぎた死角
学校という、本来であれば大人の厳しい目が張り巡らされているはずの空間で、なぜ10歳の児童が忽然と姿を消すことができたのか。その最大の鍵を握るのが、学校側のあまりにも不用意な防犯体制の死角である。当時、不審者の侵入を防ぐための正面玄関の鍵は厳重に閉まっていたという。しかし、運命のいたずらか、その時間はちょうど外での授業が行われていた。そのため、校舎の裏口の扉だけは、誰でも自由に出入りできる状態で開いたままだったというのだ。トイレに立った谷川さんが、なぜ教室に戻らず、開かれた裏口の向こうへと引き寄せられてしまったのか。温泉施設の事件で”父親が着替えるわずか3分”の隙に窓から消え去った構図と、あまりにも不気味にシンクロする一瞬の隙。学校の管理体制が招いたその死角が、文字通り運命の分かれ道となってしまった。
1.5キロ先で目撃された少年 空白の足取りに残る疑問
現在、警察や消防が30人態勢で捜索を続けるなか、現場周辺では不可解な足取りが浮かび上がっている。谷川さんは午前11時ごろ、「1人でトイレに行く」と教室を出たあと行方がわからなくなった。その後、学校から約1.5キロ離れた橋付近で、谷川さんとみられる男児の目撃情報が寄せられている。
報道では、教室を出てから橋付近で目撃されるまでの正確な経過時間は明らかになっていない。しかし、学校を離れて橋まで移動したとすれば、その間にどのような経路をたどったのかが大きな焦点となる。
白い半袖Tシャツに青いハーフパンツという服装だったとされるが、なぜ周囲の大人は異変に気付けなかったのか。声をかける大人はいなかったのか。警察は目撃情報の真偽も含め、慎重に足取りを調べている。
ネット上に渦巻く、怪しむ声と学校防犯への痛烈な批判
この前代未聞の失踪劇に、ネット上では早くも様々な立場からのリアルな声が飛び交い、議論が白熱している。特に、同じ境遇を持つ親たちの悲痛な共感や、学校の防犯体制に対する不信感がSNS上で剥き出しになっている。
「え、まだ見つかってないのか…辛い。ウチも発達支援が必要な子で、つい最近校外に飛び出すようなことがあったもんですから、とても他人事じゃありません。。早く見つかりますように」
「近所の支援校は外には出られない様な対策がされてて、それがちょっと檻みたいだなぁとも思ってたんだけど。あのセキュリティが中の子供達を守ってくれてるんだな」
「学校って校門とか閉めてても駐車場めっちゃオープンだからなぁ…出ようと思えば出れるよなぁ」
未就学児を預かる保育園や幼稚園では、フェンスの高さこそ様々で乗り越えられそうな場所もあるものの、出入り口の施錠管理に関しては極めて厳重なところが多い。一方で、小学校や特別支援学校になると、全国一律ではないにせよ、正門は閉まっていても脇の門や裏口などが一時的に開放状態になるケースが散見される。そもそも、こうした特別支援学校において、児童の衝動的な飛び出しのリスクは現場の教員や保護者にとって日常的な課題のはずだ。普段はどう防いでいたのか、なぜこの瞬間の対策がすり抜けてしまったのかという、学校側の日常の管理体制そのものに疑問を呈する声は少なくない。この防犯意識のグラデーションの隙間を突くように起きてしまった悲劇に、ネット上では大衆の不満と恐怖が完全に臨界点を迎えている。
きらびやかな再開発の裏で、後回しにされる支援学校
実を言えば、筆者の近所にある支援学校も、お世辞にも綺麗にメンテナンスされているとは言えず、こう言ったら悪いがどこか教育の場というよりは社会から隔離するための閉鎖施設を彷彿とさせるような、独特の重苦しい雰囲気を漂わせている。建物はかなり老朽化しており、30年前に通学路でこの前を通っていた当時からすでに古びていたが、今見てもその無機質なコンクリートの見た目は変わらない。プールも老朽化して使えないままだというが、一体誰が予算を出してこれを維持管理してくれるというのか。
もちろん、今回事件の舞台となった小松特別支援学校の見た目はそれらとは異なり、一見すれば整った施設に見える。しかし、外見がどうあれ、授業中の10歳の児童が「トイレに行く」と言って教室を出たまま、誰にも気づかれずに1.5キロ先まで走り去ってしまうような内側のセキュリティ体制、そして現場の人員配置に、果たして十分な予算が投じられていたのだろうか。すでに同校の瀬川真司校長は報道陣の前で謝罪の言葉を口にしているが、果たしてこれは現場の管理不足という個人の責任だけで片付けていい問題なのか。設置責任のある都道府県の、目に見えない安全への予算出し渋りのツケが、巡り巡って現場の悲劇を生んでいるのではないか。
大人の目がますます必要とされるこの令和の世の中で、その無防備な隙間が、10歳の少年の行く手を阻んでしまったのだろうか。北陸の自然の猛威の前に、現場の努力だけでカバーする限界が、あまりにも悲痛な形で浮き彫りになってしまった。



