
農家が普段どんな仕事をしているのか、間近で見て、一緒にやってみる。そんな場が、農業の盛んな愛知県田原市に生まれる。
渥美半島とまとランドが、中学生から大人までが農家とともに農作業に取り組む「トマトライ部」を、10月に始める。プロの現場に飛び込み、農業を生で体験できるコミュニティプログラムだ。
農業産出額全国1位のまちで
同園によると、田原市は農業が盛んな地域だ。2024年の市町村別の農業産出額は933億円で、全国1位にのぼる。しかし、それほど農業が身近なまちでありながら、農家が普段どのような仕事をしているのかを間近で知る機会は、意外と多くない。「トマトライ部」は、その距離を縮めようとする試みだ。産地に暮らしていても、畑の中で何が行われているかは見えにくい。実際に手を動かすことで、農業をより身近に感じてもらう狙いがある。
農業が盛んな地域であっても、消費者と生産の現場との間には、思いのほか隔たりがある。スーパーに並ぶ野菜がどう育てられているのかを知る人は少なく、農家の日々の苦労や工夫は表に出にくい。産地の内側にいる人にこそ、その現場を開いていく。地域の農業を「見えるもの」に変えることが、この取り組みの出発点にある。
少人数で農作業を体験
プログラムは、少人数でじっくり体験できる形をとる。同園によると、定員は1日あたり最大3名で、対象は中学生から大人まで。農業が未経験の人も歓迎する。参加費は無料だ。作業の内容は、葉の整理や草取り、芽かき、収穫など、実際の農作業そのもの。見学ではなく、現場の一員として手を動かす点が特徴といえる。募集は9月から随時受け付け、活動は10月に始まる。場所は、田原市中山町のミニトマト農園だ。
少人数に絞ったのは、一人ひとりが農作業にしっかり向き合えるようにするためだ。大人数の見学ツアーとは違い、農家と言葉を交わしながら、作業の意味を理解して手を動かせる。芽かき一つをとっても、なぜその作業が必要なのかを知れば、野菜への見方は変わる。中学生から大人まで受け入れることで、幅広い世代が農業に触れる入り口をつくる。
「Try」と「Live」を込めた名前
「トマトライ部」という名前には、二つの意味が込められている。同園によると、「Try(挑戦する)」と「Live(生きる、体験する)」だ。プロの現場に飛び込む挑戦と、農業の生の体験を、その名が表している。トマトと部活動をかけ合わせた響きには、気軽に参加してほしいという思いもにじむ。小川浩康代表は「田原市は農業が盛んな地域ですが、農家が普段どんな仕事をしているのかを、実際に見たり一緒にやったりする機会は、意外と多くありません」と語る。
農業には、決まった時間に体を動かし、季節ごとに作業をこなしていく部活動に通じるところもある。名前に「部」を掲げたのは、続けて関わることで農業を身近な習慣にしてほしいという願いの表れでもある。一度きりの体験で終わらせず、季節ごとの作業を通じて畑と付き合っていく。そんな関わり方を思い描いている。
ミニトマトから、田原の農業全体へ
渥美半島とまとランドは、田原市でミニトマトを栽培する農園だ。今回のプログラムは、まずそのミニトマト農園から始まる。全国的に農業の担い手は高齢化し、後継者の不足も進む。日々の農作業を地域の人に開くことは、担い手の減少や農業への関心の薄れといった課題に対する、一つの入り口にもなりうる。
農業を体験する場は、就農のきっかけになるだけでなく、地元の農業を応援する人を増やすことにもつながる。作り手と地域の距離が近づけば、産地としての土台も厚くなる。若い世代にとっては、進路を考えるうえでのヒントにもなりうる。 同園は、ミニトマトを皮切りに、キャベツやメロン、花など、田原市のさまざまな農業へと広げていく考えだ。作物ごとに異なる仕事を体験できれば、産地の奥行きも伝わる。農家の仕事場を地域にひらく試みが、産地全体にどう根づいていくのかが注目される。



