
「お祭りに行ったけど、僕は、ただ見ているだけやってん」。ある子どものこの一言が、プロジェクトの始まりだった。神戸市東灘区を拠点とする認定NPO法人ケアットが、夏休みの食事や体験を支える「あたりまえプロジェクト」第2弾「当たり前の夏」を始めた。
給食のない夏に、すべての子どもが地域の一員として笑顔で過ごせる時間を届ける取り組みである。
夏休みに広がる食事と体験の格差
夏休みは、子どもにとって楽しみな季節である一方、食事や体験の格差が広がりやすい時期でもある。学校給食がなくなることで家庭の食費負担は増え、物価高騰も重なる。ひとり親家庭をはじめ経済的な負担を抱える家庭では、日々の食事を確保すること自体が難しくなる場合がある。
認定NPO法人キッズドアの2024年夏休み緊急アンケートでは、32.2%の子どもが夏休みに1日2食以下、78%の家庭が生活費の増加を負担と感じ、74%の家庭が経済的な理由で夏の体験をあきらめているという結果が報告されている。また、障がいのある子どもは、参加しやすい環境や受け入れ体制が十分でないことから、地域行事や体験の機会が限られることもある。
届けたいのは「食事」だけではない
ケアットが届けたいのは、食事だけではない。今回のプロジェクトでは、夏休み中の食支援に加え、子どもたちが屋台やゲームコーナーを運営する夏祭りなどのイベントを開催する。実施期間は7月18日から8月31日までだ。
この夏祭りで大切にしているのは、子どもが「参加する人」ではなく「地域をつくる一人」として役割を持つことである。屋台でお客さんを迎え、ゲームコーナーを運営し、「ありがとう」と声を掛けてもらう。そうした一つひとつの経験が、「自分も地域の一員なんだ」という実感につながっていく。同法人が目指すのは「障がいのある子どものための夏祭り」ではなく、障がいの有無や家庭環境にかかわらず、すべての子どもが自然につながり認め合える地域づくりだという。
第1弾は「当たり前のお正月」
「あたりまえプロジェクト」は、子どもにとって本来あるはずの「あたりまえ」を届ける取り組みだ。第1弾では「当たり前のお正月」を実施し、おせち料理やお年玉、お正月遊びなど、多くの家庭では当たり前に経験する時間を子どもへ届けた。
第2弾となる今回は「当たり前の夏」。食べること、遊ぶこと、地域の中で役割を持つこと。どの子どもにもあるはずの「あたりまえ」を届けていく。特定の背景を持つ子どもだけを分けて支援するのではなく、それぞれ異なる事情を抱える子どもが、同じ地域の中で食事や体験を共にできる場をつくることを重視している。
20年続く「居場所づくり」の理念
ケアットは2005年の設立以来、「誰もが安心して笑顔で過ごせる居場所づくり」を理念に、子ども食堂やフードパントリー、障害者就労支援、高齢者支援などを通して地域に寄り添う活動を続けてきた。神戸市の認定NPO法人であり、寄付は税制優遇の対象となる。
同法人が大切にしているのは、「支援を届けること」で終わるのではなく、子ども一人ひとりが生き生きと自分らしい人生を歩んでいけることだという。まずお腹いっぱい食べられること、安心して過ごせる居場所があること。そして地域の人とつながり「ありがとう」と認められ、自分にも役割があると感じられる経験を積み重ねることが大切だとする。
「100人の応援団」を募集
プロジェクトを継続していくため、ケアットは3000円以上の寄付で応援する「100人の応援団」を募集している。寄付は夏休み中の食支援や、子どもが地域で役割を持つ夏祭りなどのイベント、地域交流の機会づくりなどに活用される。 「子どもたちに必要なのは、かわいそうだから支援される経験ではない」と同法人は言う。地域の中で役割を持ち、「ありがとう」と言われ、自分も地域の一員だと感じられる経験こそが必要だという考えだ。子どもが笑顔で「今年の夏は楽しかった」と話せる社会を目指し、ケアットは活動を続けていく。



