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愛知県がファミリーシップ制度を導入 LGBTQなどの多様性への制度作り

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多様な家族のイメージ
写真ACより

ファミリーシップ制度のメリットや課題について、LGBTQやSDGsの観点も含めて紹介する。

2023年8月17日、愛知県の大村知事が「ファミリーシップ制度」を導入することを発表した。この制度により、婚姻制度を利用できないLGBTQなどの性的マイノリティのカップルや事実婚のカップル、そしてその子供が公的に家族と認められ証明書等の発行が可能になる。パートナーシップ制度を導入している自治体は全国各地にあるが、子供にまで範囲を広げての制度導入は都道府県レベルでは初めてだという。

ファミリーシップ制度のメリット

メリットとしては、医療機関にかかった際の家族としての対応や、市営住宅へ家族としての入居等が可能となるほか、パートナーを一緒の墓地に埋葬できるなど、婚姻関係なしではできなかった手続きをとったり、制度を利用したりできるようになることが挙げられる。

婚姻関係の証明が求められる場面は、その人の人生や生命に関わるものが多々ある。また、婚姻関係にある場合は補助金が出るが、そうではない場合には出ないといった場合もある。

パートナーであったとしても婚姻関係にないためにそうした重要な手続き等ができずに歯がゆい思いをしてきた人は少なくないだろう。

しかも今回の制度は子供も対象に含む。生活に関わる手続きはもちろんだが、何かがあったときに意思を示すことができる家族として認められるのは非常に大きいことだろう。それまでできなかったことができるようになるということは、多様性を認める社会の実現のためには非常に意義のあるものだ。

各地で異なるパートナーシップ制度の内容

2015年11月に初めて渋谷区と世田谷区が導入したことを皮切りに、全国での導入が進み始めたパートナーシップ制度は、2023年8月18日時点で日本全国で68.4%の自治体が導入している。

自治体ごとにその要件等の詳細は異なり、渋谷区の「渋谷区パートナーシップ証明」では「戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係」をパートナーシップと定義し、公正証書による関係証明が要件となっており、数日間の書類確認を経て証明書が発行される。

横浜市の「横浜市パートナーシップ宣誓制度」では、同性に限らずトランスジェンダーなどの性的少数者と事実婚も対象に含み、その申請に必要なものは住民票と戸籍抄本、本人確認書類のみで、即日発行ができる。

札幌の「札幌パートナーシップ宣誓制度」でも同性に限らず一方または双方が性的マイノリティの場合が対象で、必要書類の提出と、市職員の面前で宣誓にあたっての確認書と宣誓書を記入することで認められる。また、パートナーの一方又は双方と同居し、かつ生計を一にする未成年の実子か養子がいる場合には、証明として受け取る書類に子供の名前の記載することができる。

ここで取り上げた3つの自治体だけでも細かい内容や発行される書類等が異なっている。そうした状態の中で、愛知県としての制度を導入することは県内の各自治体との調整が必要となる大きな動きなのである。

LGBTQの人たちの生活をより良くする制度作りのために必要なこと

この制度導入は、さまざまなバックグラウンドや事情を抱えた人たちがより生活しやすくなるための良い動きではあるものの、一方でネットの声を見ると賛否両論はっきり分かれているようにも見える。「対象は日本人だけなのか」「給付金や補助金の利用はどこまでできるのか」といった声も見受けられ、制度の作り込みと体制の整備が求められる。

つい最近、2023年8月4日には東急歌舞伎町タワーに設置されたジェンダーレストイレが導入から4か月で廃止となった。多様性を認める社会の実現を目的として設置されたものの、その場所や仕組み、制度が実情とそぐわず、逆に性被害を生み出してしまいかねない場所となってしまった。

導入にあたって、実情を正しく知り分析することや、当事者の声を聴くこと、導入前後の課題を想定すること、そしてそれらにきちんと対応できる制度と体制をあらかじめ整えておかなければならない。今回の制度導入も例外ではない。

性に関する話題は、その人の核心をつくものであったり、表立って表現したいものでなかったりと、人それぞれだ。自認する性、表現する性、性愛の有無や対象など、マジョリティとされる人たちであってもその感覚も少しずつ異なるだろう。

SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない」の実現のためには、性の違いによって生まれるすれ違いに対応しなければならない。トイレや浴場の利用における課題でもそうだが、マジョリティ、マイノリティの中でもさまざまな意見があり、すれ違っているのが現状なのではないだろうか。

何らかの方法でそのすれ違いを解消するか、お互いの妥協点を見つけるか、全員が納得する方法を探し出すか。どちらかの声だけを聞いても、両方の声を聞きすぎてもうまくいかないだろう。今回の制度導入にあたって、「導入すること」が目的にならないよう、しっかりと準備を進めてもらいたい。

家族であるかないかは、手続きの有無や性別で決まるものではない。誰であっても、大切に思う人を大切にできる社会が実現されることを切に願う。

[参考]
愛知県、「ファミリーシップ制度」を導入へ 子ども含め家族と証明 | 毎日新聞
「ジェンダーレストイレ」わずか4カ月で廃止 新宿・歌舞伎町タワー 「安心して使えない」抗議殺到の末に:東京新聞 TOKYO Web
みんなのパートナーシップ制度
渋谷区パートナーシップ証明 | ジェンダー平等に関する取り組み
横浜市パートナーシップ宣誓制度手続きガイドブック
地方公共団体における パートナーシップに関する 制度の状況
札幌市パートナーシップ宣誓制度

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ライター:

フリーライター。昔から感想文や小論文を書くのが好きで、今なお「書くこと」はどれだけしても苦にならない。人と話すのが好きなことから、取材記事の執筆が主軸となっている。新潟県で田んぼに囲まれて育った原体験から、田舎や地方への興味があり、目標は「全国各地で書く仕事をする」こと。

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