
店頭で余った食品を地元の人が買い取り、地域内で食べきる。そんな仕組みで食品ロス削減に取り組むアプリ「トリニコ」に、藤沢市のパン店「パン工房 向日葵 湘南台」が新たに加わった。
運営する合同会社クアッガによると、今回の登録で掲載店舗は53件目となり、7月1日から掲載を開始している。地域で生まれた食品のロスを、その地域の中で解消しようとする取り組みだ。
店頭受け取りで食品ロスを減らす「トリニコ」
トリニコは、店でやむを得ず余ってしまった食品を地元の消費者が購入し、おいしく食べきることで、地域で発生した食品ロスを地域内で循環させるサービスである。運営するのは、パン廃棄の削減サービス「rebake(リベイク)」なども手がける合同会社クアッガだ。2018年8月の設立以来、食にまつわる無駄をどう減らすかというテーマに取り組んできた。
対象エリアは藤沢・茅ヶ崎・平塚・鎌倉・逗子・横須賀・三浦など、湘南を中心とする地域。利用者はスマートフォンのアプリで「購入可能」と表示された店舗から気になる商品を探し、出品中のセットや内容を確認して購入手続きを済ませる。あとは指定された時間内に店へ向かい、商品を受け取る流れだ。ネット通販のように遠方へ配送するのではなく、あくまで店頭での受け取りにこだわる点が特徴といえる。
20年以上のパン職人が営む向日葵 湘南台
新たに登録した「パン工房 向日葵 湘南台」は、小田急線などが乗り入れる湘南台駅から徒歩7分に位置する。20年以上パンを作り続けてきた店主が、ふわふわとした食パンからセミハードのパンまで幅広い品ぞろえを用意する街のパン屋である。
自家製フィリングを使った商品も多く、生地とフィリングの両方を楽しめるという。日々の暮らしに寄り添う地域密着の店が、閉店間際まで売れ残ったパンを無駄にしない選択肢として、トリニコを取り入れた形だ。焼きたてを大切にするパン店にとって、売れ残りをどう扱うかは長年の課題でもある。
「地域で循環させる」という発想
食品ロス対策では、フードバンクへの寄付や値引き販売など、さまざまな手法が模索されてきた。トリニコが掲げるのは、余った食品をわざわざ遠くへ運ぶのではなく、その地域で生まれたロスをその地域の住民が引き受けるという考え方である。
同社によると、こうした地域内循環の仕組みは、輸送に伴う負担を抑えながら、住民が地元の店とつながるきっかけにもなる。消費者はおいしい食品をお得に手に入れられ、店は廃棄を減らせる。買い手と売り手の双方にとって利点のある関係を、無理なく築こうとする試みだ。トリニコが湘南地域に特化しているのも、顔の見える範囲でこの循環を回すことに意味があると考えているためだという。
身近な一歩から広がる食品ロス削減
国内では、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減が、社会全体の課題として位置づけられている。事業者から出るロスと家庭から出るロスの双方が問題となるなか、店と消費者をアプリで直接つなぐ仕組みは、大がかりな制度や設備を必要とせず、身近なところから取り組める現実的な一手として注目される。
パン店の登録が53件に達したトリニコが、湘南という一つの地域でどこまで根づくのか。地域に密着したサービスの広がりは、他の地域が食品ロス対策を考えるうえでの参考にもなりそうだ。まずは一枚のパンを無駄にしないという小さな選択の積み重ねが、地域全体の意識を変えていく可能性を秘めている。



